逃げる者は射殺せよ

世界,日本,雑記

Vol.3-5.26-863    “ 逃げる者は射殺せよ ”

2022.05.26

「海外からの帰国者は片っ端から捕らえろ」
「拘束者が数歩でも逃げれば射殺せよ」

4月24日、中国新疆ウイグル自治区で少数民族のウイグル族らが強制収容されている問題で、2万人分以上の収容者リストや収容施設の内部写真など、数万件が流出したことが分かった。

この資料は米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団(VOC)」のアドリアン・ゼンツ上級研究員が入手した。

同自治区カシュガル地区内の公安ネットワークから第三者がハッキングしたもので、VOCなどが24日に調査結果を公開した。

冒頭の記述は2017年5月の演説で自治区トップの陳全国・党委員会書記の指示である。

収容者リストには、カシュガル地区コナシェヘル県のウイグル族ら2万人以上の身分証番号や収容理由が記載されている。

ゼンツ氏は同県で2018年頃、成人全体の12.1%が収容されていたと推計。10~70代の収容者2800人超の顔写真も流出。

他に、手錠や覆面をつけられた収容者が尋問されたり、武装警察が収容者の制圧訓練を行ったりする収容施設の内部写真も流出。

VOCは「罪のないウイグル人が犯罪者のように扱われていることを決定的に証明するものだ」としている。(産経新聞)

前日の23日、中国王毅外相は、訪中しているバチェレ国連人権高等弁務官と広東省広州で会談。
「人権問題の政治化、武器化」に反対するとの立場を表明し、欧米がウイグル族への弾圧を批判していることを念頭に「一部の国と反中勢力が偽情報を躍起になってまき散らし、中国を攻撃、中傷している」と主張し「デマや虚言を自滅させるよう望む」と呼びかけた。

このタイミングでの発言、情報流出を知って予防線を張ったと推定できる。

中国の新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐって、国際社会の批判が強まるなか、帰国すれば迫害を受けるおそれがあるとして、去年、難民として日本で保護されたウイグル人は、受け入れを始めた昭和57年以降、最も多くなった。

日本では、難民条約に基づき、人種や宗教、政治的意見などを理由に、帰国すれば迫害を受けるおそれがある外国人を難民として保護している。

去年1年間に難民と認定された47人のうち、中国(ウイグル)人は11人と全体のおよそ4分の1を占めている。新疆ウイグル自治区でウイグル族ら少数民族に対して行っている行為が、人権侵害にあたるなどとして、国際社会の批判が強まり、難民と認定された中国人(ウイグル)が増えたのだ。

中には留学後、大学を卒業し中国に帰る人もいる。しかし、冒頭にあったように「海外からの帰国者は片っ端から捕らえろ」という中国の横暴を知れば、帰るにも帰れない。かといって、日本で職を得ようにも多くの難問が立ちはだかる。

例えば、

1、“ ウイグル人 ” だからという理由で差別を受ける。
2、理科系の大学を卒業、資金を貯めて独立しようとしても、営業許可がなかなか下りない。
3、いっそ帰化しようと申請書の郵送依頼をすれば、中国に取りに来いと言う。今中国に行けば逮捕されるのは自明である。
4、在留カードに「ウイグル」という地域名の記載を法務省に要請しても、「たとえカードに地域名を記載されていなくても、相談を受けた時点で、その人の属性を十分に確認して柔軟な対応がとられる」と木で鼻をくくったような回答がくるのみ。ウイグル人のおかれた状況を一向に理解しない日本政府の対応も冷たい。

国際社会がウイグル自治区の弾圧を問題視している中で何故、ウイグル人の人権に日本政府は腰が重いのか。

月刊・正論には毎号、評論家・三浦小太郎氏が『在日ウイグル人証言録』を連載している。

その証言を読むと、この世で現実に起きているのかと疑うような内容ばかり。ウクライナ戦争のように生映像が流されれば悲惨さは直に伝わる。しかし、中国の人権弾圧は決して他国の目に触れないように周到にかつ秘密裏に行われる。

今月号の証言の中には、40代のウイグル人女性の先生が、ウイグル人学校を潰そうとした中国政府に、存続を請願しただけで逮捕。24時間全く眠らせない拷問を受け、3ヶ月に満たないうちに亡くなった。このようなことは日常茶飯事。

日常ですら暴徒たちはウイグル人とわかれば殴るけるの暴力は当たり前、武装警察が見て見ぬふり、止めることは全くない。

暴徒たちに言った武装警察の言葉だ。
『今まで君たち(暴徒)はよくやった。しかし、ここウルムチは中国人が多く住んでいるので何をやっても構わないが、ウイグルの南部は中国人が少ないので、これ以上のことをすると、南部の中国人が襲われるかもしれない。だから、これくらいでやめてほしい。』

これが今も続くウイグル自治区の日常である。

内部資料の流出は朗報である。しかし、中国はどうせ「欧米のでっち上げ」と一蹴して終わり。一向に気にすることなく弾圧は続くと推測する。それが中国である。

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