45才定年制の未来とは

日本 雑記

Vol.2-9.23-618  45才定年制の未来とは
2021.9.23

三菱商事、ローソン、サントリーホールディングスとトップ企業を渡り歩く最強の経営者である新浪剛史社長。

「45歳定年制」に言及し波紋を広げている。

記者会見で
「定年という言葉を使ったのは、ちょっとまずかったかもしれない」と釈明。その上で、「45歳は節目で、自分の人生を考えてみることは重要だ。スタートアップ企業に行こうとか、社会がいろんなオプションを提供できる仕組みを作るべきだ。『首切り』をするということでは全くない」と述べたという。

大手企業に勤める社員はドキッとしたかもしれない。
とっさに「俺は大丈夫か?」「退職金はどうなる?」「第二の職場はみつかるか?」「今後、職場はどう変わる?、雇用形態は?厳しくなる?等々」が脳裏をよぎったに違いない。

新浪社長、昔から大胆な改革を実行に移し企業のイノベーションに貢献してきた社長のイメージがある。

現在はサントリーホールディングスの社長を務めながら政府の経済財政諮問会議のメンバーでもある。

今回の大胆な発言にも単なる思いつきとは思えない、遥か遠くに描く最初の第一手のような気がする。

一般的には定年延長の流れできている。逆に45歳を過ぎた社員を強制的に解雇すれば「解雇権濫用法理」(労働契約法16条)に抵触する。

果たして世界は、
アメリカやイギリスには定年制度はないが、ドイツやフランスは65歳から段階的に67歳に延長する予定。

中国でさえも少子化による労働力確保の観点から現在の60歳定年(男性)を引き上げようとしている。

日本も同じ理由で定年延長ではなく「65歳までの雇用確保義務」という疑似定年制度を敷いている。

真意はどこにあるのか

1、「人材の流動化」を促進したい。
人材流動化によって生産性の高い分野へ人の移動を促し、日本経済を活性化する。

そこで、「ヒューマン・ニューディールの実現」という言葉が出てきた。
ヒューマン・ニューディール政策(人材への投資と労働移動を大胆に進めること)

例えば、「大企業で経験を積んだ人材の円滑な労働移動を支援し、中小企業や農業等の輸出拡大につなげる。また、意欲ある若者が存分に活躍できる環境を整備する」と述べている。具体策としてリカレント教育(生涯を通じて学び続けていくこと)の強化や学び直しの支援、そのための週休3日制の導入などを挙げている。

ひとつには、大企業で経験を積んだ中高年社員に中小企業に転職してもらうという意図だ。

確かに、高齢者が増え、定年になっても再雇用され働き続ける実態を考えれば、早いうちにスキルアップを図り、あらゆる職業にチャレンジするのもいいとは思う。

しかし、そこには企業サイドに立った考えも浮かび上がる。早期退職、もしくは転職が容易にできることにより、退職金などの企業負担の削減にもなる。あるいは、人材の流動化によって、いい人材を入れ、悪い人材を排除するというドライな企業倫理も成り立つ。

現在の正社員や、派遣社員、あるいはパート社員のような形態がより流動的になる。週休3日になれば副業的な働き方が増えるのは間違いない。

働く方も流動的な動きができるが、スキルアップしていかないと安定的収入には結びつかない可能性もあるのではないか。

新陳代謝というが、元気な内はのんびりせず中小企業で能力を発揮しろ、と言うようにも聞こえる。

新浪氏は人材流動化の障害となっている終身雇用、年功序列賃金、退職金制度の日本型雇用システムの限界から見直しも訴えている。

年功序列を前提とした賃金体系の見直しとは経団連が提唱する職務給や成果重視の賃金への移行を意味する。そして終身雇用の最後の砦というべき退職金にくさびを打ち込むことで人材の流動化を促す狙いがある。

究極は「解雇規制の緩和」だ。
従業員を解雇するには前述した「解雇権濫用法理」によって4つの要
①人員整理の必要性
②解雇回避努力義務の履行
③被解雇者選定の合理性
④解雇手続きの妥当性、を満たす必要がある。

クリアするのは容易ではない。そのため現行のリストラ手法である「早期退職募集」では、退職割増金を用意し、さらに退職勧奨を行って本人の同意を得るなどコストと労力をかけている。そうした手間を払拭したいということだ。

簡単に言えば、
①勤務態度が著しく悪い社員
②結果を著しく出せていない社員
③他の社員に迷惑をかけている
など会社にとって不必要な社員の排除だ。

しかし、③の判断などはかなり微妙な時もあるだろう。いずれにしても新浪らしく大胆な発想を世間に投げかけておていて、活発な議論の中から新たな雇用形態を生み出そうとしているのではないか。

自社内の改革であれば、一刀両断でできるのであろうが、社会全体に影響力のある改革となるとそう簡単ではない。そこにメスを入れようとしていることは間違いない。

小泉政権の時に労働者派遣法の改正が主導され、非正規雇用の労働者が増えた時があったが、その時とは比べ物にならない。社会構造がガラッと変わってしまう。

完全に欧米型に近づく。まだ全貌がつかめない。しかし、1、2年で、議論が急ピッチで進むのではないか。

世は無常であることは頭では理解できる。しかし、変革に前向きになれる場合と、気が進まない変革もある。

国民が、厳しいが面白い “ やってやろうじゃないか ” と、意欲の出る改革であってほしいと願う。そこには誠実に頑張れば、そこそこの生活ができる未来が想像できなくてなならない。