日本人はなぜ日本を愛せないのか-02

日本,雑記

Vol.1-4.13-90 日本人はなぜ日本を愛せないのか-02
2020.04.13

「日本人はなぜ日本を愛せないのか」(著者:鈴木孝夫/新潮新書)

日本人が世界制覇の野望を持たなかったのは海による断絶がある。自己完結している世界。外国は現実味の薄い別世界だったと言うことだ。

宗教も大きい。
キリスト教という宗教。
聖典もない宗教など宗教ではないと決めつける宗教と日本人の宗教感覚は全く違う。自然に神が宿るとする心の置き方に聖典が必要とは思えない。英語という言語で説明できないものを劣等と決めつける西欧の考えだ。それでも外国のものは良いと進んで信じる日本人がいることも事実である。

アメリカは信教の自由を謳いながら大統領が一般教書演説で聖書に手を置く。日本なら信教の自由に反するというだろうが、アメリカでは問題にしない。日本じゃ地鎮祭に玉串料を役所が出したとして問題にする、しかし、役所のロビーのクリスマスツリーには誰も文句をつけない。ここにも西欧崇拝があるのか。

ユーラシア大陸の歴史は異民族間の戦争と侵略の歴史、非白人種に対する世界規模の残虐無比を極めた大侵略だった。その数々の悪行に、日本人は今でも非難や批判の気持ちを持たない。

なぜだろうか。

日本は明治までの1300年の歴史の中で白村江の戦い(663)を含め2度しかない。この間ヨーロッパではほとんどやむことなく戦争に明け暮れている。この穏やかな日本が一変するのは外国の圧力により無理やり鎖国をやめ開国を迫られたことに端を発す。
開国し独立国として歩むか、植民地に甘んじるかの選択であった。
欧米の列強に伍していくために武力でも対抗できる強い国になる必要があった。「脱亜入欧」のスローガンので殖産興業、富国強兵に励む。しかし1300年の平和に慣れ親しんだ日本人の感覚的体質に、戦いは異質と受け止める文化遺伝子があるという。

この当時、西欧列強の侵略は進み、インドシナ半島(フランス)、マレーシア・シンガポール・香港(イギリス)、フィリピン(アメリカ)、中国も英国の半植民地状態であった。
著者は、この状態で、
もし、明治以降の日本が、平和主義の伝統を捨てずに、他国に迷惑をかけないで「小国主義」を国是としてやっていけたはずだと今思う人がいたら、底なしの無知か非常識の極みであると断言する。

当時の白人至上主義の西欧列強に日本だけ例外扱いにする特別の理由があったというのか。
福沢諭吉のように深く尊敬していた支那と、手を取り合ってという考えもあったが、清国は国内事情で対応できず、日本はやむなくアジア地域の主導権をとり、欧米露の干渉を排除しながら日本の生きる道を構築しなければ道は閉ざされるとの危機感が日本に生まれたのはやむを得なかったと。
結果として欧米との泥沼に進んでいったという。

著者は
「今でも日本人の、ことに西洋かぶれした知識人の中には、日本は負けると決まっている馬鹿な戦争をして出さなくてもいい多大の犠牲を出した上に、近隣諸国に多大の迷惑をかけて日本の国際的な評判をすっかり落としたなどと、したり顔でいう人が結構います。しかしこのような人はあれほど全世界を覆っていた西欧列強の植民地が、20世紀中葉になってほとんど姿を消すことになったという世界史の大転換に、日本が起こした戦争が直接間接に大きく寄与したという明らかな事実を知らない不勉強家か、さもなければ自分さえよければ他はどうなっても構わないという、自分だけの利益しか念頭にない哀れむべき、了見の狭い不心得者だと私は思います。」
と断言している。

海を隔てた1300年の温厚な生活を送った日本人。独特の文化を培ったことは紛れもない事実だ。ハンチントンが世界文明を色分けした時、日本文明を特別に分けたことでもその異質性がわかる。

開国後、日本人は外国との付き合いで大いに苦労することになる。
日本独特の慣習、例えば「他人の振り見て我が振り直せ」や日本人の大好きな「話せば分かる」などという考えが、いかに甘く楽天的なものか、それは自分たちが育った穏やかな風と恵まれた外国との関係を前提とした非常に特殊な人間観に基づいていることを知るようになる。

日本人は外国の怖さ恐ろしさを経験することなく、日本のためになるものだけを受容しながら外国と接触して発展できたため、外国を恐れ、忌み嫌い、何かにつけ外国人を排斥する対外観が生まれなかった。それどころか反対に、外国に尊敬を憧れの念を抱き、外国人や外国語を美化理想化する強い傾向が見られるようになったと、鈴木氏は語っている。

そうか、日本人と外国人の違い、ものの考え方の違い、あっ、そうなんだで済ませず、日頃起っている現象の外国と日本の違い。歩んできた歴史の中で培われた人間の営みから ¨違い¨ の原点に気が付き見えてくるものもある。

海による断絶、島国日本。外国から良いものだけを取り入れ、良いところだけを見る幸運?か不幸?によって外国は優れていて日本は遅れているの感覚が根付いていったのだろう。

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Posted by 秀木石