風と共に去りぬ

世界,日本,雑記

Vol.3-5.1-838   風と共に去りぬ

2022.05.01

WiLL6月号で「 “ 左翼の狂気 ” に汚染されたハリウッド」と題し、ジャーナリスト・草野徹氏が、米・アカデミ―賞の凋落を嘆いている。

ジイはもう十数年前からアメリカの価値観に疑問を持ち始めていたが、草野氏のコラムを読んでなるほどね、と納得した。

今年のアカデミー賞は何といっても、プレゼンターのクリス・ロック氏が、脱毛症の妻を茶化したとして、夫のウイル・スミス氏が壇上に上がって彼を平手打ちするという茶番劇が記憶にある。

まあ、そのハプニングは別として、「近年はセレブが壇上で娯楽と無縁な政治・社会問題のご高説を披露」とは確かに華やかな場所に無用である。

視聴者もそれにはうんざりしているようで、「彼らが政治的意見を述べ始めるや、多数がTVスイッチを切った」(ニューヨークタイムズ)と伝えている。

その結果、今年の式典のテレビ視聴者数は、史上最低だったようだ。

米CNNテレビで自分の番組を持っていたことがある英ジャーナリスト・ピアーズ・モーガン氏は「われわれが知っているオスカーは死んだ」と断じるほどだ。

草野氏も「大衆を楽しませるという長い歴史が終わったのは確かだろう」と米アカデミー賞の現状を断罪し、その上でいくつかの例をあげている。

◆2016年・・・ヒラリー対トランプ対決後の授賞式、司会者だったコメディアンのジミー・キャンメルは『彼は人種差別主義だ。世界中が米国を嫌っている』

◆2016年・・・ロバート・デニーロは「トランプの顔面に一発食らわせたい」

◆2017年・・・メリル・ストリーブは「ハリウッドと外国人と記者。この三つが現在の米国で最も悪く言われている」とトランプ批判をした。

◆2018年・・・「君の名前で僕を呼んで」という同性愛を扱った作品について司会者のキンメルは「興行成績は良くないが、力強い物語だ。我々は金のためにこのような映画をつくらない。ペンス(副大統領)をびっくりさせるためだ」と説明した。ペンス氏は敬虔なキリスト教徒で、「同性婚」を支持していない。

こうしたハリウッドの偽善と政治過剰の現状に対し、一部ではあるが業界内からも公然と批判する声が出てきた。

2020年、司会を務めた英国の俳優・脚本家リッキー・ジャーベイスはノミネートされた俳優を前にして「もし今夜、君が受賞しても、この式典を自分の政治的スピーチの場に利用するな。君らは大衆に何かをレクチャーできる立場にない。君らは現実の世界について何も知らないのだ」と続け、ウォークネスを批判したのである。
(※ウォークネス:人種差別など社会問題に自分が如何に関心があるかを誇示する態度)

このように、ハリウッドは、過去十年は左翼メンタリティーだけだったが、現在はウォークイズムという左翼の狂気に覆われつつある。というのだ。

ジイが、アカデミー賞にあまり関心を抱かなくなったのは、2015年、主要部門の候補者に有色人種や女性が一人もいなかったことで「ホワイトオスカー」と批判が起きたあたりからより強くなった。

映画会社首脳や製作者は対応を迫られ、二年後の2017年、主要キャストが全員黒人で、LGBTの「ムーンライト」が作品賞など三部門で受賞した。

さらに、その後AMPAS(映画芸術科学アカデミー)は作品賞の選考に導入される新基準を発表した。

1、主役または重要な助演俳優に少なくとも一人はアジア人、ヒスパニック・ラテン系、黒人・アフリカ系アメリカ人、ネイティブ・アメリカン、中東・北アフリカ出身者、ハワイ先住民か太平洋諸島出身者、その他人種か民族的マイノリティーの俳優を起用。

2、二次的及びマイナーな役の少なくとも30%は女性、人種・民族的マイノリティー、LGBTQ+、障害者のうち二つのグループの俳優を起用

3、ストーリーやテーマが女性、人権・民族的マイノリティー、LGBTQ+、障害者を扱う。

その他、基準Bというものがあって、監督や作曲家、キャスティングディレクター等にもほぼ同様の要件を課したのである。

草野氏が「金の卵を産むガチョウが死んでいく」と言うのもわかるような気がする。まさに「芸術の死」、芸術とは束縛されない自由な発想から生まれるものではないか。

偏見があろうがなかろうが『米アカデミーはこんな映画を愛する』でいいではないか。その独自の視点で、且つ自らの価値観で「最高の映画」であったと評する。それを世界は羨望の目で見てきたのだ。100年に及ぶ世界の映画を牽引してきた華やかの頃の心意気、自信はどうしたと言いたい。

米アカデミー賞は映画だけに酔える華やかなショーだけでいい。

草野氏は、「オスカーをはじめ米国の映画受賞式は、かつては上質の娯楽イベント、魅力的な大人のスクリーンアイドルのショーだった」と、ハリソン・フォードやクリント・イーストウッドが壇上で交わした会話の素晴らしかった過去を振り返った。

『華やかなりしころのアカデミー賞は、もはや “ 風と共に去りぬ ”

復活を願うが、その通りかもしれない。

    

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