スリランカの危機

世界,日本,雑記

Vol.3-7.13-911  スリランカの危機

2022.07.13

インド洋の島国スリランカが独立以来最悪の経済危機に直面している。

スリランカはインドの突端、インド洋に浮かぶ小さな島だ。
時あたかも安倍元首相が提唱した “ 自由で開かれたインド太平洋 ” のど真ん中にある。

昔はセイロンと言った。島の大きさは北海道の0.8倍、人口2200万人。陸軍、海軍、空軍を有する。主産業は紅茶・ゴムなどの農業と観光、通貨はルピー、仏教徒70%の国である。

日本とは関係が深い。第二次大戦で敗戦後、国交樹立前の1951に行われたサンフランシスコ講和会議には、セイロン代表としてジャヤワルダナ大統領が出席した。

「憎悪は憎悪によって止むことなく、愛によって止む」という仏陀の言葉を引用、対日賠償請求権の放棄を明らかにすると共に、日本の国際社会復帰を求め、日本の国際社会復帰の道筋を作ってくれた恩人である。

その国が経済危機に陥った。

経済危機は輸入代金の決済に使われる外貨不足によって引き起こされた。

デフォルトに陥った要因と経緯
① 2005年から10年間続いたマヒンダ・ラジャパクサ政権が、インフラ整備のため中国などから無計画に借り入れた巨額の対外債務が主な原因である

② 無計画なインフラ整備の先行投資は産業や雇用を直接生み出さなかった。ここ数年の外貨獲得の頼みの綱は「観光業や海外の出稼ぎ労働者からの送金のみ」という状況

③ 2020年になると、新型コロナウイルスの世界的流行で観光事業がさらに悪化

④ 昨年からの世界的な燃料価格上昇も響いた

⑤ 立て直しに向けたIMFとの本格交渉開始も出遅れた

⑥ IMFは支援と引き換えに国有企業の民営化など厳しい緊縮策を迫る。しかし、「国民の支持を得られない国有資産の切り売りは政府にとって『悪』。ラジャパクサ政権は身動きが取れなくなった

⑦ 中国に10億ドルの緊急融資を申請するが回答なし

このように問題はスリランカ政府にある。しかし、無節操に貸付け、債務漬けにしたのは中国である。貸す時は相手の事情など一切考慮せず青天井の如く貸付しつけ、危機に瀕すれば港湾の運営権などを99年というほぼ永久に近い年月で譲渡を勝ち取る。

この手法を世界は “ 債務の罠 ” と呼ぶが、中国の融資で途上国が苦しんでいる現状を見れば、的を得たネーミングではないか。

この手に落ちたのはスリランカだけではない。トルクメニスタン、ベネズエラ、パキスタン、タジキスタン、ジブチ等々、アフリカ・ザンビアもこのワナにはまった。

1948年、独立以来最悪とされる経済危機に燃料不足や物価高が深刻化し、市民の不満が爆発。抗議デモは大統領公邸や首相府に及び、公邸を占拠した市民が建物内を歩き回ったり、プールで泳ぐ、トレーニングジムなど好き勝手にする市民の姿がテレビ画面に映し出された。

以前は日本も経済支援に深く関わったが、洪水のように降り注ぐ中国マネーに時の政権は為すすべなくというより、目がくらんだとしか言いようがない。

荒井悦代・アジア経済研究所南アジア研究グループ長は「日本を含め近隣国は、政治的安定を取り戻せるよう、良識を持った援助を行う必要がある」と強調した。

それにしても、中国の対応はあまりにも冷たい。無節操な融資で債務漬にした責任など露ほども感じる気配などない。日本が考えた地道に努力する先にある安定した成長よりも、目の前に差し出された夢のような世界に目がくらんだのであろうか。

中国共産党100年の夢実現の前にタブーはない。決して同情や温情など世界制覇の前では風前のチリに等しい。

世界制覇を目指す「チャイナゲーム」においては、“ また一つ落ちたか ” という認識であろう。

中国100年の夢実現は、勝つか負けるか、勝つための手段は選ばず、14億の人口も武器である。命への配慮は国益の前ではチリのごとくである。

最近、百田尚樹氏が「禁断の中国史」<中国4000年虐殺史・・・>なるものを書いてベストセラーになっているようだが、虐殺だ、なんだかんだと言われようと中国の “ 益 ” なきものに関心はない。“ 勝てばすべて良し “ の世界を日本人はなかなか理解できない。

それにしてもスリランカの危機 、“ 受けた戦後の恩 ” 、こんな時にこそ返したいが何とかできないものか。

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