日本製の逆襲
Vol.4-1.13-1095 日本製の逆襲
2023.01.13
2015年、インドネシアへ新幹線売り込みを中国と競い、逆転負けした苦々しい経験がある。
そのインドネシア、2019年に完成する予定の高速鉄道が未だに完成せず、トラブルばかり、挙句の果て材料の高騰で当初の計画から4割以上も膨れ上がった。環境への関心が全くない中国、周辺住民の苦情も相次ぎ、土地収用も思うようにいかず、そこにコロナの影響から工事の遅れ等々踏んだり蹴ったりのインドネシアの中国新幹線工事である。
一方、日本の鉄道技術は150年前の明治、英国の技術指導をもとに産声を上げたが、その鉄道発祥の地英国から、この度、高速車両の製造や保守業務などを次々と受注。欧州最速を誇る次世代高速車両の受注も成功した。
新聞の報道によれば、「メイド・イン・ジャパン」復権の切り札は、新幹線で培われた高い安全性と信頼性、そして納期を遵守する誠実な姿勢。とあった。
いよいよ日本の逆襲である。
故エリザベス女王も2017年6月、英国で日本製の高速車両に乗り、「大変快適だった」と感想をもらされた。
最高速度200km。ディーゼルエンジンの発電システムを搭載し、電化区間から非電化区間にも直通運転ができる車両である。「クラス800」と呼ばれ、2017年から運転を開始している。
鉄道発祥の地である英国が、1兆円規模の大型プロジェクト事業を、独シーメンスや仏アルストムなど鉄道車両大手がひしめく中で、日本に白羽の矢がたったのはなぜか、ということだ。
鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は『ジャベリン』で日本製の耐久性が証明されたのが大きいとの見方を示す。
“ ジャベリン ” という愛称で呼ばれているのは、ロンドン英東南部アシュフォードを結ぶ高速新線の高速車両「クラス395」。2009年にデビュー。最高時速225kmを誇っている。
英国では納期の遅延が常態化していたが、クラス395は予定より半年も早く営業運転を開始した。
日本では納期を守ることが当たり前だが、現地では驚きをもって受け止められたという。
イギリスにしてそうなのか、と改めて驚くが、さらに2010年、2011年、大雪に見舞われた時も、故障することなく運行したのが信頼性を高めたようだ。
全国の鉄道の愛好家らでつくる「鉄道の友の会」の鹿山晃事務局長は「日本は東海道新幹線以来、動力を客車に分散させる電車方式を採用してきたが、欧米各国の高速列車は戦闘の機関車が牽引する方式が主流だった」と指摘。
だが、電車方式はエネルギー効率に優れ、高速時の制動も機関車方式よりも高いとされ、近年は欧州でも電車方式が主流になりつつあるという。
日本のメーカーでは、「車両の車体からモーター、電気機器に至るまですべて自社で製造できる」さらに「機密性の高いアルミ製の車体を効率的につくる独自規格をもち、製造コストを下げ競争力を高めている日立の存在感は際立っている」と強さの秘密を語った。
2021年には仏アルストムと組み、英国で約10年後の営業運転が予定されている次世代高速鉄道「ハイスピード2」の車両を受注。グループ会社の日立レールもイタリアスペインの高速車両を受注した。いずれも最高時速は360km。
嬉しいではないか。日本の鉄道技術が生かされた高速車両が欧州全土に広がろうとしている。
日本の逆襲である。
故障しなくて手軽なバイクとして東南アジアを席巻した「スーパーカブ」、「日本の中古車は故障しないと」今も飛ぶように売れているロシア市場。世界は「日本製なら安心」と信頼の高さを今でも保持している日本の技術。
バブルがはじけ、長いデフレで影が薄くなった日本だが、製造業も日本回帰の動きがある。いよいよ「日本純正」にこだわり、質の高い製品を世界に提供し、かつての「隆盛日本」をとり戻そうではないか。
産経新聞の見出しではないが、『日本製の逆襲』である。
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