帰ってきた天才棋士
Vol.3-11.24-1045 帰ってきた天才棋士
2022.11.24
ついに帰ってきた “ 天才棋士 ” 羽生善治。
11月22日に将棋の藤井聡太王将の挑戦権を争う第72期王将戦挑戦者決定リーグの最終一斉対局が22日東京・千駄ヶ谷の将棋会館で指され、羽生善治9段が豊島将之9段に勝ち、リーグ成績6勝0敗で1位が確定し、藤井王将への挑戦権を獲得した。
久し振りに表舞台に帰ってきた天才棋士・羽生善治9段に、往年の将棋ファンは胸踊る思いではないか。
思えば2018年度の第31期竜王戦七番勝負で挑戦者の広瀬章人八段を相手にフルセットの上、3勝4敗で敗れ1990年度の棋王獲得以来27年ぶりの無冠となった。
あの時の寂寥感は口では言い表せないものだ。長い間、浴び続けた栄光の光があまりにも強かったがために、たかがタイトルを失くしただけで、将棋界から消えてしまいそうな寂しさを感じたものだ。
あれから4年、まるでスターの入れ替えが行われるように現れた若き棋士 “ 藤井聡太5冠 ” が時代の申し子のように現れ将棋界の話題を独占している。
その藤井5冠との七番勝負が来年1月8日、9日の両日静岡県掛川市で第一局が指される。
新年にふさわしい夢のようなタイトル戦は大いに盛り上がることは間違いない。
羽生善治9段にとっては、前人未到の獲得タイトル通算100期がかかる。
この3、4年で将棋界は藤井5冠の圧倒的強さに席巻され、羽生9段が成し遂げた全7冠を制覇したように藤井5冠が全8冠をいつ制覇するかに注目が集まる。
来年1月に行われる羽生9段と藤井5冠のタイトル戦はまさしく、これからの将棋界を担う若武者と、今まで将棋界を担ってきたレジェンドの夢の舞台となった。まるで、新旧スターの “ 仕組まれた祭典 ” のような新年対決となった。
挑戦者・羽生善治9段は、時代の違いこそあれ、旋風を巻き起こした初代寵児である。
1996年2月15日の新聞である。
<若き覇者 新時代を開く 羽生七冠達成>
将棋界の七大タイトルすべてを独占する羽生善治七冠王が14日誕生した。強さと新しいスタイルを将棋界に持ち込んだ若き天才棋士は、ジャンルを超えた幅広いファンに支えられる。淡々と達成した前人未到の快挙に、賞賛と喜びの声が広がった。
初手から終盤に至るまでどんな手が飛び出すか分からない。スリリングで華麗な棋風は過去に例がない。
「将棋は人生が表れるものではなく技術がすべて」とドライに言い切る。
「多少勝負のリスクをおかしても、後世まで伝えられる芸術的な棋譜やオリジナルな定跡を残したい」とする情熱が今日の第一人者に押し上げた。
かつては研究会を掛け持ちし、パソコンを駆使する情報化時代の申し子でもあるが、第一手に銀を上げたり初心者のような実験も辞さない。
と当時の新聞は伝えている。
今、藤井五冠の時代は「将棋AI」の時代になった。
藤井五冠にも、いろんな作家が観戦記や人物評を書いている。
当時、彗星のように現れた羽生善治棋士にも多くの作家や学者が言葉を寄せた。
英文学者・柳瀬尚紀氏は
「・・・いったいこの人をどういう言葉で言い表し、どう描写したらよいのか。もちろん天才という言葉がある。しかし天才という語もこの人には後れをとっているかもしれない。とくに最近、筆者はそう考えるようになった。
・・・《ほんとにいい形とか、きれいな手というのを指せたときというのは、駒が笑うんです・・・ほんとににっこり笑ってくれるような感じです。》事実、この人が対局中にふっと笑うのを筆者は間近に目撃している。それは決して不気味な笑いではない。冷笑でも苦笑でもない。脳裏の超高速度の読みの中で展開される膨大な変化手順で、この人にしか見えない一つの美に出会った瞬間が、その笑みに自ずと顕現するのではあるまいか。かすかに唇がゆがむその笑みには、ある種のぬくもりすら見て取れる。・・・」
全盛期には「羽生マジック」とも評された。
何よりも羽生前竜王は「将棋がものすごく強い人」にとどまらない、将棋という競技の枠組みを超えて人々が関心を寄せる存在である。後ろ髪の寝ぐせ、センスを顔の前におく仕草も絵になる棋士であった。
永世竜王(資格)、十九世名人(資格)、永世王位(資格)、名誉王座(資格)、永世棋王(資格)、永世王将(資格)、永世棋聖(資格)
通算優勝回数152回、公式戦優勝回数144回、タイトル獲得99期、タイトル戦登場136回、同一タイトル戦26回連続登場(王座)、同一タイトル獲得通算24期(王座)、一般棋戦優勝回数45回は歴代単独1位の記録である。
今も厳然として将棋界の顔であることは間違いない。
12月13日、世界バンタム級王者の井上尚弥4団体統一戦と、正月8日、9日の羽生VS藤井五冠のタイトル戦、ワクワクするような年末年始のビッグエベントだ。
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