ペーパーウォッチ
Vol.1-7.12-180 ペーパーウォッチ
2020.07.12
産経新聞7月11日朝刊に掲載されたコラムには全く同感だ。
~なぜ声を上げない「尖閣危機」~
安倍信三首相の矜持が問われている。
「わが国の領土・領海・を断固として守り抜く」と繰り返し強調してきたが、中国には全く響いてないからだ。中国海警局の船は連日、尖閣諸島周辺の海域に押し寄せている。尖閣周辺の領海外側にある接続水域で確認された中国公船は10日時点で連続88日に達した。日本が尖閣を国有化した平成24年9月以降、最長となっている。中国の高笑いが聞こえてくる。
領海侵入も頻繁だ。今月2~3日は30時間以上侵入し過去最長を更新。さらに4~5日も39時間以上侵入し続けた。中国海警局は人民武装警察部隊に編入されており、軍と一体化している。あえていえば「侵略」だ。
5月8日に続き9~10日も領海侵入し、日本漁船を追尾した後の同11日、中国外務省の趙立堅報道官は記者会見で「日本漁船が中国の領海内で違法な操業をしたため、海域から出るよう求めた」と言い放った。日本は「なめられている」のだ。日本の抗議は「絶対に受け入れられない」と恫喝を好むこのスポークスマンを許してはならない。
振り返れば、24年12月の衆院選で、政権奪還を目指す野党・自民党は公約に「尖閣諸島の実効支配強化と安定的な維持管理」と掲げた。
「島を守るための公務員の常駐や、周辺漁業環境の整備や支援策を検討し、島及び海域の安定的な維持管理に努めます」
再登板した首相は25年2月1日の参院本会議で「公務員常駐」について「選択肢の一つ」と明言した。「公務員常駐」は同年7月の参院選で「公約」から外れたとはいえ、「総合政策集」で衆院選と同じ表記で明記された。
ところが、26年12月の衆院選以降の国政選挙では公約、政策集ともに「公務員常駐」が消えた。詳しい説明は、いまだにない。これでは「16.8兆円の財源捻出」などの公約が破綻した旧民主党を笑えない。
政府の危機感が低いのは、国民の関心が低いことも一因だ。それもそのはず。中国の「尖閣接近」の報道はあまりにも低調だ。
尖閣接近は6月16日に64日連続となり、それまでの過去最長に並んだ。最長記録を更新した翌日の18日付朝刊各紙をみると、産経が1面で報じ、読売は社会面のベタ記事、毎日新聞は7面の2段見出し。日本経済新聞は政治面、朝日新聞は社会面でそれなりに大きく扱ったが、東京新聞は17日付も含め報じなかった。
手前みそだが、尖閣接近を毎日報じているのは産経だけだ。他のメディアは領海侵入の場合はそれなりに報じるが、連日の接近程度ではニュースにすらならないということなのだろう。
「力の真空」をついて実効支配を強める中国の手口は、冷戦終結後の1992年に米軍がフィリピンから撤退した後に南シナ海の島々を占拠して軍事施設を構築した例で実証済みだ。トランプ米政権が東アジアでの防衛負担軽減を唱える中、尖閣が南シナ海の島々と同じ道をたどる可能性はおおいにある。
それなのに日本国民には「侵略の危機」の情報すら満足に示されていない。国会では何人かの与野党議員が取り上げ、自民党外交部は中国への厳重な抗議を求める決議文を政府に提出した。しかし、自民党も含めて尖閣に関し政党として中国への抗議といった談話を出したところはほとんどない。何かに忖度しているのか。
先の国会で検察庁法改正案が廃案になったのは、芸能人・有名人も巻き込んだインターネット上の反対運動の盛り上がりが影響したとされる。改正案に賛成でも反対でも結構だが、ならばどうして日本の領海が中国に脅かされいるという現実の危機には大きな声を上げないのか。感覚が麻痺した日本の現状は、まさに中国の思うつぼである。
産経は引き続き尖閣の危機を報じる。しかし、中国の挑発に対し、日本全体が一体となった国民運動を展開しなければ、やがて悲劇になるだろう。
(2020.7.11産経新聞朝刊・政治月旦)
と締めくくられている。
SNSで熱いメッセージをお送った有名人や芸能人よ、この日本の危機にどうして声を上げない?。
「検察庁法改正案」とは比較にならないほど日本にとって重要な事案だと思うが。
その答えを聞きたい。