「一つの中国」という足かせの50年

世界,日本,雑記

Vol.3-9.15-975  「一つの中国」という足かせの50年

2022.09.15

1972.9.29、日中平和条約が結ばれ、国交が正常化した日である。

今年9月29日に50周年を迎える。悲しいかな諸手を上げて喜べないのが残念である。

51年前の1971年10月25日、国連総会で「アルバニア決議案」が採択され台湾は国連安全保障理事会の常任理事国の座を失い。中国に同ポストを奪われた。

当時の佐藤栄作政権は中国の国連加盟に賛成するものの台湾の議席追放には反対することを基本方針に置き、「二重代表制」や台湾の追放反対などに動いたが力及ばず敗れ去った。

「敗れたりといえども、私は、我が日本国は国際社会において信義を守り通した、また筋を通し抜いた、このことにつきましては、国民各位にぜひとも誇りを持っていただきたい」と述べた。

ところで、その<アルバニア決議>とは
1971.10.25に採択された第26回2758号決議
「国際連合における中華人民共和国(中国)の合法的権利の回復」を指す。
長年にわたる国連における「中国代表権問題」にかかわる内容であり、これにより、中華民国(台湾)は国連安保理常任理事国の座を失い、中国が国連安保理常任理事国と見なされた。それによって台湾がもつ安保理常任理事国の権限を中国が継承したと解釈されている。「蒋介石代表を国連から追放する」と掲げた本決議に抗議する形で、台湾は国際連合を脱退した。

つまり、日本もアメリカも台湾を見捨て、中国を「国連安保理常任理事国」と認めたのである。

その後、アメリカは極秘裏に中国との国交を模索し、ニクソン大統領は日本が知らないうちにことを進め、1972年5月中国と国交を結んだのである。日本は米国に遅れること7ヶ月、田中角栄首相が訪中、日中平和条約を結んだ。

人口14億の中国の将来を無視できなかったのである。

中国側が自らを「唯一の合法政府」で「台湾は中国の一省」と主張した。これをまともに受け、「はい、その通りです」と全面受ければ、米国も日本も血も涙もない国とのそしりを受けてしまう。そこで、米国が苦肉の策として考えたのが『台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であると主張している』ことを「認識」した。とし、同時に、台湾問題の平和的解決に関心を抱いている点についても念を押したのである。日本もほぼ同様の認識で「中国政府の立場を十分理解し、尊重する」とし、日中平和条約を結んだ経緯がある。

中国の常套手段だが、米側が「一つの中国」を認めたものだ、と重視し既成事実化を図る。一方米国はこれらの解釈を補完する意味で、中国による武力統一に釘をさし、台湾への武器供与について中国に指図を受けないことを念頭に「6つの保証」などを定め、今も中国の詐術的論理とのせめぎ合いの中にある。

米国のいう6つの保証とは

  1. 米国は台湾への武器販売終了日を設定しない
  2. 米国は台湾関係法の条件を変更しない
  3. 米国は台湾への米国の武器販売について決定を下す前に、事前に中国と協議することはない
  4. 米国は台湾と中国の仲介をしない
  5. 米国は、台湾の主権についての立場を変えることはなく、問題は中国人自身によって平和的に決定されるものであり、台湾に中国との交渉を開始するよう圧力をかけることはない
  6. 米国は台湾に対する中国の主権を正式に認めない

というものである。日本と中国にはない。

この国交正常化以降、日本から中国へ総額3兆円を超えるODA(政府開発援助)が実施されている。まだ発展途上国であった時代は理解できたが、経済大国になってからも続ける能天気にはバカを通り越しあきれ返ったものだ。

日本と米国との違いは、米国の「6つの保証」や武力統一を阻止する法的枠組みを日本が欠いていることである。

今、「日本版台湾関係法」の制定を向けた研究が進んでいるようだが、あまりにも遅すぎる。弁護士会も日本学術会議も中国に甘く、どういうわけか日本政府には非協力的である。

沖縄県政を含め、日本の左派知識層にマスメディアの反日が日本の弱点である。あうんの呼吸で分かりあえる日本人の多くの保守層は静かな人々である。その反面、声を大にして叫び世論形成するのが左派と言われる革新層である。

今、安倍国葬でこれら声の大きい反日グループのお蔭で、アメリカではないが国論を2分する分断が起きているような様相だ。これこそが中国が望む日本の姿である。ロシア、北朝鮮を含む、いや韓国も入れていいかもしれない。かつてない東アジアの緊張状態が続く中、日本の分断は中国の思うつぼである。

今こそ結束すべきが逆の状態である。なぜ政治家はそれが見えないのか。地球を俯瞰することができない「井の中の蛙」としか言いようがない。

一つの中国論に対して、「中国の立場を十分理解し尊重する」という玉虫色の理解で何とか「のりしろ」を残したが、アメリカがペロシ議長をはじめ次々に重要人物を訪台させるなど、台湾を見捨てない姿勢で既成事実を積み上げているように、日本も「日本版台湾関係法」の早期制定や有事の際の邦人救出を話し合うなど、いい加減、中国の顔色を伺うのをやめ、主体的な動きを加速しろと言いたい。

日中国交正常化50年。決して諸手を上げて祝える状況ではないことを肝に銘じると共に、これを機に戦後を脱却、過去に引きづられた歪な日中関係ではなく、ニュートラルな関係からの第一歩を踏み出すべきである。

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