横綱 照ノ富士優勝

Vol.3-5.23-860   横綱 照ノ富士優勝

2022.05.23

“ 照ノ富士 ” 優勝おめでとう。

7回目である。敢えて言いたい “ 満身創痍 ” 、よくぞ頑張ったと褒めたい。

先々場所は膝を痛め、先場所は休場した。膝の状態は万全ではなかった。本来ならもう一場所休みたかったのが本音である。しかし、一人横綱を務める責任感が2場所休場をためらわせた。

案の定心配は的中、初日大栄翔にいつもの踏ん張りが効かず、力半分で敗れた。序盤に連敗すれば休場か?と心配した。

しかし、何とか持ち直したもののいつもの照ノ富士とは明らかに違った。中日ですでに3敗である。

この時点で、隆の勝をはじめ2敗力士が5人。まさに混戦の夏場所、万全ではない横綱・照ノ富士が残り7日を全勝で行くことはかなり難しいのではと思われた。

ところが結果的には、後半7戦を全勝し自ら優勝を手繰り寄せたのである。

千秋楽、3敗の隆の勝が破れ4敗。3敗の照ノ富士を残し、4敗で隆の勝、大栄翔、佐田の海が並んだ。結びで、照ノ富士が敗れれば、4力士の優勝決定戦になる。ここまでくれば、優勝は時の運、誰が優勝してもおかしくない。

ここで考えても見よ!優勝戦線に3大関の誰も残っていないのだ。それどころか共に負け越しの危機にある情けない状況、横綱を展望できる強い大関がいないのが協会が抱える難問である。満身創痍の照ノ富士が膝の痛みを押してまで出場した意味が分かろうというものだ。

そこでだ、膝のことを考えると、照ノ富士完全優位とはいかない。

かろうじて千秋楽、貴景勝が勝ち越したが、見るも無残な大関陣の負け越しは、相撲界の危機といっていい。千秋楽、貴景勝が負れば全大関が負け越すという前代未聞の汚点を残す。この状況において場所を引っ張る横綱として、絶対に負けるわけにはいかない。

そして迎えた結びの一番、相手は大関・御嶽海。すでに負け越しが決まっている大関である。普通でいけば照ノ富士優位は動かないところだ。しかし勝負はわからない。最後、大関の面目にかけ馬鹿力を出す可能性だってある。

さあ、軍配が返った。御嶽海に優る192cmの照ノ富士が頭をつけたのである。不甲斐ない大関陣を前に一人横綱、勝利への執念である。相撲協会を一身に背負って立つ責任感が最後の一戦に凝縮された。

思えば、7年前の栄光から、たった2年で地獄に落ち、それから這い上がること2年。
その壮絶な記録である。

  • 2015年7月場所 – 新大関
  • 2017年11月場所 – 関脇陥落
  • 2018年3月場所 – 十両陥落
  • 2018年7月場所 – 幕下陥落
  • 2018年11月場所 – 三段目陥落
  • 2019年3月場所 – 序二段陥落
  • 2019年5月場所 – 三段目再昇進
  • 2019年7月場所 – 幕下再昇進
  • 2020年1月場所 – 十両再昇進(関取復帰)
  • 2020年7月場所 – 幕内再昇進(幕内復帰)
  • 2020年11月場所 – 返り三役(新小結)
  • 2021年1月場所 – 関脇再昇進
  • 2021年5月場所 – 大関再昇進(大関復帰)
  • 2021年9月場所 – 新横綱

優勝インタビューでいつも思う。必ず、四方に向かってお辞儀をする。面構えからしてどちらかと言えば客に媚を売るタイプではない。しかし、横綱の品格を厳しく言われたのであろう。礼儀、謙虚さが日本人には好かれる要素であることを。

この健気ともいえる横綱の心情を思えば、もっと、お客様が感動できるインタビューをしてほしかった。

最初の “ 優勝おめでとうございます ” は良い。

その後である。

「今場所の優勝の味はどんなものですか?」と聞くアナウンサー、横綱にとって今場所は特別の味である。なんと気が利かない質問であろうか。満身創痍の大変だった場所をなぜ慰労してあげないのか。

例えば、
『膝を痛め先場所は休場。本来なら、もう一場所休場し膝の状態を良くしてから迎えたかったと思いますが、膝の痛みを押さえ横綱の責任として出場を強行されました。休場明けの不安と、膝の痛みを乗り越えての優勝、感無量ではないでしょうか』

と本人から言いづらいようなことをなぜ代弁してあげない。隠されたドラマに観客は拍手喝采、感動もするのである。

『最後の御嶽海との取り組み、横綱は今までに無かった、頭をつけるという相撲を見せました。一人横綱として絶対負けられないという執念というか強い責任感のようなものを感じ感動しました。実際はどんな気持ちだったんでしょうか』と、横綱を讃える言葉のひとつもかけてほしいと思う。

大関陣が全滅する冴えない夏場所を、何とか形にしたのは横綱・照ノ富士である。その功績を観客に分かるようにインタビューし盛り上げるのがアナウンサーの役目ではないのか。

味気ないインタビューにいつもフラストレーションがたまってしまう。

いずれにしても照ノ富士の優勝でよかった。

もう一人新たな横綱の誕生まで当分、相撲協会は綱渡りである。

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