ぼくは泣かない

Vol.3-4.29-836   ぼくは泣かない

2022.04.29

人間とは不思議なものである。

人は皆、毎日が楽しく、元気で幸せな日々であって欲しい願う。当たり前のことだが、その幸せが自分の中で頑張って、頑張ってやっとつかんだものであるならばなおさらである。

ラジオ深夜便から流れてきた角南有紀さんのインタビュー「ことばの贈りもの」の中での話である。

声楽家である彼女は、幼いころから歌が好きでいつも歌っている活発な少女だった。大きくなったら “ 音楽の先生になりたい ” そんな夢を抱いていた。

そんな彼女が大学で教えを乞うた先生の影響からオペラに目覚め、やがてイタリアに留学する。

歴史、人種、見えない圧力、いろんな葛藤を経て、自分の生きる道を見つけ自信をつけて行く。そこには一つのサクセスストーリーがある。

大切な伴侶はイタリアで出会った音楽家である。イタリア人で若干の困難はあったものの晴れてゴールイン。待望の第一子は怜音(レオン)くんと名付けられた。

結婚後は日本に軸足をおいた活動も視野に入れ順風満帆、第二の人生の始まりだった。

人生はままならない。癌宣告は日本でいざ出陣、オペラのオーディションを受けた後だった。

天国から地獄とはこのことである。幸いにもオーデションには合格した。しかし、大丈夫か、身体?時間?彼女の決意は揺るがなかった。どんなことがあっても間に合わせなくてはならない。苦しい抗がん剤治療、髪が抜け、片方の乳房が全摘出されても目標と子供のために頑張った。

神は見放さなかった。彼女は絶望の淵から復帰した。

現場に戻った彼女は、どんな厳しい練習も、厳しい言葉も嬉しくて仕方なかったと稽古場にいることへの感謝を語った。・・・どん底を経験した人間の強さを知る思いである。

そして、
『・・・私が乳癌と診断されて泣き崩れた理由は、「我が子はどうなるんだろう」という思いからでした。息子は、淋しい時や眠い時、痛い時や甘えたい時におっぱいを触りたがる、まだまだ甘えん坊な年頃。病気が発覚した時ママ達が心配するのは、自分の身体よりこどもの心だと思います。・・・』

『・・・「病院に行って、ママのこと取らないで!ってお願いしてくるね」「ママは髪が長くてかわいかったのに」「パパが来たら泣いていいからうれしい」「おっぱいまた買ってきてね」忘れられない言葉をいろいろ残してくれました。年中だった息子はまだひらがなも書けなかったのですが、私に手紙を書きたいと言って、幼稚園で「ままだいすき」というひらがなを教えてもらってきました。それから何通も「ままだいすき」と書かれた手紙をもらいました。時には手に負えないほど甘えたがり、体調の良くない時にはそれに対応しきれなかったり、イライラしてしまったり。叱った後に自己嫌悪に陥って、ベッドで何度も涙を流しました。でも、息子が頑張ってくれたから、私も頑張れました。』

その、言葉と思いが絵本になった。

 

~ ママのおっぱい ~

さいきんママがいないんだ

よくびょういんにいってるの

ようちえんには ばあばがむかえにきてくれる

おふろにはじいじとはいる たたかいごっこをするんだ

おやすみのひはいとこのしーちゃんちにあそびにいく

おとうとのゆーくんもいる

 

ぼくががんばってるから

ママもがんばれるんだって

だからなかない

 

でもねパパがきてくれるとほっとするんだ

だってないてもいいから

 

ぼくはながいかみのママがすきだったんだけど

ママははげちゃんになっちゃったの

 

それにね、ぼくのだいすきなママのおっぱい

ひとつなくなっちゃうんだって

 

またすぐにかってきて つけてほしいな

おっぱいだんだんはえてくるのかな

 

でもねママがいってた

かみのけまたのばすねって

でも おっぱいはもうもどらないんだって

 

どうしてなくなっちゃうの…?

ママのことがすきなのに

ママのぜんぶがだいすきなのに

 

ぼく、びょういんにいって

あんまりママのこととらないでって

たのみにいこうとおもう

 

そうママにいったら

ママはぼくをぎゅっとだきしめて

いったんだ

 

びょういんのせんせいは

せいぎのみかたなんだって

ママのびょうきをやっつけてくれるんだって

 

ぼくもおおきくなったら

もっとつよくなってママをまもってみせる

おっぱいがなくなっても

ぼくはママがだいすきだから

 

ぼく、がんばるよ

ママもがんばってね

 

 

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Posted by 秀木石