中国社会の病巣

世界,日本,雑記

Vol.2-8.22-586   中国社会の病巣
2021.8.22

今まで慣れ親しんできた国民総生産 (GNP)が、国民総所得(GNI)に入れ代わっていたのは知らなかった。

経済規模を示す国内総生産(GDP)、何かと話題の多い中国が、日本を抜いて世界第二位の経済大国になったのが10年前である。

中国は今世紀に入って以降、スピード感のある成長を維持し、2019年の国内総生産(GDP)は約1530兆円近くで、世界第2の経済規模を維持、安定した地位にある。

では、中国14億の民は皆高所得で幸せな生活を送っているのかといえばそうではない。

中国国家統計局によると、中国の1人当たり国民総所得(GNI)は2019年に1万410ドル(約110万円)と1万ドルの大台を突破し、高中所得国の平均である9074ドルを上回ったとした。

2000年の1人当たりGNIは940ドルで世界銀行の定義で低中所得国に分類され、2010年に4340ドルで初めて高中所得国入りした。世銀の1人当たりGNIランクで2000年は207カ国中141位だったが、2019年は192カ国中71位となり急成長している。

そんな中国でエリートたちはどんな生き方をしているのか。

チャイナウオッチャー・天沼康氏の「ある殺人事件」のレポートである。

復旦大学のエリート学生である姜は、アメリカジョンズ・ホプキンス大学で博士号をとり帰国。復旦大学で非常勤職員として働きだした。

いずれ常勤職員になり安定した生活を夢見ていたと思われるが、同学科の共産党委員会書記の王永珍からある日突然解雇を言い渡される。

姜は不条理にがまんできず王永珍をナイフで刺して殺害してしまう。
彼が殺意を抱くほどの動機とは何だったのか、
「私のことを陥れてきた。私は職場で不公平な扱いを受けていた。今までずっとそうだった」・・・男は落ち着いた声で答えたそうだ。

中国の大学では非常勤から常勤のへの昇格は5%と低い。

ある中国人の話である、
『中国では、大学は単なる教育や学術機関ではなく、中国共産党の宣伝機関や人材育成、理論研究機関という役割を持っている。全ての大学は共産党から直接管理され、学部や学科には党組織が存在する。さらに近年当局は多くの学生を「情報員」として雇い、(共産党政権を批判するなど)好ましからざる教員を密告させている』

『教員の学術的な能力や成果だけでなく、共産党への忠誠も問題とされる。そして校内にある党組織はこの制度により権力を乱用している』

このことを考えると、党書記として権力を保持する「王」が「姜」を個人的に嫌っていたか、あるいは共産党に批判的であったかどちらかであるが、党の権力を使って解雇したのは事実だ。

中国でまともに生きて行くには共産党に真っ赤に染まらなくては安定した生活は保障されないというのはこの一事をもって明白である。

大衆は殺人犯の「姜」に喝采を送ったという。

天野氏は
「共産党政権下の閉塞的、抑圧的な社会で行き場のない怒りや不満が極めて不幸な形で噴出した。それに喝采を送る人がいることが、中国社会の病巣を物語っている」と語った。

不満分子の抹殺は発芽する前に摘み取るのは中国の常識かもしれないが、下部の権力が自分の感情にまかせて行う不条理な権力行使もあるのだ。中国社会は病巣どころではない、身体全体が癌細胞と化したようである。

以前から “ 20??年中国暴発 ”  “ 中国は崩壊する ” などの著書も出た。しかし、経済は拡大し、軍備は拡張の一途、周辺小国への弾圧に手を緩めることもない。暴走する以外14億を抑えることは不可能と知った習近平は、己の狂気に酔いしれる以外ないのかもしれない。

果たして14億の暴発があり得るのか、その時、日本は無傷でいられるはずはない。覚悟が必要である。

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