ロシア敗北のシナリオ

世界,日本,雑記

Vol.3-5.7-844   ロシア敗北のシナリオ

2022.05.07

6日の産経新聞は、「ロシアの戦略的な敗北のシナリオ」と題し、孤立するロシアの行く末を占った。

ロイター通信は「所期の目的を達成できなかったものの、まだ勝利できる位置にある」という見解を伝えている。

これに対し、産経・湯浅氏は「ウクライナ戦争でロシアの戦術的な勝利はありえても、すでに戦略的敗北を喫している」とし、①ロシア軍の甚大な損害、②国際的孤立、そして③経済制裁によってモスクワの惨めな衰退は避けられないとした。

プーチン氏の戦略的目的が、NATOの東方拡大阻止であったことからすれば、結果は明らかに裏目に出ている。現に、スウェーデン、フィンランドがNATO加盟に踏み切る公算を指摘した。

そこで、ジョンズ・ホプキンズ大のハル・ブランズ教授のプーチンが戦争に勝てなければ大国ロシアが払う代償を占った論説を紹介した。

<第一のシナリオ>
ロシアで政変が起り1990年代に経験した民主主義が復活する可能性を指摘。エリート層がプーチンを排除してウクライナと和平を結ぶことへの期待。

<第二のシナリオ>
「傷を負った巨人」は、プーチンが権力の座にしがみつき、民衆の不平不満を治安部隊によって抑え込む。各国から経済制裁を受けたものの、同氏に忠実な取り巻きが闇市場を使って損失を埋めて行く。その揚げ句に中国への依存が高まり、経済の衰退、技術の遅れ、軍事力の弱体を招く。

<第三のシナリオ>
ロシアは孤立化と急進化が同時に進み、核兵器を持つ「超大国化したイラン」になる。将来性のある高学歴層はロシアを離れ、率直にものを言うリベラル派は政権から排除される。一方の強行派は、厳しい経済制裁下にあるイランがとる、外国との貿易に依存しない自給自足の「抵抗経済」にならう。厳しい粛清、好戦的なナショナリズムの高揚により、ロシア型ファシズムが生み出される悪夢の結末を迎える。

<第四のシナリオ>
「最悪の戦争拡大」。ウクライナからの反撃で窮地に立つプーチンが、戦術核、生物・化学兵器を使用し、NATOとロシアが交戦状態に突入する。戦火が欧州に広がれば第三次世界大戦の勃発。

というものだ。

湯浅氏は「プーチンの政治的立場は侵略前よりも弱く、好戦性を高めることでその弱さを補おうとする危険がある。プーチンにとっては、戦略的な失敗によって体制の存続をかけた戦いになってしまった。」とし、今後、「彼の矛先は、経済制裁を断交した西側へ向かう。逆に、中国への経済的な依存度を高めて世界の分断が固定化されていく。」という。

確かにその通りかもしれない。もともとプーチンはウクライナ侵攻も米国主導の国際秩序への拒否にあった。それは中国も同じで、ウクライナ戦争は中露の協力をさらに強くした。

プーチンにエネルギーと小麦を遮断することで揺さぶりをかけられ、背に腹は代えられぬとして自由主義陣営の結束に乱れが生じなければいいが。

ハリウッド映画ではないが、「悪玉・プーチンと善玉・ゼレンスキー」という典型的なモチーフにおいて、主人公が苦難の末、最後は勝利するというクライマックスに仕上げなければならない。

    

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