脱中国の論点と行方

世界,日本,雑記

Vol.1-9.22-252    脱中国の論点と行方
2020.09.22

脱中国が盛んに言われるようになったのは、もちろん新型コロナウイルスの発生を起因として世界経済を混乱に導いたサプライチェーンが発端である。

すべてと言っていいほど、中国を供給源としていた実態を目の当たりにして、世界は驚愕した。

コロナのお蔭と言ってはなんだが、中国の世界戦略が恐ろしいほどのスピードで、それも隈なく世界に張り巡らされている事実を知ったのである。

一帯一路によるユーラシア大陸、アフリカへの資金供給による取り込み、世界に張り巡らされた孔子学院を使った中華思想の浸透政策。

一国をまるごと北京へ取り込もうとする壮大かつ綿密な計画は、オーストラリア則り計画を暴いた「サイレント・インベージョン(静かなる侵略)」という告発本である。

内容は衝撃的なものだ、政治家への資金供与や大学への寄付、企業買収などにより豪州が中国に「侵略」されている様を克明に描き、広く豪州で物議を醸した。当初オーストラリア動きは緩慢だったが、中国離れは始まった。

この警戒心は徐々に理解されつつあるが、お金の力はすこぶる強い。しかし金の力でだけではない。中国のIT技術は欧州勢もびっくりするほど進化しているのである。アメリカが最も敏感に察知し動きを世界的規模への拡大を主導しているがそう簡単ではない。

ファーウエイの締め出しを皮切りに、TikTokに手をつけたが、すでに世界中に根を張った物を一気にひっくり返すにはそれなりの傷を覚悟する必要がある。米国自身もすでにどっぷり浸かってしまっているのである。

オーストラリアの著書「サイレント・インベージョン」ではないが、静かではあるが猛烈な勢いは中国14億人のパワーを感じる。

世界に散りばめられた華僑、学生などは中国共産党の命令に背くわけにはいかない。共産党一党独裁の強みである。自国には大事な家族が人質として取られているのである。

アメリカはありとあらゆる理由をつけて締め出しを図るが、経済的理由だけで世界をまとめることは難しい。そこで人権問題である。

米国の強みは人権問題などにおいて、共和党も民主党も一致団結できるところである。人権侵害に関わった中国当局者らへの資産凍結などの制裁を科す「ウイグル人権法」が上院では全会一致、下院でも413×1の圧倒的多数で可決した。

しかし100万人とも言われるウイグル人の強制労働によって生産されている製品が、ナイキ、アディダス、アップルといった世界的企業の製品である。この事実から、政治と経済とは別と言い切って、これらの企業に脱中国を迫れるかということだ。有名企業以外に80社近くが関わっているという。

中国の汚い手口を批判し、人権問題を持ち出し、さらに自由民主主義 VS 共産党独裁主義というイデオロギーでも攻めるという図式を米国はつくり出した。

米国だけで妖怪中国を動かすことは無理だろう。当然、日本のような同盟国にも同じような対応を迫ることは間違いない。ファーウエイの締め出しですでに韓国に影響が出始めている。果たして各国が同調の意思を示せるかがカギである。

今のところトランプ大統領は自国の経済への影響も視野に、口でいうほどドラスチックな動きになっていないように思うが、大統領選で勝利した暁には思い切った手を打ってくる可能性は大いにある。

日本は対中国に対し目下様子見の体で具体的動きを見せていないが、当然11月の大統領の結果に照準を合わせ具体的方針を検討していると思われる。

しかし、身の回りを見渡せば、世界中に「Maid in China」であふれている。このウイルスこそ洗い流すのには相当の困難を要す。

11月3日の米大統領選挙。世界もその結果を見極めた上で、対中国政策を具体化せざるを得ないだろうが、自由主義陣営は決して一枚岩ではない。

世界情勢、米国と中国を軸に当分不透明な流動化の波に翻弄されるのではないか。

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