美しい礼儀

Vol.1-7.13-181  美しい礼儀
2020.07.13

将棋の高校生棋士・藤井聡太7段と渡辺明・棋聖との棋聖戦5番勝負が今行われている。

17歳、高校生棋士の藤井聡太7段の「最年少タイトルなるか」が焦点となっているが、2勝と先行した藤井聡太7段、3戦目にして渡辺棋聖が三冠の貫録を見せ勝利した。

これで藤井聡太7段は2勝1敗となった。
次回第4局は16日、大阪市「関西将棋会館」で行われる。

若武者の活躍でいやが上にも盛り上がりを見せている。
出身地・愛知県瀬戸市は大変な騒ぎである。

そんな大変な騒動の中、こんなコメントがあった。

「渡辺三冠はキレ者中のキレ者。
そう簡単には他者に位を譲らないだろう。
棋士の先生方はお互いの才能を認め合い尊敬しあっていていることが所作から感じ取れる。
日本の美しい礼儀を見せてくれる。
藤井七段がいつも深々と頭を下げている姿もいい」

また、飯島7段は
「いやあ、鳥肌が立ちます。この将棋は、善悪を超えた芸術作品だと思います」

将棋、囲碁、柔道、剣道など、日本古来の勝負ごとにある武士道精神に宿る礼儀。その言葉に「美しい」という枕詞を付けた表現に新鮮な響きを感じた。

感動は、忘れかけていた日本の伝統文化への思いかもしれない。
所作、などという言葉も日本文化に欠かせない言葉だ。
ちょっと、嬉しくなった。

昨年亡くなった、日本文学者・ドナルド・キーン氏は日本文学をこよなく愛したアメリカ出身の日本人だ。日本文学を世界に紹介し、日本に帰化し日本で亡くなった。
キーン氏の墓は、長年住み慣れた東京都北区の無量寺に埋葬された。

そのキーン氏が英語で書かれた「Living Japan(生きている日本1959)」がある。その後、ニューヨークの出版社の勧めで、講演録などを追加して、文庫本として出版の話があった。

今までは、専門書ばかりで一般向けに書いた本はなかった。題名をどうするか、本来なら「生きている日本」そのままでも不都合はない。しかし、アメリカにいて遠い日本に思いを馳せ考えた時、自然に「美しい日本」がイメージされたのであろう。決して日本の美について書かれた本ではないが、題名は「果てしなく美しい日本」と決まった。

その心は「美しい」だけでなく、「果てしなく」としたところに、単なる目で見た美しさだけではなく、日本文化に通底している「厳か」にあったのではないかと推測する。

もう一人、世界的に有名なドイツ建築家、ブルーノ・タウト著に「ニッポン」という著書がある。
1933年(S8)日本を訪れている。
伊勢神宮や桂離宮など、日本古来の建築にふれたタウトは、そこに日本美の極致をみた。簡素・単純・静閑、純粋・・・それらの絶妙な均斉を具現化した桂離宮を絶賛した。

世界の建築界に君臨するタウト氏による「日本印象記」は世界の建築界に大きな影響を与えた。
タウト氏のお蔭で日本建築は一躍世界に注目されることになるが、私たち自身が「簡素・単純・静閑、純粋」なる美しさを理解しているかと言えば、甚だ心もとない。

そこで新渡戸稲造の「武士道」の序文である。

『著名なベルギーの法学者ラヴレー氏の家で歓待を受けた時、宗教の話に話題が及んだ。
「あなたがたの学校では宗教教育というものがない、とおっしゃるのですか」とこの高名な学者がたずねられた。私が、「ありません」という返事をすると、氏は驚きのあまり突然歩みをとめられた。そして容易に忘れがたい声で、「宗教がないとは。いったいあなたがたはどのようにして子孫に道徳教育を授けるのですか」と繰り返された。

その時、私はその質問に愕然とした。そして即答できなかった。なぜなら私が幼いころ学んだ人の倫たる教訓は、学校で受けたものではなかったからだ。そこで私は善悪の観念をつくりださせたさまざまな要素を分析してみると、そのような観念を吹きこんだものは武士道であったことにようやく思いあたった。』
・・・・・とある。

ドナルド・キーン氏が遠い日本を思い出した時、ぼんやりした思い出の中にまず浮かんだのが「厳かで美しい日本」というイメージである。
ブルーノ・タウト氏が絶賛した簡素で単純な美しさ。

それらは、新渡戸稲造が「武士道」が日本の道徳であったと喝破したように。日本人の日常にあり
昔から培われてきた「勇」「仁」「礼」「誠」「名誉」「忠義」なる言葉も簡素で純粋な精神で貫かれている。

私たちは、ともすると西欧を上に置きがちである。しかし、今回の棋聖戦での「美しい礼儀」という言葉に接し改めて日本が培ってきた、礼儀や美しい所作は静謐で簡素である。
学校ではそのような日本の伝統的な美しい作法、礼儀というものへの誇りを持てるような授業も必要ではないか。

近年のテレビコマーシャルではないが、何でもかんでも、ダンスまがいの振り付けで踊るバカ丸出しのコマーシャルばかりだ。「美しい」には程遠い。アメリカを拠点として活躍しているJAZZミュージシャン日野皓正氏は、「日本は子供社会だから、、、」と後を濁したが、先生が教壇を失くし、子供目線にという思想と無縁ではなかろう。

愚痴はその程度にし、棋聖戦第4局が16日、大阪市「関西将棋会館」で行われる。

藤井聡太7段の師匠、杉本八段は「渡辺棋聖が一枚上手」というが、弟子の快挙を望まないわけがない。

4日後行われる、若武者と老獪な武士の真剣勝負に期待したい。

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Posted by 秀木石