脱炭素・一時停止せよ

世界,日本,雑記

Vol.3-02.20-768   脱炭素・一時停止せよ
2022.2.20

キャノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志氏は一貫して急激な “ 脱炭素社会 ” への移行に警鐘を鳴らしてきた。

図らずもその主張は今回のウクライ危機にも関係することとなった。

そのウクライナ情勢だが、今、ウクライナはNATOに加盟すれば、ロシアからの攻撃の危機にある。

この危機を回避するため、米国とEUはロシアに甚大な影響を及ぼす経済制裁を科すと警告している。

しかし、杉山氏によれば
「ロシア経済の柱は石油とガスの輸出だ。そのガス輸出を止められればロシアは大打撃となる。しかし、ロシアは主としてパイプラインで、欧州のガス需要の約40%を供給している。という事実を忘れてはならない。

もし、経済制裁でロシアからのパイプラインを停止すれば、欧州はたちどころに
① 暖房燃料不足
② 電力不足
③ 製造業は操業停止。 経済は壊滅する」というわけだ。

まさに、欧州経済はロシアに握られている。

どうしてそうなったのか。ここが杉山氏の言いたいところだ。

◆ EUは「気候危機」説に憑りつかれ、脱炭素に突進した。石炭火力発電を縮小しガス火力へ依存、再生エネルギーに急激に舵を切った。

< 自然エネルギー・風力発電を大量導入 ⇒ 風が吹かない ⇒ ガス火力でバックアップ ⇒ ガス需要増で価格高騰 >という結果を招いた。

欧州にもガスは豊富に埋蔵されているにも拘わらず、「環境運動家」「公的金融機関」から脱炭素圧力により資源開発は停滞。さらに、石油・ガス事業の売却も進めた。

また、アメリカと同程度あるシュールガスの採掘技術を公害問題を理由に事実上禁止してしまった。

そのお蔭で、ロシアのガス依存が高まり、今の事態を迎えている。

ドイツなどは反原発で2022年度には原子力がなくなり、脱原発が完成する。ロシアからのガスパイプラインが生命線となった。

欧州の異常なる脱炭素への妄信によって、最大の受益者はプーチンのロシアである。

どんな経済制裁をしようが、プーチンがパイプラインを止めれば欧州はあっというまに生命の危機に陥る。

日本はウクライナ情勢の緊迫化を受け、ロシアから欧州へのガス供給が滞った場合に備え一部を欧州に融通する方針を固めた。しかし、長期保存がきかないLNG、一時しのぎにしかならない。

翻って日本はどうするかだ。

杉山氏は
1、原子力の再稼働を加速させる。そうすることによって国際的なLNG価格の高騰がもたらす経済的影響の軽減。余力分を欧州へ救済のためLNGを供給する。

2、緊急措置として、2030年までの発電量見通しを引き上げ、石炭火力の見直し、長期的に安定で安価な石炭調達を実現する

3、脱炭素は中国依存を招いてしまう。今のロシアと欧州のパイプラインと同じ危機に陥ることを避ける。

つまり、
① EVへの急激な変換 ⇒ 新しいバッテリーとモーター製造 ⇒ 大量にレアアースが必要となる ⇒ レアアース大国・中国から大量に輸入 ⇒ 台湾有事勃発 ⇒ 欧米・日本による経済制裁 ⇒ 中国が対抗措置としてレアアースの輸出停止 ⇒ EV社会、日本・欧州は経済危機に陥る。・・・・・というシナリオだ。

まさに、ウクライナ危機を教訓とし台湾有事に備えよというわけだ。

杉山氏は「急激な脱炭素は国家を犠牲にする」ことだと一貫して警鐘を鳴らしてきたが、ロシアと中国を除き、世界は今まさに、加速度的に脱炭素社会に一直線だ。

毎日、新聞に脱炭素記事が載らない日はない。

杉山氏の
『脱炭素一本やりの現行の日本のエネルギー政策は、独裁政権に力を与え、民主主義を滅ぼそうとしている。再エネ最優先の方針は一時停止し、緊急にエネルギー政策を再考すべきだ』

と改めて警鐘を鳴らした。

ジイもそう思うが、暴走機関車ではないが、走り出した世界の潮流を変えるのはそう簡単ではない。脱炭素の旗振りに大きな影響を与えた、やはりあの方の一声が必要である。

弱冠18歳、環境活動家グレタ・トゥンベリさんの

“ 民主主義を守るため、脱炭素は一時停止しましょう ” しかない。

しかし、この “ 鶴の一声 ” はかなり難しい。

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