BBC特派員の誇り高き逃避

世界,日本,雑記

Vol.2-4.3-445    BBC特派員の誇り高き逃避
2021.4.3

イギリスBBC放送局の北京特派員ジョン・サドワース氏が北京から台湾へ避難したというニュースが入った。

サドワース氏は約9年間、特派員として中国に滞在。昨年、少数民族ウイグル自治区の収容所の内部映像を入手し報道した。いうなれば、大スクープ、イギリスでは誇り高き人物である。

映像では、鉄格子のはまった窓がある部屋の中で、ウイグル族の青年が手錠でベッドにつながれた様子などが撮影されており、世界で反響を呼んだ。

さらにBBCは、ウイグル族らを収容する施設で組織的な性的暴行や拷問を受けたとする女性らの証言を報道している。

ここまでやれば中国も黙っていられない。ということだろう。
エドワース氏は中国当局から圧力や脅迫を受け最近ではさらにその傾向が強まったということだ。台湾への逃避は、身の危険を感じるようになったからであろう。まるでスパイ映画さながらである。

中国国家ラジオテレビ総局は2月にBBCの国際放送について、中国国内での放送を禁じる処分をした。
このように中国による外国メディアへの締め付けが強化された昨年以降、多くの外国メディアが取材拠点を北京から台湾に移しているようだ。

特派員が身の危険を感じて外国へ逃げるなどということは戦時下か国家そのものが内戦状態で無法地帯と化すか、国による恐怖統治状態にあるかだ。

にもかかわらず、経済と金にプラス強い軍備を持つ中国からの甘い誘いになびいてしまう国があるから始末に悪い。

中国王毅外相は、早々に欧米の強い批判に対抗するかのように、金をちらつかせた外交を展開した。

サウジアラビア、トルコ、イラン、バーレーン、アラブ首長国連邦、オマーンなど米国との関係が微妙な先をピンポイントで訪問。つぎつぎと防衛や経済協定を結ぶ動きの速さだ。

如何に世界は流動的で自由民主主義の理念など、「金の延べ棒」の前では紙くずのようなものだと言っているに等しい。愛と平和より目の前の金と自己防衛である。

東洋学園大学・櫻田淳教授は、米・英・豪・加とEUの「西方世界」が一斉に対中制裁の発動に対し、言葉だけに終わる日本との落差は否定しようもない。と指摘した。

しかし、そこには日本の特殊事情があるという。
1、人権を事由にして制裁を科す法的枠組みを日本がいまだに持っていない
2、日本はアジアに位置する故に、「アジアに関わる事象」は、他の「西方世界」諸国とは別種の対応が政治上も経済上も手掛けられるという意識

ただ、櫻田教授は、「別種の対応」があるとすれば、その対応がいかなる対応なのか「西方世界」に理解されなければ意味がないという。

日本の煮え切らない対応が果たして「西方世界」に理解されるのか疑問である。かといって中国に気を使ったかのように見えたかと言えばそうでもない。中国は、日米2+2会談に加え、クワッドとの会談を対中批判だとし、「深刻な懸念」を表明、非難している。

ただ、ほんの少しの朗報がある。政府の煮え切らない態度に対し、中谷元、山尾志桜里、長島昭久氏らの各衆議院を中心に、人権を事由にして制裁を科す法的枠組みに関する整備に向けた動きが見られることである。

人権問題しかり、教科書問題しかり、コロナ問題しかり、中国が絡めばすべて矛先がにぶるのが日本である。中国に日本はアメリカの属国か?と言われたが、いいえ「中国の属国です」と言い返せばいいのではないか、と思ってしまうほど中国には弱腰である。

戦後、台湾と断交してまで日中国交平和条約を結び、3兆円にも及ぶのODAで中国を助け、天安門で窮地に陥った中国を天皇訪中で助け、挙句の果てには靖国参拝を非難され中止する始末。今では尖閣を奪おうと日々隙を狙われている。

これでも中国を立てる理由がどこのあるのか。中国に行く国会議員のほとんどが中国要人と会う時の満面の笑みを湛えてすり寄る姿は、飼われている犬のようで見ていられない。

日本の政界にはチャイナ信仰者がかなりいる。いつの日かBBC特派員のように毅然とした態度で主義主張に誇りをもって行動できる日本になれるのだろうか。今もって確信が持てない。

ブログランキング・にほんブログ村へ