停戦を口にする背景

世界,日本,雑記

Vol.3-12.28-1079  停戦を口にする背景

2022.12.28

ロシア国防省は26日、エンゲリス空軍基地にウクライナ軍のドローン攻撃があったと明らかにした。

エンゲリス空軍基地には今月5日続いて2度目である。ただウクライナは無暗に刺激したくないのか、一連の露基地での爆発に関与したか明らかにしていない。

実はそうではない。あるジャーナリストの話では、
「ウクライナは米政府との約束で、供与されたロケットシステムを使ってロシア領を狙うことはない」というのだ。したがって表だって攻撃したとは言えないという理屈になる。

エンゲリス空軍基地には核兵器搭載可能な戦略爆撃の「ツポレフ95」や「ツポレフ160」が配備されているので、損傷を受ければ米露の核戦力の均衡にも影響する。

この状況の中、先日、ゼレンスキー大統領が危険を冒して訪米し、地対空ミサイルシステムの「パトリオット」を提供を受けることになった。そのことについて、プーチン氏は「もちろんたたき壊す。100%だ」と勢いが良い。

ところが、最近のプーチンには停戦に絡む話がよく出る。

25日のテレビインタビューでは、米欧と「妥結の用意ができている」と述べ、停戦の意向を示唆した。

また、ウクライナとの停戦交渉やNATOに提案した相互安全保障体制の確立について「ロシアは全ての当事者と交渉する用意がある」と述べ、「彼らが交渉を拒否している」と主張している。

その前の22日の記者会見でも「すべての紛争は交渉で終わる。彼らがこの認識に達するのが早ければ早い方がよい」と指摘した。

ロシアプーチンの “ 終わり ” はロシアが「設定したすべの目標が達成」することが前提である。そんな停戦なら誰でも言える話だ。

一方的に併合を宣言したウクライナ4州の「帰属変更」や、ウクライナの「非軍事化」など、ウクライナがすべて受け入れることを前提である。その時点で停戦などありようがないし、始めから停戦の意思がないということだ。

しかし、何故?、そんな言葉を吐くのか。停戦の話し合いに応じれば、その間、ロシアは銃器補充や態勢の立て直しの時間に使えるということだろう。

ジャーナリスト・デービッド・A・アンデルマン氏の面白い話がある。

◆ シンクタンク、新米国安全保障センターで第一級のロシア軍専門家、マイケル・コフマン氏は「早すぎる停戦がもたらすのは、双方の再軍備だけだ」と語った。

「加えてロシアは現状最も不利な立場にあるので、停戦から最大の恩恵を被るのはロシアになるだろう。その後で戦争が再開される。つまりあらゆる停戦がもたらすのは、戦争の継続に他ならない。そんなことをしても戦争の根本的な問題は何も解決しない」。同氏はそう指摘した。

すでにロシアは再軍備を開始していると、専門家らは見ている。コフマン氏によれば、「弾薬の供給力」は「この戦争の最も決定的な側面」だという。「900万発の弾薬を使い切った場合、1カ月でそれを作ることはできない。従って問題は弾薬の生産率と、それを集める能力だ」と、同氏は付言した。

コフマン氏が引用した入手可能な情報が示す通り、ウクライナの前線に沿って繰り広げられてきた交戦での主要な要素である軍需品は、ロシアにおける1日2交代制から製造される。一部の工場では3交代制も敷かれている。これは「ロシア側が構成部品を持っていることを示唆する。そうでなければシフトを2倍、3倍にはしないだろう」(コフマン氏)

とはいえ停戦や交渉については、少なくともその準備を整えている人々がいる。

「交渉の機会があって和平を達成できる時には、そのチャンスをものにしなければ。きっかけをつかむのが大事だ」と、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は最近述べている。

しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領はこれを受け入れない。「ロシアに時間を与えて部隊を増強させるわけにはいかない」と、今月インドネシア・バリ島で開催された主要20カ国・地域首脳会議(G20ミット)で強調した。

「ロシア軍に再編と再軍備の時間を与えるのに加え、部隊に対する現時点での圧力が軽減される点も重要だ」。

「彼らは9カ月間にわたって苦境にある。兵力は疲弊しきっている」

「我々はロシア軍の物資と軍需品が底を突きつつあるのを知っている。戦場にいる同軍の司令官も分かっていることだ」

その後、ロシア軍にとって事態は改善していない。21日の英国防省の報告によれば「ロシア軍の防御並びに攻撃能力は依然として阻害されており、その原因は軍需品と練度の高い兵員の深刻な不足にある」という。

また仏紙ルモンドは、現地の動画と衛星画像を使用した重要な分析を実施。「ロシア軍の武器と弾薬の備蓄が、ウクライナ軍による標的を絞った攻撃を受けて大幅に減少した」ことを明らかにした。

画像からは、「2022年3月以降、合計で少なくとも52カ所に及ぶロシア軍の弾薬の備蓄拠点がウクライナ軍の攻撃を受けた」ことが分かった。これはかなりの数だ。報告によるとウクライナの前線には、ロシア軍の備蓄拠点が100~200カ所あると専門家らはみている。

問題は、ロシア軍がこうした脅威をほぼ把握しているという点だ。「ロシア軍は見たところ、米国が供与した高機動ロケット砲システム「ハイマース」の存在に適応している。戦場では、大規模な弾薬の備蓄拠点を射程外に移動させている」と、CNAの防衛プログラムの上級研究員が語った。

それは「基本的にあらゆる大規模な指揮所もしくは弾薬の集積所を、80キロの射程の外へと引き戻すことだ」と、同氏は説明する。多くの場合、その地点はロシアの領土のすぐ内側となる。ウクライナは米政府との約束で、供与されたロケットシステムを使ってロシア領を狙うことはないとしている。

ロシア軍にとって「動員兵と砲弾の応酬は望むところ」だと指摘。ロシア側の予想では、「時間と共にNATO及び西側の同盟国、ウクライナはそうした応酬を続けるのに嫌気が差す。そして最終的に交渉せざるを得なくなる。それこそがプーチン氏の狙いだ。そこは完全に確信が持てる」と、ドハティー氏は述べた。

いかなる停戦協定をプーチン氏との間で交渉後に結ぼうと、結局それは無意味なものであることが明らかになるだろう。ポロシェンコ氏が以下のように述べている。

「プーチン氏とやり取りを交わした個人的な経験から導ける要点の第一は、同氏を信用してはいけないということだ」。当然ながらプーチン氏本人は、ウクライナの支配権を握るという自らの最終的な目的にそぐわなければ、いかなる合意も守ることはないだろう。

現実問題として、

ある時点で、彼らもまたこの戦争に嫌気が差すはずだとドハティー氏は付言する。そうなると彼らの考え方は、次のように変わる可能性がある。「望んだものすべてが手に入るわけではないのかもしれない。それでも我々はドンバス地方のかなりの領域を獲得し、ロシアに編入するだろう。クリミア半島を手放すこともない」。現時点でロシア側はそのような見通しを立てていると、ドハティー氏は考えている。

同時に、停戦によって西側もまた、ウクライナへの物資の供与で急速に底を突きつつある武器庫の再建が可能になるだろう。さらに性能の高い兵器の供給もできるようになるとみられる。

しかし、一旦停止してから数カ月後、多くの人々がもう終わったことにしたいと思い始めている争いのために。果たしてまた戦争をはじめるだろうか。

このように、ジャーナリスト・デービッド氏は現状を報告した。

終ってほしいと思うが、まだ2、3年続くと見る日本の専門家もいる。

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