プーチンを神にした間違い

世界,日本,雑記

Vol.3-3.23-799     プーチンを神にした間違い
2022.03.23

世界を震撼させたロシアのウクライナ侵攻。

早稲田大学教授の三浦清美氏はプーチンが暴挙に到った背景をロシアの歴史から紐解いた。その寄稿文が産経新聞にあった。

その要点を抜粋して紹介したい。

『今回の事態を引き起こしたロシア政府指導部、長い年月にわたりロシア正教の伝統によって培われたロシア人特有の宗教感覚、統治者観を利用している側面が多分にある』とした。

『その統治者観というのは、国の頂点に立つ統治者を「神の代理人」として、そのような絶対的な統治者を欲するロシア国民の伝統的な意識だ。帝政ロシアでは、もちろんそれはツァーリ(専制君主)であった。』
・・・・・
ソビエト共産党もまた、共産主義という宗教をまつる「教会」であったように、その当然の帰結として、生身の神としてふるまうスターリンが現れた。そしてソビエト崩壊後に登場したのがプーチン大統領だ

という大きな流れだが、その昔、ロシアとウクライナは「キエフ・ルーシ」という一つの国であった、ということを知ると、日本という単一民族には考えられない複雑で深層な歴史を想起する。ロシアに限らず、ヨーロッパにあれだけの国があるという歴史はまさに壮大である。

その起源は、ロシアとウクライナの前身である「国」キエフ・ルーシがキリスト教を受け容れた988年にさかのぼる。・・・・・』

『キエフ・ルーシは東方のギリシア正教つまりビザンツ帝国のキリスト教を受け容れた。彼らはギリシア正教を西欧のキリスト教とは全く異なる宗教と受け止めていたが、これが後にロシアの統治者観を生む土壌となる』

『その違いとは、神であるイエス・キリストをいかに考えるかの違いである。・・・つまり、神としてのキリストは絵に描くことはできないが、人間としてのキリストは描くことができる、いや積極的に描くべきだという結論に到った』

『キエフ・シールがこのビザンツ帝国のキリスト教を受け容れた結果、その系譜を受け継ぐロシアでは、人々が西欧のキリスト教とは違う信仰の感覚を持つことになった

『東方正教は、神であるキリストが人間になったという恩寵を強調。神がキリストにおいて人間になられた以上、罪深い人間も自らの救済のためキリストの「真似び」をして神になる努力を惜しんではならない・・・・・ロシアの統治者観はこの思想に立脚し、いわば神と化した人間を求める』に到る。

西欧のキリスト教は、宗教的権威のローマ教皇、世俗的権力の諸国の王が画然と住み分けてきた

しかし『東方正教では、天上の神の地上における唯一の代理人であるツァーリが君臨するのみで、そのツァーリは、キリストに対してはふつうの人間であり、しもべとして仕えるが、人間に対しては神として君臨する。』

『この統治者観は、選挙で大統領を選ぶ現代ロシアにも、脈々と息づいており、国民には、絶対的な力を持つ神の代理人を求める意識が受け継がれている。プーチン大統領の権力の強大さもまた、その統治者観の上に成立しており、その意味で、国民が求める存在であるといえる』

『第三のローマたるモスクワの正しいキリスト教をのべ伝えなくてはならないという使命感は、領土拡大の欲望へと容易に変容する。・・・・・現代のロシア人の意識の底に神の代理人を求める渇望と帝国的国家像への憧れが揺らめいている』という。

三浦教授も、「統治者がキリストのような善の化身であるならば、問題は生じないはず」とし、問題はその統治者が悪魔の独裁者であったことに世界は最悪の事態に陥った。

イスラム原理主義ではないが、宗教とは無数の命を一瞬にして抱擁する力もあれば、使命を曲解し、人の殺戮を厭わぬ無法国家をも創り出す。

宗教とは何とも恐ろしい。

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