リーダーなき戦争とプーチン残酷の後
Vol.3-11.1-1022 リーダーなき戦争とプーチン残酷の後
2022.11.01
ロシア外務省は10月29日、ウクライナ産穀物の黒海からの輸出を再開させたウクライナ、トルコ、国連との4者合意の履行を無期限で停止すると表明した。
穀物輸出ルートの「安全確保」を担ってきたロシア黒海艦隊が、ウクライナ軍のドローンで攻撃されたことに対応する措置だという。
この攻撃に対してのウクライナのコメントはない。ただ、同国のゲラシチェンコ内相顧問は、クリミアの黒海艦隊の停泊所で爆発が起き、フリゲート艦「アドミラル・マカロフ」など複数の艦艇が損傷した情報があるとSNSで発表しただけだ。
爆発の確認はしているものの、攻撃によるものか、事故かも不明。考えようによっては輸出を止めたいがために、爆発を装った可能性は否定できない。
即座に、パトルシェフ露農相は「ロシアはウクライナに代わり最貧国に穀物50万トンを無償提供し、望む国にも安価で供給する準備がある」と表明した。
爆発の後、間髪を入れずそんな声明を出す。そもそも輸出合意に不満を持っていたロシア、合意を無効化してウクライナ財政を悪化させる狙いや、自国産穀物の輸出を増やして途上国などからの支持を拡大する思惑が見え隠れする。ウクライナが大事な輸出艦隊を爆破する愚を犯すなど考えられない。
自作自演の可能性が大であると見なければならない。
過去にプーチンは、チェチェンを侵略する口実をつくるために、深夜に自国のマンションを次々爆破しチェチェンの仕業にでっち上げるなど、平気でやる人間である。
これで穀物輸出が滞れば、ウクライナはもちろん、再び途上国は食料難に陥る。さらに食料高騰をも招く。自由陣営を揺さぶり、混乱に陥れることにより自軍立て直しの時間稼ぎをする。ロシアの常套手段だ。
ロシアと欧州を結ぶ天然ガスパイプラインの損傷も英国の特殊部隊だと証拠なく罪を着せ、混乱させるのは同じ目的だ。
さらに恐ろしいことが起きている。
ロシアが占領したウクライナ南部のへルソン、ザポロジエ両州で、兵隊でもない一般の現地住民を市の防衛のために、民兵組織「領土防衛隊」の編成を発表した。
ウクライナ国民を兵隊に仕立て上げ、ウクライナ軍と戦わそうというのである。市民が脱出しようとしてもロシア軍の占領下にあり脱出は不可能。ウクライナ軍の攻撃に対する「人間の盾として利用する」というのである。
占領地域では店舗、住宅に拘わらずロシア兵による略奪も起きており、やりたい放題の無法ぶり、軍の規律など見る影もなく、さながら凶悪強盗の様相である。
30万の予備役の動員が完了したと、ショイグ国防省はプーチンに報告した。平均年齢35歳としか分からず、刑務所の服役者か?その素性は不明である。完了したとしなければロシア国民の不安を押さえられないという国内事情もあるのだろう。
いずれにしても、内情はかなり厳しい。ウクライナ住民を民兵にするなどもっての他、その焦りから人道危機をも引き起こそうとしているのだ。
これが戦争と言えばそれまでだが、ここまでくれば、過去の戦争の常識では計れない成り行きと結末を迎えるかもしれない。
アメリカが強いリーダーとして君臨していた時代。善きにつけ悪しきにつけある程度の結果は予測できたものだ。しかし、アメリカが絡んだ戦争でこれほどまでに先が読めない戦争とは、、、全てが中途半端なのである。
ロシアは戦争ではなく、「特別軍事作戦」といい、バイデン大統領は「戦争には直接的に関与しない」と宣言。NATOも加盟国でないことを理由に直接的関与を避けた。
すべてが中途半端、小国ウクライナだけが、自由陣営の物的支援を得ながら、命がけの戦争を強靭な精神力で戦っているのが現状である。
ゼレンスキー大統領の「自由と民主主義を守り抜く」と世界に訴え、自由陣営を味方に付けたことで、支援を受け、戦う原動力となった。
民主主義陣営の結束が乱れない限り、ロシアに負けることはないと思うが、「窮鼠猫を噛む」ではないが、プーチンが “ 窮鼠 ” になった時の「核使用」と、長引くことにより自由陣営の結束の乱れだけが心配である。
自由陣営の乱れとは、イコール・ウクライナの敗北である。自由民主主義の敗北は、世界が混沌へと向かう序章となり得る。その先には、中国がロシアと北を抱き込み、見たくもない恐ろしい世界が誕生するかもしれない。
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