歴史決議

世界,日本,雑記

Vol.2-11.9-665  歴史決議
2021.11.9

“ 歴史決議 ” 聞きなれない言葉である。

正式には『建国以来の党の若干の歴史問題についての決議』といって、中国建国以来の一連の重大な歴史事件について、公式に全面的な総括を行うもので、歴史決議と略称される。

簡単に言えば時の権力者が己の権威を高めるために、過去の歴史を総括しすることによって、新たな歴史は “ 俺 ” がつくると宣言し、時代に区切りをつける儀式だ。

したがって党の歴史評価として最も重要な文献定義されている。

中国共産党は11月8日~11日まで、第19期中央委員会第6総会(6中総会)を開く。
そこで審議されるのが「党100年の奮闘の重大成果と歴史経験に関する決議」である。

1945年の毛沢東以来3回目である。偉大な権威者が歴史の節目節目に権威づけのために行ってきたのが「歴史決議」である。

俺は偉大な権威者だ!!だから「歴史決議」を行う。習総書記の権威への執着である。

習主席は1981年の鄧小平主席が行ってから40年になるが、歴史的論争など問題があるわけではない。しかし、来年秋の党大会で、長期独裁の弊害をなくすために作った2期10年の定年制のルールさえも廃し、トップの地位の続投を狙っている。3期目を目指す中において、自身の権威を高め、不動の地位を築こうという狙いがあって「歴史決議」が必要なのである。

≪過去の歴史決議≫には
◆1945年・毛沢東
・右派や左派などの党内の路線問題について結論を下し、「全党は一致して毛同志の路線の正しさを認識し、その旗の下に団結した」と強調
◆1981年・鄧小平
・文化大革命を「党、国家、人民に建国以来最も深刻な挫折と損失をもたらした」と総括し、毛沢東には「功績第一、誤り第二」という評価を下す。

◆2021年・習近平は何を総括するのか?
・世界は脱炭素、中国の台湾侵攻、チベット、モンゴル、ウイグル人権問題、南シナ海の力による現状変更等、世界が厳しい視線を送る中、今回はどんな内容になるのか世界が注視している。

習総書記は民主主義を絶対悪と考る。欧米諸国が周辺を固める中、習氏が本気で民主主義と戦う決意を固めたのではないか。そのために絶対的権威を確立するために「歴史決議」が必要となったのだろう。

まずは、自分の立ち位置を絶対的なものとするために憲法も変えた。それによって、来年の党大会には総書記ではなく “ 党主席 ” に狙いを定めたのだ。

軍事力もほぼアメリカを凌ぐまでになった。足らない部分は年率7%程度の軍事費投入で拡充する。ただ、心配は経済の減速である。果たして7%維持できるかという不安は残る。

宇宙開発も軍事のためである。軍事費、装備についてはすでにアメリカを上回っている。
①中国の総兵力・・・約200万人(米国約135万人)
②軍事費:約28兆円但し毎年7%弱の増加(米国約86兆円)
③地上軍・・・91万5000人(米国:48万6000人)
④空軍力・・・5,163機(米国:1万3000機)
⑤海軍力・・・約360隻(米国:297隻)
⑥核弾頭・・・320発(米国:5800発)
⑦ミサイル・・・未発表(米国は旧ソ連と結んだ廃棄条約によって減少したがって中国の独壇場)

今回の「歴史決議」は
①反腐敗に脱貧困 ②一帯一路の巨大経済圏構想 ③世界3位の経済大国にした等を盛り込み、中国の政治体制の勝利を宣言し、民主主義に競り勝った中国を賛辞する内容になるのではないか。

今までに、欧米がどんなに批判しようが、ウイグル等の人権問題を内政問題としてはねつけてきた。香港も力ずくで施政下に置いた。南シナ海の軍事基地も着々と準備をし、台湾進攻も想定内に入った。残るは己の権威だ。

来年の党大会で3期目の総書記に選出されれば、今は廃止されている建国の指導者である毛沢東と同じ「党主席」の地位を復活させるつもりである。

すでに本人は、天安門広場に掲げられている毛沢東の肖像画と同じ灰色の人民服を着てそのイメージを印象づけている。

台湾の要人が、中国の侵攻は2年先ではないかと言ったのは、習総書記のそういったスケジュールに符号する。

来年秋の党大会で、習総書記が3期を勝ち取り、総書記から党主席に肩書を変えた時、いよいよ世界制覇へ猛進するのではないか。その手始めが台湾進攻である。さらにその先は尖閣上陸となるのは必至である。

毛沢東時代に先祖がえりするとすれば、時代錯誤も甚だしい。いよいよ人間凶器と化す危険性を孕んだ「歴史決議」が11日決定される。

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