トヨタ VS 日鉄
Vol.2-12.4-690 トヨタ VS 日鉄
2021.12.4
日本製鉄が今年の10月14日に中国鉄鋼大手の宝山鋼鉄とトヨタ自動車を特許侵害で提訴したのはすでに報道されている事実だ。
素材メーカーが最重要顧客を訴えるなど、よほどのことがない限りありえない話だ。
日鉄社長の橋本英二社長は提訴に踏み切ったことに対し「全く迷わなかった」と言い切る。よほど腹に据えかねた上、熟慮に熟慮を重ねた結果での提訴と考えられる。
ところが、訴えられたトヨタは、「前触れなく提訴してきた」「(訴えるなら)ひと言あってもいいのでは」と不意打ちをくらったような言い方である。
何とも不思議な話だ。“ 世界のトヨタを訴えるのである ” 事前に何も話がなかったなどあり得ない話しだ。
思えば、日本の自動車メーカーが海外進出する際には、部材メーカーが一緒に進出していた時代もあった、今はコストダウンの観点から中国をはじめ多くの途上国へシフトされたが。
しかし、「トヨタと日鉄はこれまで盟友と呼べる関係を築き、互いに支えあってきた。軽くて丈夫な鋼板も、燃費性の高い自動車も、両者を含む鉄鋼メーカーと自動車メーカーの協力があったころこそ生まれた(産経新聞・井田氏)」というのが事実であろう。
であれば、何らかの意思疎通がなされていたとみるのが妥当である。
井田氏(産経新聞)の情報によると、日鉄にとって
「無方向性電磁鋼板は、電動車の普及で需要が世界的に拡大している。しかも日本の鉄鋼メーカーが技術開発で先行している。いわば「虎の子」の商品だ。」
「そのうえ日鉄・橋本社長は、宝山などの中国メーカーを『最大のライバル』とみなしている。」
そんな業界環境の中
「昨年のメーカー別の粗鋼生産量ランキングでは、宝山の親会社で首位の宝武鋼鉄集団を含め、中国勢が7社も10位以内に入った。これに対し、1990年代の新日鉄時代首位だった日鉄は、5位まで順位を落としている。中国の不正を見逃すことは、自身の首を絞めることにほかならない。」
と切羽詰った事情があった。
確かに天下のトヨタに何もなしに、それも突然に訴訟などあり得ないだろう。伏線として考えられるのは、2年前「無方向性電磁鋼板」の供給を増やすよう求められた際、日鉄は値上げ条件を出した。しかし、トヨタは受け入れることなく採用に踏み切っている。
これが事実だとすれば、トヨタの傲慢な対応が透けて見える。日鉄社長と豊田章男社長とは面識がないという。盟友といえるほどの会社のトップが面識がないとはどういうことか。ショックアブソーバーが機能していなかったことが原因とも考えられる。
天下のトヨタ社長、日鉄の橋本英二社長もかなりの剛腕で鳴らした人物のようだ。
お互いのトップがちょっとした行き違いから “ ふざけるな ” “ 甘く見るな ” との意地から出た訴訟だとすれば、大変なパワーの損失である。
いずれにしても訴訟になったのだ。何らかの結果がでるであろう。普通なら、やるだけやってシャンシャンとなるような気がする。しかし中国企業・宝山が絡んでいる。 “ そうは問屋が卸さない ” となれば厄介である。
今、もっとも敏感なのが、中国と日本の関係である。どのような訴訟になるのか今回ばかりはちょっと事情が違う。泥沼とならなければいいが、、、経過を注視したい。
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