日本人はなぜ日本を愛せないのか

日本,

Vol.1-4.12-89 日本人はなぜ日本を愛せないのか・・・01
2020.04.12

こよなく日本を愛するジイが長年考えてきたことだ。
なぜ、いつから、そのルーツは、、、ある時目にしたのがこの本だった。

「日本人はなぜ日本を愛せないのか」(著者:鈴木孝夫/新潮新書)
2006年(H18)1月発行図書なのでそれほど古くはない。
なるほどと、納得する部分が多くあった。その内容を紹介したい。

長きに亘り日本は、外国を美しく誤解したまま付き合ってきたという。
日本の持つ歴史的、地理的、地政学的特殊性、海に囲まれ極東に位置したヨーロッパから最も遠い国である。という認識がまず必要。

6世紀~20世紀の1300年いろんな国と付き合うが、東南アジア一帯が植民地化される中、日本の発展の向上に役立つ有り難い面だけに限って付き合うことができた幸運が、結果として外国は素晴らしい。日本はまだまだ遅れている。になり、外国に対して自己卑下、自己嫌悪に繋がっているとする。

明治に入り、独立を模索する中で大東亜戦争に負け、アメリカの一方的な日本悪玉論(WGIP)と、共産主義者の反日宣伝で、自虐的日本観が植え付けられていった。とするのが日本が近代に入る導入部だ。

この辺りはまあまあ理解しているところだが、ここから興味深いエピソードを入れながら日本と外国の違いを浮き彫りにしていく。

日本人は、外国の一面しか見ていない。
例えば、日本人の多くは「どうしてフランスの犬はあんなに行儀がいいの?、どんな躾をしているの?」と不思議がる。フランスに限らずイギリスでも、犬の成長過程で吠える犬、行儀の悪い犬は行政に連絡して処分してもらうのが一般的。
ここに決定的な日本との違いがある。日本では犬も家族同様の感覚で育てるが、家畜と割り切る。

ある高齢の一人暮らしの女性が、ネズミの罠にかかって片足を失くした愛犬を打ち殺すということがあったが、ヨーロッパでは人間の役に立たなくなった家畜は自己責任で処分することが求められている。
最も衝撃的なのは、競馬で有名なイギリスで競走馬であっても骨折した馬はその場で射殺する習慣があるそうだが、そう言えば以前そんな記事を読んで驚いたことがある。

日本なら片足を失くした犬を獣医師に手当をしてもらい、家族に一員として大切に育てる姿が感動物語としてTVで放送されたことがあったが、ヨーロッパでは信じられないことなのだ。
あの有名なタロー・ジローの感動の「南極物語」もヨーロッパでは成立しない。何故殺してこなかったのかと非難されるのがオチだ。

このルーツは今も根強く残っている人種差別にあるとする。
チャーチル首相は東洋人をバカにし切っていたという。
イギリスは何百年も中近東、アフリカ、インド、東南アジアの大部分を占領、白人以外の人間は劣等との確信を持っていた。
第一次世界大戦では戦勝国となった日本、「一切の人種差別に反対する」という条項を主張したが、英国が真っ先に反対を表明、簡単に葬り去られてしまった。

奴隷制度を持ったことのない日本は人種差別に対し理解しがたいことがあるのだ。

その一つにリンチという考えだ。
よく西部劇で、正式な裁判を経ず、街の住人が自分たちの判断で勝手に刑を執行することがあるが、「裁きはオレがつける」という自己中心的心のしくみによって可能となってしまう。

このリンチ、驚くことなかれ南部では非合法のK・K・Kという組織などによって、普段は善良な市民が深夜に覆面をつけて集まり、気に食わない黒人や東洋人たちを殺害することは今でも時々起っていると断言する。

何とも信じがたいことだ。日本の欧米崇拝論、何を持ってそこに至ったのか再考が必要である。

リンチの元の意味は、単なる一時の興奮にかられた衝撃的な暴力行為ではなく、確たる信念、自分たちの信じる社会正義に基づく組織的殺人行為としている。
 
この話を知り、数年前のシーシェパード(SS)を思い出した。
海洋生物の保護のための直接行動を掲げる国際非営利組織の海洋環境保護団体が日本のイルカ漁を残酷だとし、和歌山県太地町に乗り込み漁を妨害したり、イルカ漁を『ザ・コーヴ』という「差別と偏見に満ちた映画」を作成し、世界にその残酷さを広めた。日本人からすれば悪徳な「事件」だ。この時の一連の身勝手な行為を見て、鈴木氏が指摘した欧米の「リンチ」という意味がやっと理解できた。

まさに「自分たちの信じる社会正義」に疑問を持たず徹底的に「オレが裁く」を地で行く例だ。
さらに、まさかと思うが、この偏見極まりない映画が2009年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門で長編ドキュメンタリー賞を受賞したというから驚く。

このSSはテロ行為同然でイルカ漁を妨害しているが、本部はアメリカ合衆国ワシントン州フライデーハーバー。母港はオーストラリア連邦にあるが、オーストラリア連邦は実質、シーシェパードのテロ行為を黙認している、というから世界の実態を知るべしだ。

日本人の思いやりという他者理解の能力を、発達の早い時期からしつけられてきた日本。他国の文化に土足で上がるという行為など絶対しない。

日本の裁判員制度になかなかなじめない日本人だが、アメリカでは自分の考えや、意見が正しくなくても絶対だと信じ、他人を裁きたくてウズウズしている人がわんさといると言うのだ。
アメリカのリンチ思考からすれば、さもありなんと納得せざるを得ない。

人を裁くことに躊躇する日本人。なかなか理解できない外国人感情だが、どうして日本はなじまない裁判員制度を導入したのだろうか。
一般人にも裁判をより身近に感じ理解をしてもらう。というだけではなさそうだ。未だ、欧米崇拝論の残滓があると言う事なのかもしれない。

明治の脱亜入欧ではなく、独立日本の心ある共存共栄ではないか。

2600年に及ぶ愛しき日本の歴史。
世界に優るとも劣らない侃き優しき日本をもっと知らなければならない。実感である。

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Posted by 秀木石