インドの苦悩

世界,日本,雑記

Vol.3-3.7-783  インドの苦悩
2022.03.07

朝日新聞デジタルは4日、ロシアによるウクライナ侵攻で、伝統的にロシアと友好的な関係を築いてきたインドが苦慮している。と伝えた。

インドは日米豪印4カ国(クアッド)の一角を占めるものの、国連の場ではロシアに対する非難決議案を棄権している。ウクライナではインド人留学生も亡くなっているが、それでもロシアを非難できないのはなぜなのか。

誰もが抱く疑問だ。

特に最近は中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋の実現」を標榜している自由陣営に参加している。日米豪印4カ国のクアッドもその延長線上にある。

今回、ロシアがウクライナに侵攻した際にもインド・モディ首相はプーチン大統領に「外交上の交渉と対話に戻り、暴力は即時に停止すべきだ」と電話で呼びかけている。

ところがだ、翌25日の国連安保理での非難決議で、インドは中国やアラブ首長国連邦(UAE)とともに棄権したのだ。それに、今月2日の国連総会での非難決議案も棄権している。

インドのティルムルティ国連大使は、国連総会で「急速に悪化するウクライナ情勢に深い懸念」を表明。北東部ハリコフで、ロシア軍によるとみられる爆撃でインド人男子留学生1人が死亡したことにも言及した。ただロシアを名指しすることは避け、侵攻そのものへの非難もしなかった。

一筋縄ではいかない世界の力関係が透けて見える。
 
JETROビジネス短信によると。
インドのモディ首相は昨年の12月6日、訪印したロシアのウラジーミル・プーチン大統領と会談を行い、経済や防衛を含む幅広い分野での協力をうたった共同声明「平和・進歩・繁栄に向けたパートナーシップ」を発表している。

1、両国間の貿易額を2025年までに現在の3倍以上となる300億ドルにまで拡大する
2、貨物通関の合理化を図るために認定事業者(AEO)制度の相互認証に向けた協議を開始する
3、両国の投資家保護を目的とした2国間投資協定の早期合意を目指すことなどが盛り込まれた。

また、首脳会議に合わせ、両国の外務・防衛両相が参加する閣僚協議「2+2」が初めて開かれたほか、2国間で計28件の協定・覚書が締結された。

さらに、1994年以降続けてきた軍事技術協力を2031年までの今後10年間にわたって継続するものや、平和利用を目的とした宇宙開発研究の協力における技術保護と関連インフラの建設・運営にかかるものが含まれている。

会談後の記者会見では、インド政府は2018年に購入契約を締結したロシア製の地対空ミサイル防衛システムS-400の供給が2021年12月から始まったことや、自動小銃カラシニコフAK-203のインド国内での共同生産で合意に至ったことも明らかにした。

これを見る限り、両国の協力関係はかなり深化している。

この2国間関係はインドと旧ソ連が1971年に締結したインド・ソ連平和友好協力条約にまでさかのぼる。

同条約は、冷戦下において非同盟主義を貫いていたインドが、隣国パキスタンとの対立を背景に、旧ソ連との間で第三国からの攻撃や脅威に対して相互協議を行うことに合意したものがあった。

それ以降、インド政府は50年間にわたり、軍事面での技術協力を中心にロシアとの関係を構築してきた。まさに、独自路線を歩むインドの軍事面をロシアが補完してきたのである。

なるほど、簡単に切れない事情を抱えてる。

一方で、2020年6月に国境係争地帯で中国と軍事衝突をしたインドは、日本、米国、オーストラリアとともに「自由で開かれたインド太平洋」の実現を掲げるクアッド(Quad)の枠組みに現在参加しており、2021年9月28日には首脳会議にも出席している。

今回のロシアのウクライナ侵攻は、国際法違反の立場をとりながらも、正面切ってロシアを非難するわけにもいかず、「暴力は即時に停止すべきだ」とロシアに撤退を進言しつつ、非難決議には参加しないことでロシアに一定の配慮を見せたということだろう。

インドは中国に続き13億の人口を抱える大国である。アメリカ、ロシア、中国の3大国の一角にニュートラルな地位を目指しているのではないか。

イデオロギーを超え、独自の外交路線を維持し、非同盟主義の立場を変えないインドの姿勢は今後の不安材料である。

アメリカは、ロシアなどから武器調達などを行う国には制裁を科すとしてきたが、ここで、インドに制裁を科すとすれば、ようやく「クワッド」という枠組みで、仲間に引き込んだものにヒビが入る可能性がある。苦慮するところである。

アメリカとしてはロシアを追いつめ、いい形で停戦に持ち込みたい。ここでインドを追い込み、自由陣営から一定の距離を置かれることはマイナスである。しかし、ロシアとインドの関係が武器で結びついているとすればそれはそれで問題である。しかし、今はまず停戦実現である。

数ヶ月以内に再度、東京で面談形式でクアッド会議開催を確認した。この会合でインドがどんな方針を示すか。世界秩序の再構築が必要になるやもしれぬ。

“ 数ヶ月以内 ” というのが意味深であるが、ロシア、中国のみならず、世界がインド・モディ首相発言に注目することだろう。

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