アインシュタインの予言

日本 雑記

Vol.2-8.11-575   アインシュタインの予言
2021.8.11

ちょっとした調べ物をしていてひょんなことから「アインシュタインの予言」にいきついた。しかし、今回はあの有名な100年以上も前に予言した重力波の話ではない。

特殊相対性理論および一般相対性理論などでノーベル賞を受賞したアインシュタインの「予言」が後に、ことごとく証明され、「予言」はアインシュタインのトレードマークのようになった。

そこで、物理学ではないまぼろしの『アインシュタインの予言』である。

『近代日本の発達ほど、世界を驚かしたものはない。
この驚異的な発展には、他の国と異なる何ものかがなくてはならない。
果たせるかなこの国の、三千年の歴史がそれであった。
この長い歴史を通して、一系の天皇をいただいているということが、今日の日本をあらせしめたのである。
私はこのような尊い国が、世界に一カ所位なくてはならないと考えていた。
なぜならば世界の未来は進むだけ進み、その間幾度か戦いは繰り返されて、最後には戦いに疲れる時がくる。
その時人類はまことの平和を求めて、世界的な盟主を挙げねばならない。
この世界の盟主なるものは、武力や金力ではなく、凡ゆる国の歴史を抜き越えた、最も古くまた尊い家柄ではなくてはならぬ。
世界の文化はアジアに始まって、アジアに帰る。
それはアジアの高峰、日本に立ち戻らねばならない。
吾々は神に感謝する、吾々に日本という尊い国を、作って置いてくれたことを。』

この文章の出典とされる雑誌『改造』1922年(大正11年)12月号のアインシュタイン特集号には、該当の文章は存在しない。という。では何故こんな予言文章が出たのか、ということだ。

1922年10月、アインシュタインは例の有名な特殊相対性理論および一般相対性理論等で世界的物理学者として注目を集める中、日本に向け旅立った。

その船上でノーベル物理学賞の受賞の知らせを受けている。当然日本にも情報が入り、その大物理学者が来るというので大いに盛り上がった。

ジイは「アインシュタインの旅行日記」という本を所有しているが、それによると1922年10月にチューリヒを立ち11月17日には神戸に着いている。その後、日本の各地を旅し、12月29日門司を出航し日本を後にした。ほぼ一か月少々の旅である。

従って、雑誌「改造」に載ったとしても不思議はないが、該当の文章がないということと、初めて日本を訪れ、如何にラフカディオ・ハーンの描いた日本に触発されたとはいえ、ここまで日本観を確定するには滞在期間が短すぎる。従って偽書説も否定できない。

偽書説の根拠としてドイツ文学研究者の中澤英雄・東京大学教授は、
「この発言がアインシュタインのものであるという確定的な典拠は存在せず、またアインシュタインの思想とは矛盾する内容であると発表した」とある。

しかし、この「予言」文があまりにも「日本人の愛国心をくすぐる内容」であったがために、再三引用されたようである。

ジイが思うに、アインシュタインが日本を好意的に語った言葉は数多くあり、そのいくつかをツギハギして一つの文章にした可能性を考える。そう解釈すれば少々装飾はあるにしても全くの嘘八百を言っているというわけではないが、一字一句同じ文章の存在はないようだ。

しかし、そのことで日本人が元気になり、さらに身を正す効果があったなら真剣に批判する気にもならない。あっそうなんだ、と笑って済ませればいいようなことだ。

ジイが所有する「アインシュタインの旅行日記」にこんな記述がある。
『日本人は正当にも西洋の知的業績に感嘆し、成功と大いなる理想をめざして科学に没頭しています。しかし西洋より優れている点、つまりは芸術的な生活、個人的な要望の簡潔さと謙虚さ、そして日本人の心の純粋さと落ち着き、以上の大いなる宝を純粋に保持し続けることを忘れないでほしい』

この評価も十分日本の神髄をとらえている。アインシュタインのこの忠告こそ大切にしなければならない。