3.18アラスカ・アンカレッジ

世界,日本,雑記

Vol.2-3.22-433    3.18アラスカ・アンカレッジ
2021.3.22

映画のタイトルは『3.18アラスカ・アンカレッジ』で決まりだ。
副題は≪米中激突≫である。

3月18日アラスカ・アンカレッジ会談

米国:ブリンケン国務長官・サリバン大統領補佐官
中国:揚潔箎共産党政治局員・王毅国務委員兼外相
バイデン政権下で米中の外交トップ会談は初めてである。

厳しい交渉は想定内であった。しかし前代未聞、外交儀礼を飛び越え、米中外交のトップが出だしから激しい応酬合戦を演じたのは驚きであった。

我々一般ユーザーがニュース映像で会談の様子を見るのは最初の4、5分程度で双方の挨拶代わりのコメントに過ぎない。

その後、報道陣は締め出される。国家の重大事項を決めるのにすべてをさらけ出すわけにはいかない。当たり前の話だが、今回はバイデン政権が中国に甘いのではとの憶測を跳ね返す意味と、中国の人権弾圧を素通りにするわけにはいかない事情があった。

ブリンケン氏は会談の冒頭から比較的厳しい口調で
「新疆ウイグル自治区での人権問題」「香港での民主派弾圧」「台湾情勢」「米国に対するサイバー攻撃」「同盟国に対する経済的威迫」などを議題とすると述べた。

さらに「ルールに基づく秩序に代わるものは『力の正義』や『勝者総取り』の世界であり、世の中ははるかに暴力的で不安になる」と警告し、米国は民主主義諸国・地域を主導し国際秩序の強化に関与していくと、若干厳しい挨拶となった。

これにカチンときたのが揚潔箎共産党政治局員。
あきらかに不快な表情を浮かべ、
「米国には米国の、中国には中国の様式の民主主義がある。ウイグルや香港、台湾については内政問題だ。米国の人権状況は最低水準にあり、多数の黒人が虐殺されている」大幅に時間オーバーし15分以上も怒り顔で反論した。

双方の挨拶?が終わり、普通はここで報道陣とカメラは締め出される。ところが、楊氏の異常に長い反論に今度はブリンケン氏がカチンときた。

楊政治局員の冒頭発言が終わったところで報道陣が退出を始めた時。ブリンケン国務長官は手を上げて報道陣を制し呼び戻したのだ。

このリアルな緊迫感はなかなか映画では作れない。
ここで、報道陣を出してしまったら、言われっぱなしで面目丸つぶれである

ブリンケン氏は呼び戻したカメラの前で
「米国は中国との紛争を求めていないが、原則や友邦諸国のためには立ち上がる」と言明したという。

楊氏は
「米国は、中国に対して強い立場からものを言う資格などない。これは中国人に接する態度ではない」と恫喝したという。

双方の言い合いは1時間以上も続いたというから驚きである。
現場に戻されたカメラマンスタッフたち、この緊迫した1時間をカメラを回し続ける現場に立ち会えたことは貴重な体験として語り継がれるのではないか。

今回は米国、中国共に強気に出るにはそれなりの理由があった。
バイデン政権の対中国弱腰懸念を払しょく、かつ自由主義陣営の関心事である人権問題でリーダーシップを発揮する必要があった。国際社会と同盟国に対しその姿を映像で見せる効果である。

一方、中国共産党は2021年7月、重要な節目とする結党100年を迎える。新型コロナウイルスの猛威をほぼ抑えこみ、ワクチンも開発し世界に供給し貢献しているにもかかわらず、世界から祝福の声は上がらない。

習近平総書記の下で、強権的な一党支配を強める中国は、国際社会との摩擦を覚悟のうえで「強国」路線を突き進まなければ100周年を盛大に祝うことすら出来ないと考えたのであろう。

共に引けない理由があったのだ。

揚潔箎共産党政治局員はブリンケン氏の発言を “ スタンドプレー ” と表した。しかし、揚潔箎氏の国内向けにした “ 過剰 ” ともいえる演技は、国際社会に対して中国共産党の独善的体質を改めて印象づけた側面もある。

中国にはもう一つ不満があった。
本来、外交原則でいけば前回ハワイ、今回は中国で実施すべきだったが、遠くアラスカになった。中国にとっては “ わざわざ出かける ” ことへの屈辱に耐えたのである。そこへの不満も大いにあったのではないか。

外交儀礼に反してスタートした今回の会談で火ぶたは切られた。

いよいよ “ バイデン対習近平 ” の戦いが始まった。
この闘いは自由主義陣営と対共産主義との戦いでもある。

4月には日米首脳会談がある。日本もいよいよ「沈黙は金」などと悠長に構えているわけにはいかない。

相変わらず尖閣周辺へは35日連続で中国海警の船が航行している。ロシアとの共闘が密約されれば、7月100周年を迎え、オリンピックのどさくさに紛れ尖閣上陸という無法をやらないとも限らない。

≪ 3.18アラスカ・アンカレッジ ≫は中国動乱の口火とならないことを祈るのみだ。

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