なぜ今 古事記?

日本,,雑記

Vol.3-4.22-829    なぜ今 古事記?

2022.04.22

なぜか今、古事記が若い世代を引きつけているという。

日本最古の歴史書である古事記は、世界のはじまりと神代、初代神武天皇から推古天皇までを収録している。

「ライトノベル」という言葉は聞いたことはあるが、今、世の中はこの「ラノベ」によって古典が広がっているようだ。

「ラノベ古事記」の購入者は男性が30~40代、女性は20~50代と幅広く、子供用に親が買うケースもあるという。

昨年12月には文春文庫から小説『神と王』という古事記からインスピレーションを得た異世界ファンタジーが出版され200万部が売れている。

あるいは高校生が主人公の「KATANA」のサブタイトルは『古事記の剣』、これは英雄ファンタジーでこれまた人気だという。

産経新聞記事では

古事記・ライトノベルには「個性的な神様や古代の天皇が繰り広げる冒険譚には、奇想天外な物語の中に親子関係や恋愛など普遍的な問題も含まれている。現代に通じる究極のエンターテイメント」だと評している。

一方、幻冬舎のサイトには古事記を始め書店における古典変化を伝えている。

「新型コロナウイルスの感染拡大で日本人の働き方が大きく変わった。東京都の外出自粛要請に始まり、政府の緊急事態宣言が出され、多くの企業でオフィスワークを在宅勤務に切り替えるなど対応に追われた。出版業界も例外ではない。出版社もリモートワークが始まり、新しい働き方が模索されている。通勤するサラリーマンが減ったため、都心部の大型書店は休業を余儀なくされた。出版業界も撃沈かと思われたが、実はいろいろなことが起こっていた。」

と記し

古事記や日本書紀の現代語訳がPOPで飾られ、高さをもって陳列されていた。これが、日本文学・古典の定位置である店の奥・隅なら分かるが、入口に近い好位置に目につくように展開されている。」

「しかも、そのすぐ隣には枕草子・徒然草・方丈記・源氏物語といった、古典文学のビッグネーム関連本がズラリ勢揃い。フェア開催中なのかもしれないが、ここまで店が力を入れるのはブームが来ているのかも、と考えたのである。」

「思えば1年半前、令和の出版業界の幕開けを飾ったのは万葉集ブームだった。新元号の典拠について、菅官房長官が『万葉集巻五』の冒頭にあると明かすや否や、万葉集関連本がバカ売れした。それにあやかって『古今和歌集』や『竹取物語』なども続々とリリースされ、令和元年の出版界はちょっとした古典ブームに沸いた。」

「古典は大型書店の品揃えには不可欠、でも売れる本ではないと思っていたが、考えを改めなければならない。事実、隠れたベストセラーが生まれている。」

「Amazonの古典文学の売れ筋ランキングで、常時上位にランキングされているのが『現代語古事記』(竹田恒泰著/学研)だ。2011年9月に発刊し、累積発行部数は22刷、12万部を超えた。」

「古事記といえば多くの人が知っているのは、子どものころ絵本で読んだ「天の岩戸」や「因幡の白うさぎ」の話くらいではないだろうか。・・・では、なぜ売れているのか、版元の学研はこういう。」

「古事記は古典の中でも一度は読んでみたいという一定の人気のあるジャンルです。初めて完読できたという読者アンケートが示すように、有名な話だけではなくどこも端折らずに現代語に訳した完全版であること。」だそうだ。

「古事記は・・・1000年もの間ほとんど読まれずにいた。その真価を世に問うたのが、江戸時代の国学者・本居宣長である。35年の歳月をかけて『古事記伝』44巻を執筆した本居宣長はこう記している。」

『上代のことを知る上でこれに勝る本はなく、また「神代」のことも『日本書紀』より詳しくたくさん書かれているので、「道を知る」と言う目的からは第一の古典だ。古学を学ぼうとする者が、最も尊み、学ぶのは本書でなければならない』

本居宣長は、『源氏物語』の中にみられる「もののあはれ」という日本固有の情緒こそ文学の本質であると提唱し、大昔から脈々と伝わる自然情緒や精神を第一義とした人物である。

そこで、古事記を当時の現代人に読みやすく解読した古事記伝に35年をかけた意味である。36歳から始めて生涯を閉じるまで、並々ならぬ思いで解読した古事記伝。もうこれは本居宣長そのものと言ってもいいのではないか。

本居宣長は江戸時代に国学者である。この江戸時代をさかのぼること1000年以上の古事記に徹底して寄り添うこと、それは35年の生涯をかけても足りなかったと想像される。本居宣長が如何に真摯に1000年以上前の人々の暮らしに、精神により近づこうとした決死の思いと、純粋すぎる謙虚な態度にただただ頭が下がる思いだ。

どんな方法でもいい、古事記に興味を持ち、日本最古の歴史書に日本人が親しみを持って読む。こんな素晴らしいことはない。

古事記ブームの裏に “ コロナ ” があったとすれば、“ 鬼の目にも涙 ” とまでは到底いかないが、吹き荒れた悪風の中に存在したミクロの善行と認めようではないか。

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