最後の灯が消えた香港

Vol.3.01.17-734    最後の灯が消えた香港
2022.01.17

かつて、ブルース・リーが活躍した香港は今はない。

香港の記事を目にする度に香港が徐々に沈没し、姿かたちが完全に消えて行く過程をここ数年味わった。

風前の灯だった「立場新聞」が消え、インターネットメディア「衆新聞」が閉鎖に追い込まれ、ついに香港は亡くなった。息絶え絶えだった重症患者が最後の酸素チューブを外された感覚だ。

そこにあるのはかつて「ブルース・リー」が活躍した遺跡としての屍が、香港島という名前を借りて海に浮かぶだけだ。恐ろしくて誰も近づかない。住んでいるのは人間の顔をした、習近平操る独裁マシーンだけだ。

今から25年前の1997年7月1日、イギリスは香港の主権を中華人民共和国に返還し、香港は中華人民共和国の特別行政区となった。

いわゆる1国2制度が始まりが香港の終わりの始まりだった。

香港が中国へ返還されても社会主義政策を将来50年(2047年まで)にわたって香港で実施しないことを約束したのはまぼろしだった。その約束が25年も経たないうちに無惨に打ち砕かれた。

その兆候があらわれたのが
2003年の国家を分裂させたり、反乱を扇動したりする行為を禁止するのが国家安全条例である。この条例が制定されれば、一国二制度で認められているはずの表現の自由や民主主義が損なわれるかもしれないとの危機感から50万人がデモに参加した。何とか撤回に持って行くことに成功し命をつないだ。

2012年に愛国教育の必修化導入により、小中学校で「共産党は素晴らしい政党だ」ということを教えようとした。これにも多くの住民の反対運動により撤回に持ち込んだ。

2014年9月には黄之鋒氏や周庭氏などの若者や市民が民主的な選挙を求める抗議活動『雨傘運動』を展開する。1200人の代表が間接選挙で選ぶ香港トップの行政長官を市民が直接選べるように要求したが、当局に強制排除された。この頃から中国は毒性を強める。

2014年に英国が宣言の履行状況の現地調査を実施しようとしたところ、中国は突如、「内政干渉」として香港入り自体を拒否する。

2016年には、中国共産党に批判的な本を扱っていた香港の書店の関係者が相次いで失踪する事件が発生する。

2017年には、中国政府はもはや中英共同声明は意味を成さない文書であると表明。一国二制度破壊の予兆だ。

中国共産党はあの手この手の中国同化作戦がうまくいかない。そこで次第に強硬姿勢を強める。

2019年には香港で「逃亡犯条例改正」を提案。この案をめぐり反政府デモが頻発する事態に発展。

そしてついに
2020.6.30「香港国家安全維持法」が施行される。
その内容とは
• 分離独立:国家からの離脱
• 反政府:中央政府の権力・権限を揺るがす行い
• テロリズム:暴力や威圧行動
• 香港に介入する外国勢力との結託
等が犯罪行為とされた。この法律によって多くの民主化活動家が逮捕収監される。

このほかにも次々と禁止事項が施行されていく。
※民主活動家3人が書いた本、少なくとも9冊が公立図書館で閲覧や貸し出しが禁止
※香港の自由と民主を守るという思いを込めて歌う「香港に栄光あれ」という歌を歌うことも禁止
※社会問題について理解を深めたり、批判的な考え方を養ったりするためのディスカッション形式の授業が禁止
※民主化運動や共産党に関する記述などが教科書から削除
※愛国主義が大事、共産党が大事と繰り返し強調、「一国二制度」ではなくあくまで “ 一国 ” を強調

この法律に違反したとして、制定前の行為に対してもお構いなし、まるで東京裁判の再現である。

2020.12
民主活動家の黄之鋒、周庭、林朗彦の3人は昨年6月に香港政府の「逃亡犯条例」改正案に抗議して、警察本部包囲デモを扇動したとして実刑判決・収監。

2021.4
2019年の反政府・民主派デモで違法な集会に参加したとして、メディア界の大物、黎智英氏など著名な民主派活動家7人に有罪判決・収監。

2021.6月
中国に批判的な論調で知られる香港の新聞「リンゴ日報」は、香港国家安全維持法に違反したとして警察に資金が凍結され、発行停止に追い込まれる。

2021.12月
最後の民主派新聞「立場新聞」が香港国家安全維持法に違反したとして資産凍結、代表者を含め6人が逮捕される。

2021.12.23
港大学構内に設置されていた天安門事件を追悼する「彫像」が撤去される。

2021.12.24
香港の名門大、香港中文大当局は24日、大学の入り口付近に10年以上設置されてきた「民主の女神像」を撤去された。今は監視カメラが立ち並ぶ姿に変貌。

2022.1.2
香港の民主派系インターネットメディア「衆新聞」が国家安全維持法の圧力で営業停止に追い込まれる。、、、これで民主派系メディアはほぼ壊滅された。

香港政府に批判的な報道は徹底的に潰された、今は暗黒である。

SNSで「今は中国にいない、香港にいるよ」とでも言おうものなら中国本土のネットユーザーに「香港は中国の一部だ!」「香港独立分子め!」とあっという間に謝罪に追い込まれるという監視の眼に晒されている。

英領時代は懐かしい過去の話になった。

昨年香港議会もすべて共産党に入れ替わった。今、民主派はいつ逮捕されるか不安の中、息を潜めて生きている。

2020.6月30日香港国家安全維持法の施行後、反政府・反中デモは鎮静化、逮捕者は1万人を超えた。

今、香港はない。ただ、中国の中の香港島があるだけだ。4億台の監視カメラによって全国民の顔認証登録作業が着々と進められていると推測する。

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Posted by 秀木石