バイデン!大丈夫か!
Vol.3-7.15-913 バイデン! 大丈夫か!
2022.07.15
今さら改めて言うことでもないが、世界は今、アメリカ、中国、ロシア、この3国を中心にした力学で動いている。ロシアのウクライナ侵攻によってより鮮明になった。
昨日から、米バイデン大統領が中東の歴訪を開始した。中間選挙を控え支持率の低下、世間には決して見せられない自らの健康問題を抱えながら憂鬱で難しい旅に出かけた。
ウクライナ侵攻によってあぶりだされた各国の生き残り戦略は、中東もアセアン諸国もすべて、アメリカ、中国、ロシアとの損得関係で動いている現実がより鮮明になった。
今回の中東歴訪、焦点はサウジアラビア首脳との会談である。
最優先課題は国内のガソリン価格上昇などインフレ抑制がある。このため石油大国サウジに増産を直接要請する意向だが、同国訪問の戦略的な狙いはサウジと中国との関係に〝 楔 〟を打ち込むことでもある。
しかし、大統領のこうした思惑が成功する見通しは小さい。何故なら、石油が高騰する中、増産するメリットはない。十分儲かっているからだ。それよりも、増産によって価格下落の方が恐いのではないか。昨年も石油の増産を要請したが結局サウジは応じなかった。
バイデン大統領の支持率は33%と最低に落ち込んだ。大統領の人気が急落した大きな要因は物価の高騰。EUによるロシア産石油禁輸が本格化する年末には、新たなオイル・ショック懸念から、高騰が予想される。当然日本もこの影響を受けると思われる。
問題はサウジとの関係だ。トランプ前政権のサウジと親密な関係とは違い、人権重視のバイデン氏、サウジを牛耳るムハンマド皇太子のサウジ反体制派ジャーナリストのカショギ氏殺害事件では、皇太子を黒幕と見なしたことが原因である。
大統領就任後も「殺害は皇太子の命令」との米情報機関の報告書をあえて公表、これにサウジが反発し、両国関係は悪化した。
しかし、ロシアのウクライナ侵略で情勢が激変。制裁でロシア原油の輸出が滞り始めると、世界最大の産油国である米国でのガソリン価格も上がり国民を直撃した。
いよいよ11月の中間選挙を控える。物価高が鎮静化しなければ、「大敗する」と見られている。
ついに、人権派バイデン氏も理念よりも現実を選択せざるをえないということか。
しかし、問題はサウジが大統領の増産要請に応じるかどうかだ。サウジが主導するOPECとその同盟産油国で構成するOPECプラスは先月末、現行の生産計画を維持することを決めたばかりで、「バイデン大統領の直談判で政策が大きく変更するとは考えにくい」というのが専門家の見方だ。
ここでも、やっかいなのが中国。米軍がアフガニスタンから完全撤退し、イラクやシリアの駐留軍も縮小するなど中東における米国の影響力が低下する中で、力の空白を埋めようとしているのが中国。
サウジにとっても米国との関係が冷却化する中、大口の石油売却先である中国との関係を深めようとする。ムハンマド皇太子はカショギ事件で国際的な孤立を深めていた2019年2月に訪中、習近平国家主席と会談し、関係拡大で合意した。2021年3月には王毅外相がサウジを訪問、米国を念頭に、人権問題で外国が内政干渉することに反対するとの認識で一致。サウジは中国からの兵器購入も増やした。
中国がサウジを重要視しているのはエネルギー資源の確保。2021年にはサウジ石油の最大の輸入国となった。驚くことなかれ、両国の石油取引がドルではなく「人民元建て」で決済する協議も行われている。
バイデン大統領はことある毎に中国の脅威を唱え、中国に備えるためとして中東に配備していた軍事力をアジアに振り向けつつある、そのスキを中国に突かれている。まるで傷ついたところをアメーバのように侵入し覆いかぶさって自国の細胞に取り込むような執拗さが中国アメーバの特徴だ。
バイデン氏が人権という看板に傷がつくことを覚悟の上で訪問に踏み切った背景には中国ファクターが大きかったということだ。
そんな中、プーチンがイランの首都テヘランを訪問し、ライシ・イラン大統領、エルドアン・トルコ大統領との3者会談の予定がある。なんとまあ、世界は忙しい。
バイデン大統領はサウジなどペルシャ湾岸産油国がロシアの侵略を批判しないことに苛立ちがある。しかし、どんなにイランとロシアの脅威論を利用しようとしても、以前と違い力の落ちた米国に簡単になびくことはない。そこに、高齢となったバイデン大統領の健康問題がある。大統領は今年の11月で80歳だ。テレビでみても、歩く姿がちょっとおぼつかない時がある。
米紙によると、公式の演説でもつかえる場面が増えた。
中東だけではない、このウクライナ侵攻が引き起こしたエネルギーに中国問題、高齢バイデン氏に問題は山積だ。
夏休みが取れる状況にない。つい、“ 大丈夫か!バイデン! ” と心配してしまう。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません