冷酷な強国の論理

世界,日本,雑記

Vol.3-6.16-884   冷酷な強国の論理

2022.06.16

どうも理解し難い。

ウクライナ東部要衝、ルガンスク州セベドネツクで激しい戦いが続いているというニュースを耳にする。

露軍は同市とドネツ川を挟んだ対岸の都市リシチャンスクを孤立させ、ウクライナ軍の補給を絶とうとしている。

ルガンスク州のガイダイ知事は12日、3つの橋のうち、2つが露軍に破壊され、残る1つも通るには危険な状態だと指摘。ガイダイ氏は、3つ目の橋が破壊された場合、セベロドネツクは完全に孤立すると危機感を示した。

これらウクライナ劣勢が伝えられる中、トルコ・エルドアン大統領は12日、ウクライナ侵攻で世界の食料価格が高騰している問題に関し、プーチン大統領とゼレンスキー大統領と近く個別に会談、輸出大国である両国の仲介をしようとしている。

この動きがどうも胡散臭い。

最近、ゼレンスキー大統領が「武器の提供が遅い、少ない」と盛んに訴えている。武器があれば、東部の要衝を占領されることもなかったかもしれない。

アメリカの支援の遅延は何かの意図があってのことかと疑ってしまう。
それに、フィンランドのNATO入りに反対しているトルコ。そのトルコが反対理由としているトルコの敵である “ クルド労働者党(PKK)” をロシアが支援している。

にもかかわらずロシアを責めるわけではなく、逆に食糧危機を理由にロシアの制裁解除に同調する。何とも無節操なトルコの動き。その裏には、ロシアへのエネルギー依存が50%近くあること、あるいは武器供与の関係もあるであろう。ヨーロッパ諸国の力関係の中でなりふり構わず生きながらえる道を模索する気持ちはわかるが、EU加盟国の中でも特異な動きをする国であることは間違いない。

しかし、このウクライナ戦争を最も長引かせている原因はアメリカの不徹底にあるように思えてならない。

表向きウクライナ支援を全面的に打ちだしているにもかかわらず、ゼレンスキー大統領が「武器の提供が遅い、少ない」と訴えるように俊敏な動きができていない。

黒海封鎖になれば大きな影響が出ることは予想できたはずである。ウクライナが露軍戦艦・モスクワを破壊したように、緻密な戦術を用いれば黒海封鎖は回避できたのではないか。

ロシアとの戦争終結を模索するにおいて、①トルコのEU内で置かれた状況を利用、②中東・アフリカの食糧危機を想定、③さらに強力な武器供与を遅らせ、④ゼレンスキー大統領の口から武器供与が遅れていることを世界に発信させ、⑤暗にロシアにも気を使っているかのように見せかけ、プーチンの核使用を止まらせる。

揚げ句の果てには、⑥疲れを見せないゼレンスキー大統領の譲歩を引き出すために、⑦穀物での窮状を世界に言わせる。何とも冷酷な戦略を見るような気がするのだ。

世界は表面上ウクライナ支援への姿勢はくずしていないものの、世界の食糧事情があまりにも悪化した場合、その改善が、ウクライナのエゴによって黒海の封鎖が解けない。そんなシナリオによって、ウクライナに妥協を強要するとしたら筋違いもいいところだ。

大国が武力という力で仕掛けた戦争が、いつの間にか被害者のエゴで停戦できず、食糧危機を起すに至る。などと、いつの間にか被害者が加害者になり替わる邪悪なシナリオを構築しようとするなら「悪魔」である。

アメリカ、NATOが本気になれば、今のロシアなら停戦への道筋はつけられたかに思える。命を懸けて戦うウクライナ国民を見殺しにするとすれば、アメリカはさらに信用されず、世界をさらに混沌へと導くだけである。

ロシアのギブアップは当面あり得ない。ウクライナは突然襲いかかった猛獣に抵抗をやめれば、国家消滅の危機を背負うギリギリの戦いにある。

今一度、ウクライナ存続が世界にどんな影響をもたらすのか、アメリカを中心とした自由主義陣営は確認し合う必要がある。

アメリカとNATOの決断と団結、近未来の中国とロシアの横暴を押さえるにはこのウクライナ戦争の対応で全てが決まる。

強国の都合だけでウクライナの命と自由が犠牲になってはならない。

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