中国宇宙ステーションの脅威
Vol.3-12.2-1053 中国宇宙ステーションの脅威
2022.12.02
中国が宇宙ステーションを完成させた。驚くべき技術力の進化である。宇宙ステーションの準備を始めてからわずか11年少々で完成させたことになる。
新聞によれば、
「中国は29日午後11時8分、有人宇宙船『神舟15号』を打ち上げ、独自に建設を進めてきた宇宙ステーション『天宮』にドッキングした。飛行士が天宮に乗り移り、ステーションは実質的に完成した。・・・
天宮は外国の飛行士を受け入れる計画もあり、中国は月探査など宇宙開発分野で国際的な主導権を握ることを狙っている。・・・
中国は自国の知的財産権を駆使して技術的な課題を克服したと主張し『核心的な部品の国産率は100%に達している』と説明した。・・・月面着陸機などの技術も獲得『遠くない将来に実現する』と強調した。
というのである。
月面探査については米国主導で「アルテミス計画」があるが、強力なライバルになった。というより追い越すかもしれない。
アメリカ「WIRED」という業界紙によれば、
「中国が実験モジュール『夢天』を打ち上げ、宇宙ステーション『天宮』を完成させた。この出来事は、中国が宇宙開発において米国やロシアといった強力なプレイヤーに並ぶ存在になったことを意味している。
『夢天』と名付けられた18mの実験モジュールはさまざまな科学実験を可能にし、さらに宇宙ステーションで一度に最大6人まで収容できるようになった。現在は司令官のチェン・ドン(陳東)と、ほか2名の宇宙飛行士が滞在している。
この宇宙開発計画では月での基地建設や月探査機の配備に加え、火星に新しい着陸船と軌道船を送ることが計画されている。
『これは中国の宇宙開発の取り組みにおいて重要な成果です。ISS(国際宇宙ステーション)の運用の残り期間はそう長くありません。地球を周回する宇宙ステーションは、中国のものだけになるかもしれませんね』と、北京航空航天大学とミシシッピ大学の宇宙法の教授であるファビオ・トロンケッティは語る。
中国の計画では天宮の運用期間は10〜15年になる予定で、運用期間を延長する可能性もあるとトロンケッティは説明する。米国、欧州宇宙機関(ESA)、ロシア、その他のパートナーが運営するISSは天宮よりはるかに大きいが、早ければ2030年にも引退する可能性がある。
人類の宇宙探査と有人宇宙飛行の歴史では、一貫して米国とその同盟国(欧州、カナダ、日本を含む)、そして近年は宇宙開発が衰退しつつあるロシアが宇宙関連の活動を独占してきた。そして現在、中国は米国とロシアが数十年前に成し遂げたことに追い付いたのである。それも自力で素早く、従来の設計よりいくらか改良を加えたかたちで完成させた。
2機あるうちテスト用宇宙ステーション1機の打ち上げを含め、中国が宇宙ステーションの準備を始めたのは2011年のことだった。それでも『天宮』の完成にかかった期間は、わずか1年半である。
ISSよりは小さいが、シンクタンクであるランド研究所の航空機と宇宙船の技術者であるヤン・オズバーグは、『内部には住みやすさ、ひいては宇宙飛行士の生産性の改善につながる滞在を快適にする機能がいくつか備わっています。よりすっきりとした空間で配線を少なくするために無線通信を活用しています。それに宇宙空間で電子レンジも使えます』と説明した。
中国の宇宙ステーションはISSと同じように、ほかの国が実験に使用したり、将来的には宇宙飛行士が滞在したりできるような提携の機会を設けている。すでにサウジアラビアの研究機関が実験に使うことが決まっている。また、欧州の研究機関やほかの国の研究者も、ガンマ線バーストから宇宙医学、原子時計までさまざまな実験のテーマを提案している。
・・・ISSと中国の宇宙ステーションとでは重視している点が異なる、・・・。中国の焦点は、おそらく同国のリーダーシップと、他国の宇宙機関や企業に頼る必要のない発展具合を示すことにあるのだ。
米航空宇宙局(NASA)は天宮の提携先にはならない。NASAは2011年に議会で可決された通称「ウルフ修正条項」によって、提携を禁じられているからだ。この条項は国家安全保障上の懸念から、米国の機関が中国の企業や政府機関と協力することを禁止している。
これは冷戦時代NASAとソ連の機関が、政治的な問題にかかわらずしばしば協力していた前例からはかけ離れた政策である。
天宮の完成は、中国がもはや宇宙開発の新興プレーヤーではなく、数少ない強力なプレイヤーになったことを示している。そしてほかの大国と同様に、中国も宇宙ステーションの維持に伴うゴミにどう対処するかという問題に向き合わなければならない。
多くの国は再利用可能なロケットを使用するか、燃料を残したロケットを制御して大気圏に再突入させることで廃棄処分している。こうすることで、衛星や宇宙ステーションに危険が及ぶ地球低軌道にロケットが滞留したり、制御不能になって地球に落下したりすることがないようにしているのだ。
・・・責任ある行動を求める国際法はないものの、中国は国際連合の定める宇宙損害責任条約の締約国だ。これにより、ロケットが損害をもたらしたり人を負傷させたりした場合は、国が責任を負うことになると、超党派のシンクタンクのブライアン・ウィーデンは説明する。
中国には、米国やロシアと同じように宇宙でも高い軍事能力をもつ。だが、宇宙ステーションの開発はこれには含まれないと、ロードアイランド州ニューポートにある米海軍大学校の国家安全保障問題の専門家であるデイヴィッド・バーバックは指摘する。ISSやミールと同じように天宮には軍事的な目的はなく、主に科学的な研究を実施するために設計されている。
『天宮にはものを掴めるアームが付いており、理論的には米国の衛星を掴むことができます。しかし、そのために巨大な宇宙ステーションを操縦するよりも、小型でステルス性の高い衛星を開発するほうがずっと賢明な選択でしょう』と、バーバックは語る。
天宮の完成は米国にとって別の地政学的な意味合いがあると、ランド研究所のオズバーグは考えている。『わたしたちは、もはや自分たちが宇宙開発の強国であると考えることはできません』と、オズバーグは言う。
『これは米国と同盟国が後れをとらないようにしなければならない、という警告です。宇宙ステーションの運営や宇宙開発を進める方法は複数あります。人類の宇宙への進出の方向性を示す主導者が、中国のような権威主義的な国家ではなく、わたしたちの国であってほしいと思います』
と記している。
国際司法裁判所の判決ですら、紙くずとしてしまう中国である。こと宇宙においてすでにゴミのポイ捨てで迷惑がかかっている。今後、宇宙大国として国際秩序に従うのか国際社会は大きな問題を抱えた。
米国主導で「アルテミス計画」が始動しているが、中国に宇宙覇権を許せばとんでもないことになる。日本を始め関係国は宇宙計画の抜本的見直しが必要となろう。
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