躺平(タンピン)侮れず

世界,雑記

Vol.2-7.23-556    躺平(タンピン)侮れず
2021.7.23

今、中国の若者たちの静かな抵抗が広がっているという。

チャイナウオッチャーの天沼康氏の雑誌のコラムによれば、躺平(タンピン)という社会現象が起きているそうだ。

「躺平」は「あおむけに横になる」と言う意味のようだが、具体的には「不買房・不買車・不消費・不恋愛・不結婚・不生育」つまり、「家も車も買わない、消費もしない、恋愛も結婚も子育てもしない」、まさに人生への様々な欲望を捨てる。世捨て人のような人生観らしい。

そんな、考えに行き着いたのは何故か。

今の中国では、朝9時から夜9時まで、週6日働く、まさに「996」と言われる労働条件がある。これだけ働いても、住宅は高くて買えない。子供や両親を養う経済的負担が大きく、かつてのような社会の平等が失われ、ただ資本家や政治家から搾取されるの人生なら、いっそのことニラのように横になって、適当に過ごそうということらしい。

つまり、躺平は単なる現実逃避ではなく、現在の中国社会への反抗だという。政府もニラのように横になられると刈り取るには刈りようがないとして彼らを “ ニラ ” というそうだが、政府もこのような現象が国内に広がることに警戒感を示してる。

なぜなら、今中国はこれからの100年を世界制覇の野望を持っている。躺平のような価値観が広がれば、労働生産性は減少し経済発展にも影響する。今まさに米国との対立の中、内需拡大経済の発展が大きな課題になっている。したがって、この「躺平」現象がさらに若者の中で広がることを大いに警戒しているというのだ。

たしかに、中国は都合の悪い人間を排除するために、勝手に法律をつくり、その抵抗者には徹底して弾圧を加えてきた。しかし、中国共産党に思想で反旗を翻したわけではない。これには政府も困ったと頭を抱えた。かといって放置できない。というジレンマに陥った。

そこで、天沼氏はこんな予想をした。

「もし、躺平が持続的で大規模な運動となれば、社会にプラスの変化をもたらす。階級の固定化、『ニラ』への搾取といった状況は維持できなくなる。そのため政府は人々を豊かにする措置を取らざるを得ないだろう」というのだ。

そうなると、低い賃金で世界の工場として君臨してきた中国、さらにコストが上がるとすれば、中国からの脱出は必然的に高まるだろう。

今、問題のウイグルでの低賃金による強制労働は、こんな中国国内で静かに蔓延する「躺平」現象が影響しているのかも知れないと思った。

果たして、天沼氏の予測通り、政府は中国労働者の労働条件の改善に動くのか、米国と対立する中どんな対応をするのか興味深い。

以外と中国共産党にとって「ニラ」の動きはボディブローのような効果をもたらすかもしれない。

“ ニラよ頑張れ ” とついエールを贈りたくなった。

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Posted by 秀木石