社内公用語に錯誤はないか

世界,日本,雑記

Vol.3-6.25-893   社内公用語に錯誤はないか

2022.06.25

シャープが令和5年から社内公用語を英語にする考え示した。

“ 世界の亀山 ” として液晶テレビで世界を席巻したシャープ。その栄光も長くは続かなかった。不振の原因はいろいろ言われているが、営業不振に陥り、2016年、大手メーカーとしては初の外国資本「鴻海(台湾)」の傘下に入らざるを得なかった。

栄枯盛衰は今昔からの常ではあるが、日本企業として幼いころから親しんだ家電メーカーが外国企業の傘下に入り、外国人の社長、社内公用語が英語に変わる。昭和の時代にシャープに親しんだ年代の人間としては限りなく寂しい。

呉柏勲社長兼最高経営責任者(CEO)は23日、株主総会後の経営説明会で「社内公用語を1年後に英語にする」と述べ。社員の英語力の向上を通じてグローバル人材の育成を加速させる。と語った。

呉氏はシャープ親会社の台湾・鴻海精密工業出身。4月にシャープCEOに就任後、海外事業の拡大を強調してきた。7月に海外統括本部を設置して海外企業との協業や企業の合併・買収(M&A)などを推進する方針で、呉氏は「日本中心のブランドから世界のシャープに成長したい」と話した。

当然だが、現代は世界を相手にしなければ生き残れない時代である。シャープの場合外国資本の傘下に入り、外国のCEOが経営のトップになった以上、すでに日本企業ではない。したがって、社内公用語が英語になるのは仕方ないにしても、昨今の日本企業、純然たる日本企業がグローバルを理由に英語を公用語にする企業がいくつも誕生している。

その代表格が三木谷社長の楽天である。楽天は2012年から社内公用語を英語にした。
◆楽天
約2年間の準備期間を経て、楽天が本格的に英語を社内で公用語化したのは2012年。当時は業界を超えて大きな話題となった。現在は会議や資料など、社内のやり取りはすべて英語を前提に行われている。また、昇進にはTOEIC基準点のクリアを条件にするなど、人事評価の面でも英語を重要視する体制を築いた。

2015年には楽天社員のTOEICスコアの平均が800点を突破。現在はこれが830点に達している。今や70以上の国・地域からの外国籍社員が働いており、その割合は全社員の2割に当たる。人数ベースでは、英語化前の2010年の20倍となった。新規に採用しているエンジニアに限っていえば、7~8割が外国籍社員だという。

その他に英語を公用語にした企業、または近い将来その予定企業は
◆ホンダ
2020年を目標に社内の公用語を英語にすると発表した。地域をまたいだ会議やグローバルで共有する文書の作成に英語を用いる。言語を統一して地域間のコミュニケーションを密にし、グローバル化を推進する。

◆アサヒビール株式会社
◆株式会社ユニクロ
◆株式会社資生堂
◆三井不動産株式会社
◆スミダコーポレーション2002年から実施
◆日産自動車 公用語ではないがルノー傘下のため会議などで英語を使用している(日経新聞)
◆伊藤忠商事 会議などで英語を使用
◆サイバーエージェント 英語公用語化に向けて準備中
◆ブリヂストン 英語公用語化に向けて準備中
◆アサヒビール 英語公用語化に向けて準備中

それ以外に昇進にTOEICスコア000以上を目標にしている企業は多い。
◆三井不動産◆三井住友銀行◆三菱商事◆双日◆日本電産◆武田薬品◆堀場製作所◆資生堂

そのような企業の特徴は、

  • 外資系企業であり、海外との取引ややり取りが多い
  • 海外から優秀な人材の確保を目的としている、またはすでに採用している
  • 海外へのマーケティングが会社の繁栄のカギを握る

そこで<社内公用語を英語にするメリット>だが、

・煩わしい上下関係をなくす
・情報収集能力が上がる
・社員のモチベーションをあげる
・能力のある人材を育てる・採用できる

<社内公用語を英語にするデメリット>

  • スキルはあっても英語力のない人材が辞めてしまう・採用しにくい
  • 2度手間が増える・業務が滞りやすい
  • 誤解や認識のすれ違いが生じやすい
  • 礼儀を忘れやすい
  • 社員の人間関係が崩れる

などそれぞれ上げられている。

しかし、社内での日常での会話も英語という公用語システムが必要とは思えない。日本語の微妙なニュアンスが失われ、「IとYou」「YES とNO」で済む世界はコンピューターが発明された米国でならではのデジタル世界である。

昔からパイロットの交信は英語でやりとりである。間違いを無くすためと聞いた。だからと言って日航が全日空が社内公用語が英語という話は聞かない。

ジイが思うに、英語を話す日本人が増えるだけ。相当勉強してもネイティヴな英語にはなれない。ジイはよく「ワタシが日本に住む理由」というTV番組を見るが、20年以上住んでいる外国人でも美しい日本語を話せない。それと同じように日本に住みつつネイティブ英語を話すのは至難の業である。

外国人からみれば、口には出さないまでも当然心の中では、下手な英語だなと思っても不思議はない。特にビジネスとしての英語である。それを覆せるのは膨大な知識と日本文化への精通である。

TOEICスコア800以上を目標に勉強し、懸命にデジタル人間を生産する。

海外とのやりとりをスムーズにする、あるいは外国人が多い部署は便利に違いない。だからと言って英語を社内公用語と大見得をきって我が社はグローバル企業と胸を張る会社をジイは信用しない。

かつて、英語をモーレツに勉強し、米国の大学で教鞭をとった数学者・藤原正彦氏は文芸春秋(2020.01)の中でこう語っている。

「ある商社マンがロンドンに赴任していた時、取引先の家に招かれた。そこで尋ねられたのは『縄文式土器と弥生式土器はどう違うのですか』だった。『元寇は二度ありましたが二つはどう違ったのですか』とも尋ねられたという。こういう質問に答えられないと、知的につまらない人と思われ、次に招いてくれなくなり商談も進まなくなるという」

そんな話を思い出す。

グローバルな人材とは「英語力だけではなく、さまざまな物事に対する幅広い知識と経験」だと、福島大の助教・ウィリアム先生は話す。

日本の企業、を見ていると “ 社内公用語=英語 ” にこだわる。そこにどうも危うさを感じる。英語=国際人=グローバル会社という感覚である。

日本の代表的古典や伝統的文化を語れず、ただ英語を話せる日本人。外国人から見れば、「英語が話せるサル」で終わってはならない。あくまでもツールである。

英語を世界共通語とする流れは止まらないだろう。したがって世界、国内に住む外国人とのコミュニケーションのツールとして積極的に勉強すべきであることは間違いない。しかし、こと「社内公用語=英語」をグローバルと勘違いすることがなければと思う次第だ。

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