クレカで運賃払いの未来
Vol.3-8.26-955 クレカで運賃払いの未来
2022.08.26
クレジットカードでスイカのようにタッチするだけで運賃が払える。未来ではなくすでに実証実験が進んでいる。
今回ばかりはいろいろ問題を解決する必要があり、首都圏ではなく、地方から首都圏にという流れになりそうだ。
その問題点と未来図はどうなるのか。ネット情報から拾ってみた。
クレジットカードをリーダーにタッチして電車やバスなどに乗り、さらにタッチして降りる、といった従来通りの手順で交通機関を利用できるようになる。
スイカに代表される交通系カード決済は日本が先行したが、世界は、クレジットカードのタッチ決済を使った乗車が急激に広がっている。世界で最初にクレジットカードのタッチ決済が採用されたのはマレーシアのクアラルンプール。これが2011年のこと。その1年後、2012年には世界的な導入の端緒にもなったといわれている英ロンドン交通局による導入がスタートしている。
このロンドン交通局の10年に渡る事例では、従来のICカードや紙の切符を使った運営コストに比べて、30%の間接費を削減できたという。これを皮切りに、交通機関のタッチ決済対応は世界580都市以上にまで拡大した。
日本でも既に20道府県で30事業者がタッチ決済を導入しているそうだ。現時点で多くは実証実験として位置付けられているが、バス事業者を中心に本導入も進められている。
海外の交通機関でタッチ決済が普及した理由は、日本と違いそもそもクレジットカードのタッチ決済が早くから一般化していたことがある。
「タッチ決済」という点では電子マネーで日本が先行したが、クレジットカードのタッチ決済で日本は出遅れた。
反面、世界では電子マネーが多くの国でなかったため、クレジットカードのタッチ決済が普及したのが理由の1つのようだ。
実際、世界では、Visaカードの決済件数に占めるタッチ決済の割合が約70%まで拡大。日本でもVisaブランドのタッチ決済対応カード発行枚数は約7000万枚まで増え、さらにカード更新時に必ずタッチ決済対応に切り替わるため、このままいけば2024年には全てのVisaカードがタッチ決済に対応することになるという。
早晩、主要都市の中でクレジットカードのタッチ決済による乗降が使えないのは、日本のみという状況になりかねない。
ヤバイではないか。インバウンドが本格的に再開したときに、海外の人がわざわざ、交通系カードを買わなくてもいいように、クレジットカードのタッチ決済を早急に整備する必要がある。
日本では交通系ICが普及し、処理速度など優れた決済手段だとは思うが、それでも交通利用の全てをカバーするのは難しい。交通系ICがあっても紙の切符を使う人もいるし、チャージをするために券売機で現金を使うという例もある。
加えて交通以外の利用では、クレジットカードに比べて交通系ICは限定的、交通系ICとクレジットカードのタッチ決済は必ずしも置き換えにならないという難しさがある。業者間のメリット、デメリットがあり、このあたりは、交通系ICを推進する鉄道事業者とクレジット会社がどのように協調していけるかにかかっている。
ロンドン交通局の事例では、タッチ決済で乗降した人は、降車後に周辺の加盟店でそのままそのクレジットカードを使って買い物などをしており、加盟店の売上高、取引件数が10%上昇するという効果も見られたという。
利用者にとっても、移動先での買い物、宿泊費精算などの消費に加えて、移動も全て1枚のクレジットカードにまとめられれば、経費精算や利用履歴の把握が容易になる。利用者側には、交通機関の乗車で得られたポイントがそのままショッピングに充当できる、といった利便性もある。
ただ、日本におけるクレジットカードの交通機関でのタッチ決済には課題がある。
◇1つは、タッチ決済のスピードである。スイカはタッチから0.2秒以内に処理が完結することが必要とされている。
◇クレジットカードを利用する場合、国際規格としては、0.5秒以内という要件がある。それでもスイカと比べれば遅い。特にJR東日本の新宿駅のような大量の乗降客数が一度に集結する改札では滞留してしまう可能性がある。
そうした課題乗り越え、どう高速化を実現するかだ。
交通系ICに比べると遅いが、実証実験では実用上問題ないぐらいのスピードまできているという。
0.3秒実現がメドだが、工夫によって、「ちょっと遅いけど立ち止まるほどではない」というスピードで、クレジットカードのタッチ決済による入場が可能になったところまできたようだ。
交通系ICのように何人もの人が連続して通過しようとすると処理が追い付かない可能性はあるが、改札機を交通系ICと分離するなどの方法も検討中だ。
クレジットカードの場合、実際の決済までにはタイムラグがある。クラウド処理で運賃を確定して、処理を1日分まとめて確定するというやり方によって、「柔軟な運賃設定ができる」のもメリット。
例えば、運賃や割引の設定が簡単に変更でき一斉に適用できる。まとめて1日分を確定させるため、乗車後に特定の条件で運賃割引をするといった設計も可能。
例えば観光路線で、周辺エリアにおける買い物などの利用額によって運賃の割引をするなどの連携が可能になる。こうした設計が可能なため、「いつものクレジットカードで乗車できる」というクレジットカードのタッチ決済が強みとなる。
もう1つの柔軟な運賃設定が上限運賃制だ。これは、1カ月、1週間、1日といった具合に特定期間内に一定の利用額に達したら、その後は運賃を徴収しないというもので、海外では比較的一般的な仕組み。周遊券や1日乗車券、定期券のような使い方ができるということだ。
定期券や周遊券を事前に購入する必要もなく、現金での支払いもないことから、利用者の利便性だけでなく、事業者側のコスト削減にもつながることが期待できる。2022年秋に、神戸市内で運行する神姫バスにおいて「上限運賃適用サービス」の実験を行う予定がある。
上限があれば旅行者の回遊性が増して、クレジットカードの購買による周辺加盟店の利用増も期待される。決済データから、交通事業者はこれまで乗車動向しか計測できなかったが、周辺の消費データを合わせて観光施策を打ち出したり、観光地が交通との連携施策を検討したりといろんな可能性を秘める。
いよいよ、世の中カード1枚で一切現金要らずとなるか。
交通系とクレジットカード会社、お互いの利害を乗り越え、一日も早い合意形成がなされれば、コロナ後のインバウンドは一気に盛り上がるのではないか。期待したい。
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