安楽死を求めた ジャンリュック・ゴダール
Vol.3-9.16-976 安楽死を求めたジャンリュック・ゴダール
2022.09.16
“ 安楽死巡り「国民対話」” という小さな新聞記事があった。
もともと安楽死には強い興味があり読んで見たら、驚いたことに、「13日に死去した仏映画の巨匠、ジャン=リュック・ゴダール監督はスイスで自殺幇助を受けた」とあるではないか。
死去が報じられたのが14日の朝刊だった。その記事には一行も自殺幇助に触れていなかったので漫然と読み過ごしたが、“ 自殺幇助 ” で一気にゴダール監督に興味を持った。
ゴダール氏については「高松宮殿下記念世界文化賞」のイメージと、たった1本しか見ていないジャンポール・ベルモンドの「勝手にしやがれ」の印象だけである。
改めていろんなニュースを探してみた。
ゴダール氏は世界三大映画祭全てで最高賞を受賞している。
ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭、カンヌ国際映画祭はそれぞれSNSで彼を追悼している。
カンヌ国際映画祭は、審査委員長を務めたこともある、ケイト・ブランシェット氏が同映画祭を代表し
「映画を前進させ、限界を押し広げ、映画の定義と再定義を探し続けた芸術家」と賛辞を送った。そして「彼の働きなくして映画に現在の姿はなく、私たち映画祭は深い悲しみと限りない感謝、深い尊敬の念とともに、かの芸術家に最後の敬意を表します」と結んでいる。
また2001年から2014年まで同映画祭代表を務めたジル・ヤコブもTwitterで
「ジャン=リュック・ゴダール、映画界のピカソ。直感と閃光、言葉とイメージ、音と色で遊び時代の先を行った。難解で魅惑的な、道しるべとなるような映画を即興で作った。世界中の映画が孤児になってしまった」とゴダールの死について述べている。
世界文化賞受賞には日本に訪れ、インタビュー嫌いのゴダール氏が1時間もインタビューに応じている。
歴史的な会見となったのだが、その中で、「私は少し反逆的な人間かもしれない。普通の人がしないことをするのが好きだ。映画だとそれができる」と語っている。確かに鬼才というイメージだ。
俄然、ゴダール作品が見たくなった。
とりあえずブリジッド・バルドー主演作の「軽蔑」からか。反逆児、鬼才、ヌーベルバーグの旗手に敬意を表しながらを楽しんでみたい。
ところでフランスの安楽死をめぐる「国民対話」記事に戻るが、議論をつくし来年末までに新たな法制定を目指すという。
欧州ではオランダ、ベルギー、ルクセンブルク、スペインが安楽死を合法化している。スイスは自殺幇助を容認している。今も「死の自決権」を求めてスイスに渡航する人が多くいる。ゴダール氏もその一人だった。
昨年、ある日本人がスイスで安楽死の許可を受けこの世を去った。
その日本人に診断書を書いた医師は、死にたいと訴える患者でさえも生かすことを是とする医療界に違和感を抱いていたといい「安楽死の議論に一石を投じることができれば」と考え、手を貸したと話す。
世論調査でも「不治の患者の苦痛を救うため、本人の要請に基づく安楽死を認めるべきだ」と考える人が93%に達している。
安楽死や死ぬ権利の是非について、日本での議論は平行線のままである。「日本では死がタブー視されすぎている」と感じていると語った。
確かに難題ではある。しかし高齢化社会において末期医療は大きな社会問題である。安楽死は人間が求める最後の贅沢ではないかと個人的には思う。
難題を避けず、今こそ本格的議論を進めるべきである。強く要望したい。
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