米中間選挙が示したアメリカの民主主義

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Vol.3-11.21-1042  米中間選挙が示したアメリカの民主主義

2022.11.21

米中間選挙の連邦議会下院選で、野党・共和党が過半数の218議席を獲得し、4年ぶりに多数派に返り咲いた。

BBCがアメリカで提携する米CBSニュースによると、共和党は下院(定数435)で過半数の218議席~223議席を獲得する見通しだと16日夜、伝えた。

米中間選挙

<上院>

民主党

共和党

50

49

定数100議席、改選対象35議席

<下院>

民主党

共和党

209

218

定数435議席、全議席改選

上記の結果を見る限り、与党・民主党に対して僅差での勝利となるが、今後2年間、ジョー・バイデン大統領の政策を阻止するには十分なものとなった。

一方、民主党は上院での過半数維持を確実としており、上下両院で支配党が異なる「ねじれ」が生じることになる。

バイデン氏は潔く、16日夜、次の下院議長になる見通しの共和党のケヴィン・マカーシー下院院内総務に対し、共和党が下院で過半数を獲得したことについてエールを送った。

「政治家が、自分たち国民にとって重要な問題に注力し、自分たち国民の生活を改善してくれることを望んでいる」

「そして私は共和党員だろうが民主党員だろうが、国民のための結果を出すために私と一緒に働いてくれる人となら、誰とでも働くつもりでいる」と述べた。

新議会は来年1月3日に始動するわけだが、選挙結果が出るまでのプロセスがどうもよくわからない。

中間選挙の投票日が11月8日だった。最終的にほぼ判明したのが16日、8日が経っている。

日本の選挙に慣れきった者にとって、選挙結果はその日に出るものと思っている。

2年前の大統領選挙でもそうだったが、トランプ大統領は選挙結果に不正があったとして認めなかった。民主主義の先進国を誇るアメリカが何故選挙結果に一週間以上もの時間や、疑惑が生じるのか、どうも納得がいかない。

今回の遅れの原因の1つに投票率の高さがあるという。今年の中間選挙には有権者の約47%に当たる1億1234万人超が投票したとされる。一部の州では記録的な高さになったというが、それがどうしたというのだ、

1、郵便投票と期日前投票が多く、その集計に時間がかかっている、ともいう。
さらに、郵便投票の扱いは州によって異なる。ペンシルベニアなど8州では、投票当日にならないと処理を進められないという事情。

また、メリーランド州には、投票翌日の午前10時まで開票できない規定がある。投票日前に開票作業を進められるのは10州だけというように、州によってバラバラとはさすが合衆国だ。

投票日の後に届いても、投票日に投函されたなら有効票として集計するのは19州に上る。それらの州は、郵便投票が届くのを待つ期間を設定している。一方、アリゾナ州は、投票日までの到着分しか認めていないが、驚くことなかれ、最終集計を出すまでに最大20日間かけられているというのだ。何それ~と言いたくなる。

30秒早く電車を発車して謝罪する日本では考えられないようなシステムだ。

2、再集計と決選投票というシステム
僅差の接戦となった場合や、州によっては候補者から要請があれば再集計が実施される。これも、結果確定が遅れる原因となる。

再集計の要請が可能なのは41州と首都ワシントン。22州では条件次第で自動的に再集計となる。

ジョージア州の上院選は、来月6日に決選投票が行われる。州法で、当選者は有効票の50%以上を獲得していなければならないと定められているためだ。同州では2020年の上院選でも決選投票となったとこともある。

3、民主主義の根幹である選挙に向き合う姿勢が州によっても違っている。多様な人種が存在するアメリカならではの雑多な国民性だ。

最も遅れが目立つのがアリゾナ州。同州では投票の圧倒的多数が郵便によって行われた。同州当局は選挙前、集計には最大12日間かかるとしていたが、投票翌日の9日時点でも数十万票が未集計だった。

ネバダ州でも未集計の票が多く、ラスベガス・クラーク郡では何万もの票がまだカウントされていない。という始末だ。

まあ、アメリカがこの状態では南米ブラジルのボロクソ大統領が、いや失礼、ボルソナロ大統領が選挙結果をなかなか認めなかったというのも肯ける。

宮家邦彦・キャノングローバル研究所主幹が、米国中間選挙が行われる前の今月8日、面白いことを言っていた。

「今月8日には米中間選挙が行われる。下院はともかく、上院は接戦らしいが、問題は『誰が勝つか』よりも『誰が選挙結果を認めるか』になりつつあるとすれば、アメリカ民主主義は急速に劣化していくだろう」とブラジル大統領選になぞらえていたが、今回、バイデン氏が潔く結果を認め共和党にエールを贈った。このことだけを見れば、宮家氏の不安は杞憂に終わった。しかし、アメリカ民主主義は自信をもって健在であると言い切ることができるのか。

アメリカは今、大きな揺らぎの中にあるような気がする。

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Posted by 秀木石