数学者 日本を憂う

日本,,雑記

Vol.3-12.12-1063  数学者 日本を憂う

2022.12.12

数学者である藤原正彦氏の最近の著書、「日本人の真価」というエッセイ集、ユーモアと機知にとんだ内容で面白かった。かつては日本人に活を入れるために書かれた「国家の品格」は大ベストセラーになった。

その藤原氏の新聞への寄稿があった。
「正義をふりかざす日本人」(産経新聞12.11

日本人は正義をふりかざすのが大好きになったらしい。国会ではここ半年ほど、どの政治家が旧統一教会とどんな関係があったか、大臣たちの領収書や政治資金に関する不始末などに口角泡をとばしている。・・・

国会審議の中身の無さには呆れるが、政治の中枢を担う有能な人材として選ばれたはずの大臣が片っ端から馬脚をあらわすのを見ると、政治家の劣化を思い知らされる。

・・・どのスキャンダルもケシカランことではあるが、一言で言うとさざ波ほどの出来事ばかりだ。国益や国防にほとんど影響を及ぼさぬどころか、どれも10年後にはすっかり忘れられてしまうような事柄である。国会やメディアがこのような些細なことに正義の旗を振り回し、これに国民が共鳴して悲憤慷慨する、というのが近頃の日本と言って言ってよい。

正義とはイヤなものだ。これに拘っていると、大きな問題が一向に解決しない。

・・・とりわけロシアによる19世紀的なウクライナ侵攻が、この21世紀に恥ずかし気もなく行われるのを目の当たりにし、北朝鮮のミサイルや中国による尖閣や台湾への侵攻により、日本が戦争に巻き込まれる脅威が現実化しつつあるというのに、自主防衛力の飛躍的向上すら遅々として進まない。敵を攻撃する力がなければ自分を守れない、などということは、私などは幼稚園の頃から知っていた。そもそも国防を担う自衛隊はいまだに憲法9条違反の非合法組織として置かれたままである。

国民が「スキャンダルに戯れているヒマはないはずだ」と怒り出さないのは、国民までもが事の軽重を判断できなくなっているからだろう。自ら考えることをせず、メディアやSNSなどのもたらす情報に全面依存しているからである。

小泉竹中政権の郵政民営化がその典型であった。・・・それまで郵政事業は黒字で税金などの投入もなく、民営化する必要などまったくなかったのに、郵貯と簡保の350兆円に狙いをつけたアメリカが、日本に執拗かつ強力な圧力を加えた結果であった。

かつては郵貯と簡保の100%近くは日本国債で運用されていたが、今や郵貯で1/5、簡保で1/2ほどに減らされ、多くが米国債など外国への投資に向けられている。アメリカの思い通りになった。日本人が汗水たらして貯めた金が国内投資に回らないから、経済成長できないし、地方が疲弊する。

戦後に限ってもGHQの洗脳工作により、給食をパン食とし「米を食べるとバカになる」などというまことしやかな嘘を広めたため、日本の食文化はご飯と味噌汁からパンと牛乳へと一変し、日本の生命線たる米作をはじめとする農業は大幅に潰された。米国の余剰農産物対策だった。

<活字離れの致命的打撃>

日本人が大事なことに騒がず、つまらぬことにいきり立つ、というのは雑多な情報の中から本質的なものを選択するのが不得意になったということにある。

戦後、アメリカニズムがわが国導入され、幸せを最大にするには自由を最大にすること、自由を最大にするには選択肢を最大にすること、という考えが主流となった。この中で人々は途方もない数の選択肢を前に、絶えず決断を迫られている。

・・・人々は選択が辛いからすぐにメディアやSNSなど手近な情報や見解に頼り、それらに流されてしまう。流されないためには、自分の頭でじっくり考える習慣や考えの土台となる正しい知識と教養、そして惻隠など豊かな情緒が必要である。

国のリーダーたる政官財学やメディアにはこれに加えて大局観や歴史観も要求される。これらはすべて読書を通して得られる。世界で進行中の活字離れがこれらに対する致命的打撃となっている。にもかかわらず、読書文化の衰退が人々の知的衰退につながることを優える声すら、正義をふりかざす声にかき消され聞こえてこない。

民主主義は「国民一人一人が成熟した判断を下せる」という、どの国にとっても達成困難な前提の上に成立している。

大半の大学生が新聞さえ読まないとうほど活字文化が衰えた昨今、民主主義は急速にポピュリズムに接近してきている。年数をかけず同義となるだろう。

と警鐘を鳴らす。

藤原氏はことあるごとに警鐘を鳴らしてきた。ゆとり教育も、文科省が英語教育を小学生の導入した時も、「一に国語、二に国語、三、四がなくて五に算数」と昔から日本人が重要視してきた「読み書きそろばん」を、特に小学校教育では大事であると説いてきた人物である。

ご本人は猛勉強してアメリカに留学、アメリカの大学で助教授まで務めた人物である。

ある雑誌で語っている
まずは母国語である国語を、強制的でも画一面でもしっかり叩き込むこと。漢字を覚えさせることです。小学校の英語、パソコン教室は直ちにやめないといけませんね。小学校から英語なんかやっていたら、日本から真の国際人がいなくなります。国家的損失です。私が数年の海外生活を通して痛感したのは、東西の名作名著や日本の文化や伝統に精通していることが、流暢な英語を話すこととは比べものにならないほど重要ということでした

こんな方が文科省の大臣になったら面白いだろうなあ。

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