おめでとう!! “ 大関・豊昇龍 ”
Vol.4-7-24 -1130 おめでとう!! “ 大関・豊昇龍 ”
2023.07.24
どの世界にも悪役はいる。
別名 “ ヒール ” というが、映画も舞台もこのヒールが主役を引き立てる。
この “ ヒール ” プロレス用語で、「悪役のレスラー」は、20世紀前半アメリカでheelが「卑劣なヤツ」という意味のスラングとして使われるようになった。ことから来ているらしい。
豊昇龍の睨み付けるような “ 目 ”、その形相は決して優しくはない。誰が見ても相撲界の “ ヒール ” 役に十分過ぎるほどはまっている。
そのヒール “ 豊昇龍 ” が、優勝決定戦で勝利を収めた瞬間、込み上げる涙をこらえることができなかった。この瞬間相撲界の “ ヒール ” は “ 愛すべきヒール ” になったのである。
先輩大関の話を聞けば、大関にかかる重圧は並大抵のものではない。あらゆる面で横綱を期待された人間であり相撲道の見本とならなければならない。その地位に近づいた瞬間を往々にして無口の相撲取りは “ 涙 ” でしか表現できないのである。
「8年前、モンゴルから千葉・柏日体高に留学したときはレスリングの選手だった。校外学習で訪れた両国国技館で大相撲の盛り上がりを見て、競技転向を決意した。叔父は元横綱朝青龍のダグワドルジ氏。同じ道を進めば比較されることは想像できたが、こみ上げる情熱に抗えなかった」(産経新聞)
そんな経歴を持つ豊昇龍、「相撲をやってよかった」とのコメントがあったが、来場所の番付はモンゴル勢が上位を独占する勢いである。
※ 横綱・照ノ富士(モンゴル)
※ 大関・貴景勝(兵庫)
※ 大関・霧島(モンゴル)
※ 大関・豊昇龍(モンゴル)
場所前には3関脇同時昇進の可能性あるか??
と大いに盛り上げたものだが、中日には大栄翔・若元春が失速、後半には多くのファンを裏切りってしまった。その穴を埋めたのが、まだまげすら結えない弱冠19歳、初入幕で幕尻の伯桜鵬である。
千秋楽、大関昇進がかかる大一番にこの若者・伯桜鵬戦が組まれた。
「髪も結えない19歳の若者に、次期大関を期待される力士が負けるわけにはいかない」
初入幕で初の千秋楽に大関目前の力士との対戦。長い歴史の中でめったにない取り組みとなった。
その伯桜鵬、結びの大一番に豊昇龍の鋭い睨みにもに負けじと睨み返したのには驚いた。
こんな若者がいたのか!、相撲界、久々に期待の星が誕生した瞬間である。お客様は拍手喝采である。関脇・豊昇龍、負ければ11勝4敗で3人が並ぶ。たとえ巴戦(豊昇龍・北勝富士・伯桜鵬)で優勝したとしても、大関昇進の道は厳しいという状況にあった。
そんなギリギリの精神状態の中、見事に投げ飛ばした。本当によくやったと言いたい。
片や、期待された若元春、朝乃山。良い体に相撲スタイルも大関・横綱を期待できる力士である。しかし、どこが違うのか。精神の違いとしか言いようがない。さらに注文をつければ、相撲道への厳しい眼、仕切りのすべてに日本人でないと出せない美しさと強さがない。若元春の礼儀正しさは伺えるが、謙虚さだけではない勝負を含め自らへ課した厳しい精神性だ。
優勝の瞬間、あの面構えの豊昇龍の涙を誰が想像したであろうか。若元春が、朝乃山が大栄勝が優勝してもこみ上げる涙はないであろう。ハングリー精神とは言い古された言葉であるが、この精神の違いとしかいいようがない。国歌斉唱に豊昇龍の口元はしっかりと国歌を歌っていた。
「相撲をやってよかった」と思えるまで頑張り抜いた精神は日本の力士が学ぶべき精神性だろう。その中でも光が見えたのは19歳・伯桜鵬だ。「対戦する相手が決まれば準備をする」という。初めて聞く力士の言葉だ。ただ、懸命に頑張るだけではない「準備をする」というのは今風の若者とも思えるが、自分のスタイルに自信を持って突き進んでいる。前人未到の45回の優勝を誇る親方・白鵬がどんな指導をするのかも興味深い。何度か舞台袖から部屋力士の相撲を見る姿に今までにない指導者像をみる。立派な力士に育てていただきたい。もちろんテクニックだけではなく力士の品格もである。
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