フィンランドの覚悟

世界,日本,雑記

Vol.3-6.8-876    フィンランドの覚悟

2022.06.08

ロシアの脅威の高まりを受け、フィンランドとスウェーデンが軍事中立を放棄し、5月18日、NATOに加盟申請した。

トルコが加盟反対を表明、先行きは不透明である。

トルコの反対理由は、反政府武装組織『PKK(クルド労働者党)』をフィンランドとスウェーデンが難民と称してPKKを匿っていると言う理由である。PKKはトルコの人口の10~25パーセントを占めるクルド人。何十年も抑圧されてきた歴史があり一概にテロ組織と断定できない複雑な歴史を有する。

ロシアはこの背景を知った上でEUとNATOの分断を狙い、PKK情報をトルコに流し全面協力している。

このような状態でフィンランドのNATO入りがすんなりいくとは思えない。

フィンランドはロシアとは1300kmを接し文字通り最前線に位置する。ウクライナの状況に似ている。NATO申請に国民の緊張感が高まるのは必然、並々ならぬ覚悟がみえる。

産経新聞は5月末、フィンランドが行った軍事訓練を取材している。

「シラカバの森を抜けて突然、装甲車が出現し、茂みに3台が整列した。韓国が開発したK9自走砲。ゆっくりと砲を上空に向け、連続で発射した。轟音とともに火炎と白煙が上がり、大地が揺れる。」臨場感あふれるリポートである。

昨年夏に徴兵で入隊した20歳の大学生
「将来はエネルギー企業に就職する予定です。フィンランドが攻撃されたら?もちろん、国を守る。その覚悟はある」

今年2月、ロシアがウクライナに侵攻したとき、兵舎で仲間と映像を見た。
『みんな言葉を失いました。脅威とはこういうものか。気持ちが引き締まった』と語る。

訓練を指揮するサミアンティ・タカマア大佐は「徴兵制の利点は、いろんな人材が集まることだ。中には高学歴で、瞬時に適格な判断ができる人も多い」、ウクライナの戦いに刺激を受け「非常に戦意が高い。国民軍の強さが証明された」と感じていると語る。

フィンランドは18歳以上の男性全員に6~12ヶ月の兵役義務を課し、30日以内に28万人を動員できる態勢を保つ。予備役は90万人。人口550万人の小国でNATOでは米国、トルコに次ぐ規模を誇る。

日本の自衛隊が25万人、予備6万人である。人口比率からいえば日本の20倍以上である。

フィンランド防衛意識の高さは、1917年にロシアから独立した後、ソ連から2度も侵攻された。そのため国土防衛のための徴兵制を維持、国民の支持も高く5年前の調査では徴兵維持を求める意見は8割を超える。

第二次世界大戦ではソ連側に大損害を与えながら、領土を失っている。80年の時を経ても隣国の脅威に対する緊張感は消えることがなく維持されているのだ。

翻って日本、岸田総理は防衛費を大幅に上げることを表明した。GDP2%というだけで野党は目の色を変え反対した。

◆欧州2021年の<現GDP比国防費 ⇒ 目標>
☆ポーランド・・・2.34% ⇒ 3%
☆ラトビア・・・2.16% ⇒ 2.5%
☆リトアニア・・・2.03% ⇒ 2.52%
☆ドイツ・・・1.49% ⇒ 2%以上
☆スウェーデン・・・1.2% ⇒ 2%
☆デンマーク・・・1.4% ⇒ 2%
☆フィンランド・・・1.85% ⇒ 4年で22億ユーロ増
☆日本・・・1.0% ⇒ 不明

以上のようにバルト海周辺国は軒並み軍備増強を決めた。

陸続きのヨーロッパは、何百年もの間、多かれ少なかれ、侵攻・侵略への恐怖を日々の生活の中に感じながら生きてきた。日本とは決定的に違う。

翻って日本、領土侵略された経験はない。戦争と言えば、日清・日露に第一・第二次世界大戦だけである。敗戦は唯一第二次世界大戦のみ。末期の壮絶な沖縄の戦い、本土への空襲、とどめは世界で唯一2つの原爆を受け日本は沈没した。

しかし、この近代の戦争を除けば、日本は1000年以上もほぼ他国との戦争を知らない平和な国であった。占領後の屈辱的な抑圧も知らない。日本人の身体に流れる血の質はヨーロッパとは決定的に違う。

従って、ロシアに隣接するバルト諸国とは “ 国を守る ” という意識において埋めようがないギャップがある。

フィンランドがトルコの反対で、たとえNATOに加盟できなくてもフィンランドはウクライナと同じく、国民皆兵の気持ちだ。今回の軍事訓練に将来の夢を語る20歳の学生の言葉に象徴されている。

日本は、この欧米との意識ギャップを埋めることは至難である。戦争を知らない世代が増える中、日本が戦った近代の戦争を非難するだけの日本人がいる。歴史を鑑みない人間が、日本を危険に追い込むような気がする。

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