中國・人身売買の惨劇

世界,雑記

Vol.3-3.25-801     中國・人身売買の惨劇
2022.03.25

恐ろしいことがこの現代においてもある。

お隣、中国で「鎖でつながれた8児の母」の映像がネット上に流された。
中国東部の農村で首を鎖でつながれた女性が小屋に閉じ込められている動画がインターネット上に拡散し、夫が逮捕された。この女性は中国の農村で横行する人身売買の被害者であることがわかった。

女性は24年前、およそ2000キロ離れた内陸部・雲南省の農村から人身売買で連れてこられ、夫と結婚させられたあと8人の子どもを産んでいた。

当局は人身売買に関わったとして8人の身柄を拘束したほか、当初人身売買を否定していた地元政府について被害を未然に防げず問題を放置したとして、幹部合わせて17人を免職などの処分にしたという。

この事件は今も中国の農村で横行し大きな社会問題になっている女性らの人身売買が引き起こした悲劇と受け止められ、中国国内に衝撃が広がった。

中国のことだ即 “ 削除 ” されるのかと思いきや今度ばかりは違った。その背景には、習近平総書記の長期体制を目指す共産党大会の予定があり世論の反発を恐れたのだ。積極的に調査を行い、県トップの党委員会書記ら当局者17人の処分を行った。

さらに、習総書記は「女性や子供の人身売買という犯罪行為を厳格に取り締まる」と表明。記者会見でも「心が痛く、非常に腹が立つ」と力を込めて語るというのは異例である。

そもそもこの悲劇の発端は、極端な中国の人口政策にある。

中国は1949年の建国以来、治安の維持、社会保障の充実、医療や衛生の改善などを進め一時は人口を急増させた。しかし急激な人口増加と、そこから引き起こされる食料不足を懸念し一転人口抑制に転換した。

◆1962年 都市部に限定して人口抑制政策開始。
◆1979年 全国的に一人っ子政策を導入。1組の夫婦につき子どもを1人に制限する。
「子どもは1人で十分!」と宣言した夫婦に特典をつけた。
①月収の約1割の奨励金を子どもが14歳になるまでもらえる
②学費免除
③学校への優先入学
④医療費の支給
⑤就職の優先
⑥都市部における住宅の優遇配分
⑦年金の加算

逆に、2人目をもうけた家族には罰金を科した。その額は、年収相当の数年分という驚きの額。しかし農村部においては、まだまだ労働集約型の農業経営。つまり男の子どもは貴重な労働力、そのため「女の子や次男、三男が生まれても、戸籍に登録しない」ということが起こった。

無戸籍児童は「黒孩子(ヘイハイズ)」と呼ばれ学校にも通えず、医者にもかかれず、この世に存在しない子どもとなった。これらの子が人身売買され、今回の悲劇を生んだのだ。

ある時、子どもが交通事故にあった。警察が駆けつけ子供が無国籍とわかると、瀕死の子供を川に捨て去ったという逸話がある。

2010年の国勢調査で、黒孩子が約1300万人いることがわかった。

一人っ子政策によって人口急増の抑制には成功した。しかし、急速な少子化は急速な高齢化をもたらした。老年人口割合が7%を超えると高齢化社会といわれる。中国は2002年に7%となり、以後も老年人口割合は上昇し続け、2019年には11.4%になった。完全な高齢化社会になった。

そこで方針を転換した、

◆2016年 一転「全面二孩政策(全面二人っ子政策)」を導入
◆2021年 さらに「一組の夫婦に3人までの子供を認める」など、高齢化対策を全面的に開始した。

方向転換したのはいいが、一人っ子政策で生み出された「ブラックチルドレン」と呼ばれる戸籍のない子供を1300万人も生み出してしまった。

彼らの人生は悲惨である。

産経ニュースにある一人の女性の例だ、

『中学校に上がるとき通学を断られ、初めて両親が本当の親ではなく自分には戸籍さえないと知らされた』

『Aさんは生後数カ月のころ、崇明島の市場でカゴに入れられて泣いていたところを、近くで商店を営む夫婦に救われたという。

ふびんに思った夫婦は養女として育て始めたが、地元政府は出生証明すらないAさんの戸籍申請を頑として拒み続けた。人口抑制を目的とした「一人っ子政策」での「成果」を競っていた地方政府にとっては、存在すら隠しておきたいお荷物だった。

養父母によると、Aさんは小さいころからぜんそくに苦しめられたが、戸籍に基づく身分証がないため病院で診察を受けることができなかった。読書も大好きだったが、図書館で本も借りられなかった。

Aさんは「小学生のとき、クラス名簿に自分の名前がないのが不思議だった」と話すが、それは養父母が懇願し、地元小学校が聴講生のような待遇で通学を許したからだった。不幸中の幸いだった。「黒孩子」の中には満足に読み書きできない子供も多い。

中国政府は2010年の国勢調査で、「戸籍なき子」が約1300万人いることを把握している。教育も医療も受けられなかった子供たち。きちんとした就職先などなく、結婚も出産も手続き上はできない。小学生のころのAさんは、「将来は大学に進んで教師になりたい」と夢を描いていたというが、戸籍がなければそれも果たせない。

Aさんはまだ良い方だ。最悪のケースは冒頭のような人身売買され悲惨な目に合う女性は少なくない。

36年間にわたって続いた「一人っ子政策」の闇、中国政府の罪は果てしなく大きい。

一人っ子政策、農村で抗議や暴動が発生するなどし2015.10月に廃止が決まったが、1300万人いるとされる「戸籍なき子」の戸籍、中国はどうするのだ。明確な人権回復施策が示されなければ、ウルグイやチベットと同等の人権蹂躙として国際社会から非難されるだろう。

少なくとも国連人権理事会にかけてもいいのではないか。国連の決定など屁とも思わない習近平だが、今年に限ってはそうはいかない。総書記、異例の3期目がかかっている。何らかの手を打つのではないか。

他国のことながら、「ブラックチルドレン」あまりにもひど過ぎないか。

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Posted by 秀木石