津軽海峡 “冬景色”

世界,日本,雑記

Vol.3-7.30-928  津軽海峡 “冬景色”

2022.07.30

冷戦時代、北海道は旧ソ連による侵攻に備える「最前線」だったが、中国の台頭でロシアの存在感は低下、備えは南西にシフトされていた。

ところが、ウクライナ侵攻や中露連携の強化は日本の防衛政策を大きく変えようとしている。

◆今年の5月24日、ロシア軍情報収集機が北海道を周回
◆5月から6月にかけ、またもやロシア軍情報収集機が北海道を周回
◆6月7日、ロシア軍機が北海道に向け飛来、その後Uターンして帰還
◆6月、ロシア軍艦が日本列島を周回
◆6月、中国軍艦隊が津軽海峡を通過、その後、日本列島を周回

ウクライナ戦争で忙しいはずのロシア。景気低迷・人権問題・国内暴動など内政に忙しいはずの中国が、共に日本に対する動きの活発化はどう見ればいいのか。

政府はこれまで、自衛隊部隊を沖縄県など南西諸島に重点配備する「南西シフト」を敷いてきた。しかし、上記のように北海道や東北の沖合でも中露の連携した動きが活発になるにつれ、政府与党内では「北方軽視」を見直す動きが出ている。

ただそれには、陽動作戦も視野に入れ慎重に考える必要がある。

ロシア軍が北方で陽動作戦を行い、南西方面における中国軍の動きを助ける可能性だ。

台湾有事や南西諸島有事が発生すれば、自衛隊や米軍は沖縄から台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線を封鎖し、中国の太平洋進出阻止を目指すとみられる。だが、沖縄本島と宮古島の間の海峡を封鎖しても、迂回すれば津軽海峡や宗谷海峡から太平洋に出られる。

自衛隊幹部は「今まで、対中国正面イコール南西諸島とみなしてきたが、今後は日本列島全体が対中国正面になる」と指摘する。

今月23日、敵が敷設した機雷を発見し、爆破処分する機雷訓練が23日、報道陣に公開された。

下北半島、陸奥湾では毎年のように機雷訓練が行われているが、今年の訓練はいつもと異なる状況で実施された。

冒頭に記した、陸奥湾から目と鼻の先にある津軽海峡での異変のためである。
今年の中露の津軽海峡通過に、海自隊員は「あれだけ頻繁に通過していると、いつでも機雷を津軽海峡にばらまいて封鎖する可能性はある」と語った。

いよいよ津軽海峡は別の意味で冬景色となる。

陸自幹部は「ロシアがウクライナに侵攻したことで、北方の緊張は高まっている。水機団が大湊で訓練しても不思議ではない」と語る。

九州を拠点に離島奪還作戦を担う水陸機動団が、同時期にむつ市の大湊基地に派遣されていたことを考えても緊張度は高まっているとみていい。

折しも中国牽制の一環なのか、石破元幹事長が台湾を訪問し、蔡英文総統と意見交換した。

石破氏は、中国による台湾への軍事圧力が強まっていることを念頭に、日台が想定される事態や適用しうる法律、部隊運用などについて「共通の理解」を持たなければ「抑止力にはならない」と指摘。台湾有事に備えた協議を台湾側と行っていく考えを示した。さらに「日本がアジア太平洋地域においてしかるべき責任を果たしていきたい」とも語った。

中露の連携が強化される中、日本は北方防衛、南西諸島有事の両立を迫られることになった。その備えは緊急性を要する。

抑止力として、訓練を見せつけるだけでは不十分。まずは、中露の揺さぶりをテコにして、早期に防衛費増額、憲法改正等をスピード感を持って進めることである。プラス、同盟国、協力関係諸国との頻繁なる情報交換と紐帯強化を図らなければならない。

この有事に政局に血道を上げている暇はないと申し上げたい。

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