祝 優勝・照ノ富士
Vol.2-5.24-496 祝 優勝・照ノ富士
2021.5.24
大関・照ノ富士、とにかく優勝おめでとう!!
素晴らしいの一言だ。
不甲斐ない大関陣の中でただ一人、相撲への情熱とハングリーに満ちた土俵上の姿は、勝負への熱い執念が漲っていた。
キャバクラで女と戯れる大関、薄氷を踏むような勝ちっぷり?でひやひやの大関、はたまたイノシシの如く突き押しだけが頼りの大関の中においてただ一人、大関らしい安定感と勝負にかける情熱を感じさせたのが大関・照ノ富士である。
場所後半、不運な2敗、本人に取って納得のいかないアクシデントもあった。
11日目の妙義龍戦、相撲に勝って勝負に負けたのである。めったにない反則負けを喫した。その理由は「マゲをつかんだ」というのものだ。
ジイが見る限り、マゲをつかんだようには見えなかった。確かに頭に手がかかったが、抑えつけただけのように見える。マゲをつかむとはマゲそのものを握る行為ではないのか。頭に手をかけ投げを打てば見様によってはマゲをつかんだように見える。
軍配は照ノ富士に上がったが物言いがついた。判定は反則をとられ覆った。照ノ富士に反論はできない。勝敗は審判の権限にあり力士に口のはさむ余地はない。悔しかったに違いない。
もう1敗が14日目、遠藤戦である。
遠藤有利の展開の中で、投げを打ち合いながら土俵際までもつれた。土俵際に追い込まれた照ノ富士が抱え込んで打った投げで、遠藤の体が裏返りながらほぼ同時に落ちた。軍配は照ノ富士に上がった。素人目にも「物言い」がつくと思った勝負だ。
案の定物言いがついて協議に入った。いつもよりかなり長い協議となった。その間にVTRが流れた。確かに照ノ富士の手が先についたかに見えるが、どちらも土俵の外に飛び出しており、遠藤の体は照ノ富士の投げで裏返っている。いわば死に体である。素人目では “ 取直し ” が妥当な判断と思えた。
ところが伊勢ヶ浜審判長の説明は「照ノ富士の肘が先についており、軍配差し違えで遠藤の勝ちと致します」と説明した。
う~ん、照ノ富士の肘が先についたことなどVTRですぐ確認ができたはずである。にもかかわらず協議に4分も要した。
推測だが、4人の勝負審判は取直しで決まったのではないか、しかし、伊勢ヶ浜審判長は照ノ富士の親方でもある。「露ほども疑惑を残してはならず」と判断したのではないか。取直しでも異論は出ないと思うが、照ノ富士にとっては不運だった。
そして、迎えた千秋楽。大関・貴景勝との大一番。大方の予想は8対2で照ノ富士勝利を予想したのではないか。ところがどっこい思いもよらない貴景勝の押しの後の引きにバッタリ四つん這いになったのである。信じられないようなもろさが最後の一番で出てしまった。
つい4日前まで、こんな千秋楽を誰が予想したであろうか。ついに優勝決定戦にもつれこんでしまった。
脳裏をよぎったのは昨年の11月場所、貴景勝に敗れた優勝決定戦であろう。しかし、今回は違った。相手の動きを冷静に見て動く、まるでモハメド・アリのように貴景勝を土俵に這わせ、ついに勝負をつけた。
照ノ富士の膝を見ればわかる。厚いサポーターはもう、照ノ富士のトレードマークのように体の一部になった。膝は照ノ富士のアキレス腱である。
大関になったものが序二段まで落ちた。屈辱以外の何物でもない。親方に何度も引退を申し出た。しかし、親方はその都度、「もう一度頑張ってみろ」何度も励まし続けた。照ノ富士の素質を見抜居いていたからこそ言えた励ましだった。
膝のケガに糖尿病、C型肝炎に腎臓結石と満身創痍の身体に、それでも頑張れと励まし続けた親方も凄い。
その男が、頑張って、頑張って、頑張って、やっと幕内まで帰って来た。
その最初の場所で幕尻優勝。今場所を含めて1年間、6場所全てで勝ち越し優勝3回。親方は感無量であろう。“ 史上最大の復活劇 ” と言っても過言ではない。
2017年秋、大関を陥落してから4年の歳月が流れた。序二段まで落ちた照ノ富士がここまでやってくれるとは親方も想像できなかったのではないか。
来場所は間違いなく綱取りがかかる場所になる。
本人が語るように、相撲人生もうそれほど長くない。次の場所で横綱になり有終の美を飾って相撲人生を終えたいというのは当然の夢だろう。
日本人に最も足りないハングリー精神と、闘う姿勢が面構えに宿る。そんな姿勢こそ日本人は見習うべきだ。
照ノ富士の優勝、勝負にかける執念は横綱不在の大相撲を締めてくれた。
優勝インタビュー。
NHKアナウンサーの冴えないインタビューはいただけなかった。
優勝インタビューは優勝の興奮をさらに盛り上げるのが役目がある。
今回の照ノ富士の優勝は序二段まで下がった屈辱からの復活劇ではないか。その苦労、頑張り、ケガ、苦しさをはねのけた4年の劇的なストーリーを彷彿させるような芸当を見せてみろと言いたい。なんとも味気ないインタビューだった。
何はともあれ、“ 頑張っている ” 照ノ富士が優勝してよかった。
めでたし、めでたしだ 。