ミャンマーの春遠く

世界,日本,雑記

Vol.2-7.15-548  ミャンマーの春遠く
2021.7.15

今年2月1日にミャンマー国軍のによるクーデターが起きてすでに半年が過ぎた。

国軍は暫定大統領が一方的に期限を1年間とする非常事態宣言を発出し、国軍が政権を掌握。ミン・アウン・フライン国軍総司令官に司法を含む全ての権力を委譲、事実上の国家指導者となった。

抗議デモは今も続くが、軍政は強まるばかりで民主的政権に戻る気配は一向にない。死者は900人を超えた。

国民民主連盟政権の実質的な指導者であったアウンサンスーチーは拘束されたままである。

そもそも今回のクーデターは2020年11月8日に執行されたミャンマー連邦議会の総選挙で、アウンサンスーチー氏率いる与党・国民民主連盟(NLD)が改選議席476議席のうち8割以上を占める圧倒的多数を獲得したのが発端である。

ミャンマーの軍政を弱めることを目的とする憲法改正阻止とアウンサンスーチー氏の抹殺が目的である。

ミャンマーの憲法改正には上下両院の議席の4分の3を超える賛成が必要があるが、NLDはその議席を上回ったのである。軍は是が非でも改正阻止しなければならない。

しかし、この規定で両院の25%を軍の指名議員とする規定がある。つまり1/4は軍の指名議員であり、軍人が全員軍の意向に添って反対票を投じれば、3/4を超えることはできない。

ただ、一つ間違えば政権運営はNLDに乗っ取られるという恐怖だ。これを事前に封じ込めるために起こしたのが軍事クーデターである。

軍も用意周到だ、今回のクーデターの理由を選挙の不正を理由にクーデターを正当化した。したがって、1年後の非常事態宣言経過後に改めて総選挙をやり直す方針を示して一応筋を通した。

しかし、手続きなどに2年ほどかかるとし期限すら示さない。ただの時間稼ぎにすぎない。ずるずると長引かせ、軍政を根付かせようというのだろう。

ここまで、軍が強気に出ているのは、後ろ盾に中国とロシアがいるからだ。武器及び戦闘技術は両国はお手のものだ、北朝鮮しかり、この2国に抱きかかえられたら逃げることはできない。悪の枢軸に入ったからには徹底的に悪になりきるより方法はない。

ヤクザに手を染めれば簡単に抜けられないのと同じだ。

米中の争いから、世界は徐々に民主主義陣営と独裁軍事政権に色分けされつつある。中国、ロシアがどのようにして陣営に引き込んでいくのか、過去の米ソの冷戦より危険な時代に入ったといっていい。

過去の米ソ冷戦は、ある意味安定していた。やはり、中国の覇権主義の台頭はロシアという眠れる獅子を目覚めさせたと言ってもいいのではないか。ロシアにとっては同じ体制で金持ちの中国を仲間にすることで、対米上の大きな対抗軸となる。

しばらくはというより、かなり長くこの不穏な世界の動きは続くのではないか。

中国はコロナで生物兵器の実験は終了した。無人兵器も宇宙兵器も開発しているであろう。ロシア同様ワクチン開発能力もロシアに引けをとらない。ロシアとはあらゆる面で対等以上の関係で維持できる。この両悪霊に吸いつけられるように同盟を組む国はいくつもある。中東、アフリカ、南米等決して少なくない。

恐ろしい世界になった。

今回のクーデター発生直後、ミャンマーではテレビとラジオの放送が止まった。海外のテレビ局もこの影響を受け、NHKワールドTVなどの国際放送もミャンマー国内では放送が遮断された。また、インターネットや電話が不通となり、モバイルデータ通信が使用できなくなった。

やることは中国と全く同じである。クーデター前に中国の外相と会っているところから推測するに指示通りの動きなのであろう。

6月にはもう一つの後ろ盾、ロシアにミャンマー国軍の最高指導者が訪問した。今後の行動を綿密に打ち合わせたのは間違いない。ここまであからさまにロシア、中国との連携を世界に見せつければ後には引けない。徹底抗戦ということだろう。

アウンサンスーチー氏の民主化への戦いは以前から日本でもたびたび報じられ知名度は高い。それだけに民主化への期待も高く支援もしてきた。

しかし、振り出しに戻るどころか最悪に突き進んでいる。かつてのベトナム戦争のように、アメリカ対中国・ロシア陣営の代理戦争が内戦化しなければいいがと危惧する。

千葉でワールドカップ予選に参加していたピエ・リヤン・アウン選手は試合中3本の指でミャンマー国軍への抗議を示した。帰国すれば命の危険があり帰国を拒否、日本に留まる選択をした。ピエ選手には家族がいる。その身の安全は保障されないという厳しい状況での選択だった。。

日本で起きたピエ選手の事件は世界にある恐怖の現実を示した。しかし、平和な日本人に人為的な死の恐怖は実感できないであろう。

ミャンマーに春は来るのか。ピエ選手にはきっと遠い春になる。日本はピエ選手の身の安全の確保が精いっぱいである。

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