北方領土とクリミア半島

世界,日本,雑記

Vol.3-11.6-1027  北方領土とクリミア半島

2022.11.06

ウクライナ外務省のオレグ・ニコレンコ報道官が産経新聞の単独インタビューに応じた。

ニコレンコ氏は日本のウクライナ支援に感謝を示しつつ、両国がともにロシアに不当に領土を占領されているとして、北方領土問題の解決に向けて2国間の協力強化を呼びかけた。

ウクライナのクリミア半島が略奪されたのが2014年、8年が経つ。

略奪は、ロシアの巧みな侵略と戦術により一方的にクリミアとセヴァストポリにおける住民投票、独立宣言、併合要望決議、そしてロシアとの条約締結という段階を踏んで併合宣言が行われた。

国際連合やウクライナ、そして日本を含む西側諸国などは主権・領土の一体性やウクライナ憲法違反などを理由としてこれを認めず、併合は国際的な承認を得られていない。

今、まさにクリミア半島を含め、南部、東部の領土をとり戻すべくロシアとの戦いの中にある。

一方日本は、第二次世界大戦末期の1945年(昭和20年)日本がポツダム宣言を受諾した後、ソ連は日ソ中立条約を破り、ソ連軍が千島列島から南下を続け、択捉、国後、色丹、歯舞群島を不当に占拠した。未だ返還されていない。

北方領土は、我々の父祖が汗水を流して築いた地であり、一度も外国の領土となったことがない日本固有の領土である。

日本は、サンフランシスコ平和条約により、ポーツマス条約で獲得した樺太の一部と千島列島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄した。当然だが北方四島は千島列島の中に含まれていない。別の島である。

ウクライナと違い、戦後77年が経過している。完璧に打ちのめされた日本、敗戦当初はすでに軍隊も日本国民すべてが戦争に疲れ、かつアメリカ、中国、ロシアなど連合国を相手に領土をとり戻す軍事力すら奪われていたのである。

その後、領土返還交渉は何十回と繰り返すが、軍隊を持たない日本にソ連はまともに交渉などする気などなく70年が過ぎたと言っていい。

揚げ句の果てにプーチンは、自らの任期延長と「領土の割譲」を禁止する条文も盛り込む憲法改正をしたのだ。

適当に遊ばれて77年。ウクライナとは歴史環境がかなり違う。

ゼレンスキー大統領が10月7日に「ロシアが不法占拠している北方領土を含む、日本の主権と領土の一体性を支持する」と表明したことに関して、「日本をめぐる状況は領土を占領された現在のウクライナと酷似している」と指摘。

北方領土問題も、「国際法が侵害された事例であり、解決が必要だ」と主張した。

ウクライナは現在、2014年にロシアに併合された南部クリミア半島の奪還に向けた国際会合「クリミア・プラットホーム」を主導しているが、同会合で得た知見を「北方領土問題の解決に活用できるのではないか」と述べ、両国間の協力強化を呼びかけた。

ニコレンコ氏の言う通りで本来なら渡りに船、積極的に共闘したいところだ。

ジイの感じるところだから推測にすぎないが、ウクライナは戦争の真っ只中にある。クリミアを略奪され8年が経過するものの、奪還への戦は熱く一歩も引く気配はない。

一方日本、実にありがたい話で、強い見方ができて喜ぶところではある。しかし、日本国民の熱は決して高くはない。戦後生まれが85%を占めている日本。恥ずかしいことだが、北方領土すら知らない人、ましてやロシアに不法占拠されている事実さえ知らない人間もいる。

令和4年8月10日、岡田直樹内閣府特命担当大臣・北方対策本部長が就任した。過去、北方領土に関わった経験はない。

確かに国際会合「クリミア・プラットホーム」での知見を「北方領土」に活用できるかもしれない。

しかし、ニコレンコ氏には申し訳ないが、日本の領土奪還への温度差は悲しいかな相当な開きがある。ウクライナの協力の呼びかけは本当にありがたいことだ。しかし、日本がウクライナに応えられるだけの熱量があるか心配である。返ってウクライナの熱意を冷やす役割を演じるとしたら両国にとってプラスにはならない。

相手は命をかけた戦いの中にある。岡田特命担当大臣はその辺をよく理解した上で心して協力強化に応えなくてはならない。

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