動き出した台湾有事

世界 日本 雑記

Vol.2-5.20-492     動き出した台湾有事
2021.5.20

・・・夜明け前の海岸である。ざわざわと波の音か、あるいは海岸線に生える雑木林が風に揺れる音か、複雑な音にまぎれるように小さな黒い物体が動いている。

にぶく重い動きだが、がたいの良いシルエットが赤みがかったほのかな光に浮かんだ。ぼんやりとした顔が、今まさに上がり始めた太陽に反射した。照らしだされた物体が人間だと確信するのに若干の時間を要した。

朝のジョギングで通りかかった男は、とっさに見てはいけないものを見た時のようなある種の恐怖で足が硬直するのを感じた。同時にこの場にいてはいけない思いが交差した、何もなかったように自然に通り過ぎようとしたが、急がねば、と思いがつのるほどぎこちない走りになった。ああ、と一息つく安堵までの時間の長かったこと、とりあえず安全と思われる距離を確保した。

まだ、後ろを振り向くことはできなかった。もうひと息、何とか角を曲がって姿を隠す算段をしながら海岸から国道に上がったところで海の家の陰に姿を隠した。

警察へ電話だ、スマホを持つ手が震えていた。
「あっ、あの、、、海岸に変な男がい、いるんです、、、どうも密航者では、、すぐ来てください。」
振り向いたとたんに男が、、、

というサスペンス映画のオープニングのようなとは言わないが、それに似た光景が台湾で起こっている。

4月末から5月初めにかけて、中国大陸からゴムボートで海を渡って台湾に不法上陸する男が相次いでいるのだ。

同じような時期に台湾が実効支配する離島の金門島にも別の中国人がやはりゴムボートで上陸している。

駆けつけた警察官が確保した男に尋問をした
男は、
「自由と民主主義の世界でくらしたい」
「台湾に来たかった」、、、と動機を語ったというが、出発時間、場所、理由も曖昧でいかにも不自然。とっさに工作員ではないかとの思いがよぎる。

何故なら、中国当局は以前から自国民の台湾への密航を警戒し、沿岸で厳しい警戒体制を敷いている。その監視をかいくぐって、大きなゴムボートを海岸に運び、出発することなど不可能に近い。

仮に運よく出航できたとしても200kmの距離を一人で渡りきるのも至難の業だ。豊富な航海経験、装備が必要であるが、それこそ着の身着のまま、食料もほとんどなく準備不足は明らかである。

この不気味な密航者は、台湾の警備の弱点をもあぶりだした。

台湾当局は中国との関係が悪化してからは特に海岸警備を強化している。それが、男が上陸するまで沿岸で警戒に当たっている台湾の海軍や海巡署が気づかなかったことで大きな問題となった。

多摩大学の國分教授ではないが、2024年台湾侵攻を画策しているとすれば、今から工作員を送り込み、怪しまれないまでに台湾人になりきる時間を考えて送り込んできたのではとも考えられる。

男たちは20代、30代という若さをである。特殊訓練を経た命知らずの精鋭である可能性は十分あり得る。2024年の侵攻計画が本当であるとすれば、まだ3年ある。海、空、地上、あらゆる挑発行為で撹乱しながら、その時のために周到な準備をしてくることは間違いない。

中国は本気である。台湾一国で中国の攻撃に対抗など当然できるものではない。米国をはじめ、今インド太平洋地域の平和を維持するために、イギリス、フランス、ドイツ海軍が南シナ海に軍艦の派遣をしている。この協調体制をより実戦に近い形で訓練を度々行うことが最も抑止力になる。

今後はカナダ、豪州も海上訓練に引き入れ、決定的優位を強固にしない限り中国の覇権主義を諦めさせることは困難である。
もう一つの懸念はロシアであるが、EUの結束次第だ。

特に、この3年が大事。自由主義陣営の覚悟が問われる。そのリーダーシップは米国であるが、最も心配なのが日本の覚悟である。戦後の平和にどっぷりつかり、軍隊の話すらできない異常な国家がはたして、中国という脅威を真から理解できるだろうか。

台湾有事が日本の有事として共有できるでかが鍵となる。今から、台湾有事に起る様々な具体例、例えば、中国、台湾在住の邦人の安全、経済封鎖の問題など想定されるあらゆる事態を国民に喚起し現実問題として認識させることが重要である。

戦後76年、戦争の「せ」の字も知らない国民がほとんどである。戦争の怖さを知らずして “ 平和が大事 ” と語る国民に東日本大震災とは異質の怖さを教えることは至難のことである。

アメリカがすでに台湾と協議を始めたように、日本も台湾との話し合いをどう進めるか、その動きを起すことで国民に肌感覚で危機を感じとってもらうことが必要である。そうなれば野党が騒ぎ立てることは目に見えている。しかし、それを恐れていては日本の安全を守ることはできない。

いよいよ日本の覚悟が問われる時が来た。腹を決めなくてはならない。