成功体験を粉砕せよ

世界,日本,雑記

Vol.3-4.30-837   成功体験を粉砕せよ

2022.04.30

2014年に起きた、ウクライナ紛争・クリミア危機。
あの時、 ロシアによるクリミアの併合はどのように行われたのか。

今回のウクライナ戦争とクリミア危機の目的は同じであったはずだが、「ちょっとした紛争」程度の認識しかなかった。

今回のような派手なドンパチがなかったが故に、ニュースにはなったが連日ワイドショー等で取り上げられるほど関心は高くなかったように記憶する。

小競り合いの内に巧妙なロシアの作戦が功を奏し、終わってみたらクリミアがロシアに併合されたいた。そんな事実だけが記憶に残った。

あれは静かな戦争であった。
ウクライナの領土であったクリミア半島は、クリミア自治共和国とセヴァストポリ特別市で構成されていた。

始まりは、親ロシアのヤヌコーヴィチ政権が崩壊、親欧米の暫定政権が発足したことにクリミア住民の一部が抗議し、親政権派と衝突したのがきっかけである。

もともとプーチンは

  • 1954年にフルシチョフがクリミアをロシアからウクライナに割譲したのは法的な根拠がなく、違法なものであった。
  • クリミア内のロシア系住民は脅威にさらされており、クリミアは強力な主権国家の一部でなくてはならない。それはロシア以外にはありえない。

この考えを以前から持っており、政変に乗じ混乱の制圧目的としてロシア軍を投入。欧米が手をこまねいている間にクリミアを奪ってしまった感がある。

その手法は、まず治安維持として軍投入による制圧、クリミアとセヴァストポリにおける住民投票、独立宣言、併合要望決議、そしてロシアとの条約締結と、矢継ぎ早に事を運び併合宣言まで一気に済ませてしまった。

国連やウクライナ、そして日本を含む西側諸国などが対抗しようにも時間なく事は終った。自由主義陣営がいろんな理由でこれを認めずとも後の祭りだ。

この一連の動きで注目は、住民投票に重きを置いたことだ。クリミア共和国中央選挙管理委員会は、クリミアとセヴァストポリの両方で9割以上の賛成票が投じられたと発表し、事を強硬に進めた。

実際の投票率は30-50%であり、そのうちクリミアのロシア併合に賛成したのは50-60%。国際社会が早々に同住民投票を認めないと発表する中、ロシアは、この住民投票の結果に従って3月17日に両者はウクライナからの独立と、ロシアに併合を求める決議を採択した。

クリミアとセヴァストポリをロシア連邦の領土に加えるもので、2014.3.18にロシア、クリミア、セヴァストポリの3者が調印した条約に基づき実行された。

2014年3月17日、ロシアは「クリミア共和国」の独立を承認。翌18日、プーチンはクレムリンで上下両院議員、地域指導者、社会団体代表らの前で演説し、住民投票の投票率が8割を超えたことに触れ、投票は民主主義的な手続きに則ったものであり、国際法に完全に準拠した形で行われたとし、そのまま居座ったのである。

このほぼ、無血でクリミア半島を奪った成功体験がプーチンの頭に強く残った。

1991年のソビエト連邦崩壊・ロシア連邦成立後初の、ロシアにとって本格的な領土拡大となった。

“ 夢よもう一度 ” と2匹目のどじょうを狙ったのが今回のウクライナ侵攻である。

あのクリミア併合の後、プーチンはこんなことを言っていた

『ロシアはウクライナの分割を望まず、これ以上の領土的野心はない。』と演説したが、今回の侵略で全くのウソであったことを自ら証明した。

しかし、今回の侵略はどうも思惑通りにいかない。プーチンのあせりから方針は転換された。東部にすべてを集中し、8年前のクリミア・住民投票の再現である。

先ずは狭い地域を制圧して、クリミア同様「住民投票」で一つ一つ併合していこうという考えであろう。

4月26日、ロシア国防省は南部・へルソン州を「完全開放」を表明し、州知事と州都へルソン市の市長を一方的に解任し、親露派に交代させた。

市民の抗議デモは催涙弾で制圧。ロシア新聞などは、ウクライナが「複数の国家に分裂する可能性がある」とパトルシェフロシア国家安全保障会議書記の発言を報じた。小さな州の独立を想定した報道である。

今後は、東部のドネツク、スガンスク州にも住民投票を行ってクリミアの成功体験をウクライナ東部で実施、独立させようというのだ。

ロシア本土から黒海まで陸続きで出られるベルト地帯を確保しようとの目論みは目に見えている。

ここで2度に亘ってロシアの領土拡張戦略を結果として成功させるようなことがあれば、国連の存立意義は完全に失われる。多額の軍事費支援を行ったアメリカの無策は国民からはもとより、世界からも非難の的となろう。

独裁国家の横暴を許せば、自由主義陣営は分断の道に迷い込むかもしれない。世界のリーダー不在は顕在化し、世界制覇を虎視眈々と狙う中国の野望に火をつけてしまう。

是が非でも “ クリミアの夢 ” を実現させてはならない。

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