大相撲にスター誕生!!

スポーツ,日本

Vol.5-5.28-1152   大相撲にスター誕生!!

2024-05-28

待ちに待ったスターの誕生である。

大相撲夏場所で小結・大の里(23)が優勝した。
初土俵からわずか7場所での快挙は史上初。まだ ❝ まげ ❞ (大銀杏)さえ結えない優勝力士となった。

えっ7場所と驚くが、大相撲には序の口から始まり、序二段、三段目、幕下、十両、幕内と6つの階級がある。それぞれに優勝を果たしたとしても1階級2場所はかかる。その意味でいえば最速でも12場所、2年は要する。それが7場所とは約半分である。まさに夢の超特急・リニア新幹線なみである。

それには訳がある。
大の里には学生時代に2年連続でアマチュア横綱になるなど輝かしい実績がある。序の口、序二段、三段目を飛び越え「幕下付け出し」からスタートできるという特権があったのだ。

<付出(つけだし)とは、大相撲において学生・アマチュア時代に優秀な成績を収めた力士の地位を優遇する制度>

※ ~ 大の里 初場所から7場所の軌跡 ~

2023年 5月場所 6勝 1敗 勝ち越し(初土俵・幕下付出10枚目)
2023年 7月場所 4勝 3敗 勝ち越し(東幕下3枚目)
2023年 9月場所 4勝 3敗 勝ち越し(新十両14枚目 )
2023年11月場所 12勝 3敗 勝ち越し(東十両5枚目 )
2024年 1月場所 11勝 4敗 敢闘賞(新入幕・西前頭15枚目)
2024年 3月場所 11勝 4敗 敢闘賞・技能賞(西前頭5枚目)
2024年 5月場所  12勝 3敗 初優勝・殊勲賞・技能賞(新小結)
2024年 7月場所  果たしてどうなる?

それにしても、その特権を生かし切るだけの実力を備えていたということだ。まさしく新しい時代を予感させる力士の登場である。

思えば日本人横綱の時代が去って21年、正確に言えば5年だが、日本人最後の横綱・稀勢の里は在籍2年で優勝1回、その優勝も薄氷を踏むような優勝だった。一時代というにはあまりにも影が薄い。

やはり、日本人横綱が活躍したのは若貴で盛り上がった平成15年1月(2003)まで、貴乃花が去った平成15年が日本人横綱が活躍した最後の時代であろう。ブームが去って21年、相撲ファンにとっては日本人横綱のいない長い長い寂し時代が続いた。そしてついに、その暗闇に一億2千万ワットの光で日本中を、とりわけ能登半島を照らしたのが大の里なのだ

ちょっと気が早いが、掛け値なしで来春には横綱になると確信させる力士である。

白鵬引退後、手負いの横綱・照ノ富士が満身創痍の中、相撲界を必死で支えてきたがようやく肩の荷を下ろせる可能性がでてきた。照ノ富士はほっとしているかもしれない。

ただ、照ノ富士には優勝10回という夢がある。膝にまく包帯は痛々しいが、次に土俵に上がるときは引退を決意の上での土俵だろう。10度目の優勝を目指すという決死の覚悟をもって最後の土俵に臨むのではないか。

本来なら同門の尊富士に綱を渡したいところだろう。しかし尊富士はまだまだ未知数、来場所どんな相撲をとるかが大きなカギとなる。本物であれば ❝ 大尊時代 ❞ が来るかもしれない。

そんな中いよいよ横綱の誕生が現実味を帯びてきた。

しかし安心は禁物である。過去大きな期待を背負った力士がすべて共倒れ、無残な見掛け倒しに終わっている。今場所の休場の多さ、上位陣の情けない相撲内容をみればその体たらくは目を覆うばかりだ。まるでエレベーターのように上がったり下がったり、何とも情けない。

名前を挙げるまでもないが、現大関陣に朝乃山に若元春。期待と話題性を引っ提げて登場した王鵬。大鵬という大横綱の血を引き、相撲環境と体力ともに恵まれた環境で育ちながら期待にそぐわず、迫力もハングリー精神のかけらもない。

さらに、過去に大関を張った高安に正代、御嶽海の三羽烏も、今一歩の頑張りや「上に上がりたい」という鋼のようなハングリーが一向に見られない。大関を張った彼らは、時にその面影を見せるが期待を裏切り続けてきたのが現実だ。

貴景勝もその一人、横綱一歩手前の土俵を無駄にした。ただ、横綱になるには少々太りすぎ、突き押しだけで横綱を張るには厳しい、と素人目にもわかる。厳しい見方をすれば、大関まできたことが幸運、現在27歳、大関在籍最長不倒距離を目指すほうが賢明かもしれない。

現在の番付上位の横綱・大関陣はモンゴル勢に席巻されている通り、ファンにとってはストレスと悲しみが沈殿している。

大の里の優勝はそんな長い長い暗いトンネルの先に、輝くような明るい光が差した気分だ。さらには昭和の大相撲ブームの復活を予感させる勢いを感じる。

大鵬の時代、若貴ブーム、そして第三のムーブメントは大の里を中心としたZ世代が沸き起こす大相撲ブームを期待したい。

今場所の活躍を本物と見たのだろう。大の里は ❝ 令和の大器 ❞ との呼び声が高い。今回の優勝は横綱への通過点」と新聞の見出しを飾ったように、今年中には大関に上がり初場所優勝で横綱が誕生するのではないか。

それほどに、大の里の土俵は堂々とした取り口での勝利だった。すでに大関の相撲である。安定性・スピード・力強さは現大関の力量を上回っている。

面構えに体格、相撲内容。どれをとっても文句のつけようがない。久々に表れた令和のスターである。

優勝後の発言からも若者らしく、ハングリー精神に満ちている。優勝で浮足立つ気持ちは一切ない。

優勝後のインタビューで今後の目標を聞かれ
「強いお相撲さんになりたい」と言った。
翌日の会見では
「まだ上に番付がある。もちろん優勝はうれしいけど、最終目標はここじゃないと思っている。上へ上えと駆け上がりたい」

この清々しい心意気こそ令和に相応しい若い力を感じる。

今までにない期待できる逸材である。ジイは確信をもって太鼓判を押す。

早々に関脇、今年中には大関を手中に収め、来年初場所で横綱昇進になると予想する。

その期待に応えてくれるだろう。

気がはやるが、やっと日本人横綱の誕生である。この若き王者は白鵬の優勝回数にせまるのではないか。

それにしても不思議な縁?である。日本人最後の横綱・稀勢の里は二所ノ関部屋を率いる親方になった。その二所ノ関部屋に籍を置く大の里が横綱になれば失礼な言い方かもしれないが、稀勢の里の不甲斐ない横綱時代を十分に補填し二所ノ関部屋に栄光をもたらすかもしれない。さらに白鵬45回の優勝を塗り替える・・・

夢は果てしなく広がる。そんな期待を抱かせる大相撲夏場所・大の里の初優勝だった。

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