対中事業リスク

世界,日本,雑記

Vol.2-5.19-491     対中事業リスク
2021.5.19

國分俊史・多摩大学大学院教授が月刊・正論の中で「対中事業リスク 見据えた企業戦略を」と題しての寄稿があった。

先ず『バイデン米政権はスマートで攻撃力のある、経済ツールを活用して地政学的国益を追求する「エコノミック・ステイトクラフト(ES)」政策の具体化に取り組んでいる。』とし、

直近では『インテリジェンス機関の新たな役割として、新興技術の技術トレンドを予測して国際標準化機構や国際電気通信連合での国際標準獲得へ積極的に関与し、民間企業との能動的な連携が提言された。』と中国の脅威に先進的に取り組む様子を伝えると共に、日本の緩慢な動きに警鐘を鳴らしている。

そこで、5項目に分けて具体的リスクと対応を提示した。

◆諜報機関と企業の連携
『・・・経済安全保障で圧倒的に先をいく米国は、民間企業と諜報機関が連携してスパイリスクに対処する取り組みを2005年から開始している。

「国内安全保障連携会議」という枠組みを立上げ、頻繁に経済スパイリスク情報を共有している。国家機密を取り扱える資格であるセキュリティ・クリアランス(SC)を有するメンバーには、必要に応じて機密情報に基づく警告や捜査協力を行っている。

日本企業は国内で自国の諜報機関とも接点を有しないため、海外に子会社のある各国の諜報機関との連携など考えたことがない・・・民間企業における新興技術開発での米国との連からもSC制度は不可欠。』

◆台湾有事への備えを
『バイデン政権は台湾有事を高い脅威と認識。習近平主席の年齢を考慮すると、3期目が終わる2028年には退任する可能性が高いと見ており、米大統領選と台湾総統選が重なる2024年に侵攻すると予測している。

残念ながら、台湾有事を念頭に置いた業務継続計画を立案している日本企業は皆無だ。現状を放置すれば、台湾有事によって日本が壊滅的なダメージを受ける事態になりかねない。
政府は供給責任が果たせるよう、企業への検討指示を早急に出すべきだ。』

◆問われる企業の価値観
『ウイグル問題を理由にした中国への制裁は米国だけでなく、加、豪、EUでも対応しているが日本政府は沈黙を続け、これが日本企業を追い込んでいる。

・・・中国の権威主義に対抗か迎合かを欧米政府から求められる時代に入ったという認識を経営者は持つ必要がある。
自社が、体現すべき自由民主主義の拡大に貢献する価値表明とは何かを問うことを、新たなミッションにしなければならない。』

◆情報流出リスクと人事制度
『中国に出張する日本人は中国政府が指定する医療機関でPCR検査や陰性証明、加えて入国後は携帯電話への追跡アプリのインストールが必須とされ、これまで以上に個人情報を中国政府に把握される可能性がある。

中国当局は先端技術を取り扱っている日本人を特定し、帰国後もあらゆるネットワークを使って流出リスクを監視する。

役員の兼務も見直しが必要だ。取締役と執行役員の兼務はリスクが高まる。取締役は株主目線から経営全体の執行を監督すべきであり、執行役員を兼務すると特定事業の詳細な情報に触れるリスクを負う。中国と米国双方の研究開発情報に触れれば情報漏えいの当事者にされる恐れがある。』

◆経済合理性との対峙
『合理性を最優先しがちな経営者に対し、経済安全保障の観点から非合理的な意思決定を強いる形で対峙できる担当役員の存在は不可欠。

経済安保対応への投資を単なるコスト増に終わらせないために、それを強みに転じる経営戦略を描き、新たな成長を通じて回収する経営変革も不可欠。

非合理な投資を効果に結びつける戦略の確信が必要になる。
経済安全保障担当役員を設置して経営アジェンダとして取り組み、企業及びサプライチェーンを社会の懸念を先取りする意識で見渡し、戦略を革新しながら取り組むことが不可欠だ。』

、、、というのが國分教授が指摘した要旨である。

日本の対中国に対する無警戒と無防備は危機的状況にあり、まさしく金に目がくらんだ亡者の態様である。

日本の代表的な会社であるユニクロの柳井社長や、楽天の三木谷社長の倫理観、危機感を欠いた発言は、日本の現状を如実に表している。

昭和の時代にいただいた「エコノミックアニマル」の称号はまだ、働き蜂のニュアンスもあったが、品位・品格に加え危機意識もなくしたお二人の対中国対応は、凡その日本企業が持つ偽らざる実態であろう。

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