常識を失くした司法
Vol.3-7.16-914 常識を失くした司法
2022.07.16
今から21年前の2001年は、イチローがマリナーズ入団、大リーグデビューした年だ。
今でも覚えている。LEDの発明により、後にノーベル物理学賞を受賞する中村修二氏が、青色発光ダイオードの製造に関連する特許をめぐって、日亜化学工業株式会社を相手取り訴訟を起こした。
3年の裁判を経て、2004 年 1 月 30 日、東京地裁はこう判決を下した。
「青色発光ダイオード(LED)中村修二氏(米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授)が、かつて勤務していた日亜化学工業から得るべき発明の対価は、604 億 3006 万円」
その上で、中村氏に請求額 200 億円を支払うように、日亜化学に命令した。
この時ばかりはびっくりした。604億円、200億円。いよいよ日本もアメリカ並に訴訟天国になってきたなと感じたものだ。
驚くことなかれ、今回、東電の株主が津波対策を怠ったとして旧経営陣に賠償を求めた訴訟で、東京地裁が4人に対して命じた賠償金額は13兆3210億円である。
一人にすれば、3兆300億円。大学を卒業し、いきなり3000万の高額所得者になった優秀な人間が、定年まで働き、43年間の所得をすべて返済にまわしても「12億9000万円」である。同等の収入がある相続人が同じように返済を引き継いでいくとしても、256代まで返済を続けなければならない。まさに天文学。
いずれにしても過去最大の賠償金額である。どんな計算をしたかは知らないが、積み上げて行ったら13兆円になった、法律家としてはそれを曲げることはできない。だから、そうした。それが13兆円?、この天文学的数字を出して、いつまでに払えと言うのか、払えなければ今後256代まで続く相続人が払うのか。さらに延滞税がつけば払う額は天文学的に増えて行く。
バカもいい加減にしてもらいたい。常識も理性もない。これが法の番人か?。誰もおかしいとは思わないのか。
この常識を逸脱した判決、司法はいずれ国民の信頼を失くすのではないか。
確かに最高に難しい司法試験を受けてパスした優秀な人間である。受かったとたんに先生と呼ばれるほど高い資格を有する。だからと言って、やりたい放題、“ 常識無知 ” でいいのか。
最高裁の裁判官は衆議院選挙で国民審査を受けるが、地裁も高裁もこの審査を受けるべきだ。衆議院選挙前にはすべての裁判官の出した判決の明細を選挙の告示と同時に選挙人ポスターと同じように過去の判決内容を詳細に記した顔写真付ポスターを貼りだすべきである。
話は変わるが、福島第一原発事故により非難を余儀なくされた住民らによる国や東電を相手取った集団訴訟は各地で起こされ、約30件にも上っている。19件で地裁判決が言い渡されており、全てで東電の責任が認められているが、国の責任については判断が分かれてきた。
判断が分かれるのは仕方ない。しかし専門家でないとわからない判断基準はあろうかと思うが、司法といえど “ なるほど ” と思える判決でなければいずれ司法は信用されなくなる。
間違っても、特定のイデオロギーに左右されるようなことがあってはならない。
現在の原発状況を見て見よ、
●北海道・泊原発 1~3号機 ⇒ 停止中
●東北・東通原発 1号機 ⇒ 停止中
●東北・女川原発 1号機 ⇒ 廃止措置中 2・3号機 ⇒ 停止中
●柏崎刈羽原発 1~7号機 ⇒ 停止中
●福島第一原発 1~6号機 ⇒ 廃止
●福島第二原発 1~4号機 ⇒ 廃止措置中
●東海第二原発 停止中
●東海原発 廃止措置中
●中部浜岡原発 1・2号機 ⇒ 廃止措置中 3~5号 ⇒ 停止中
●北陸志賀原発 1・2号機 ⇒ 停止中
●敦賀原発 1号機 ⇒ 廃止措置中 2号機 ⇒ 停止中
●高速増殖原型炉もんじゅ 廃止措置中
●新型転換炉原型炉ふげん 廃止措置中
●関電美浜原発 1・2号機 ⇒ 廃止措置中 3号機 ⇒ 停止中
●関電 大飯原発 1・2号機 ⇒ 廃止措置中 3号機 ⇒ 運転中 4号機 ⇒ 廃止中
●関電高浜原発 1~4号機 ⇒ 停止中
●中電島根原発 1号機 廃止措置中 2号機 ⇒ 停止中
●四国伊方原発 1・2号機 ⇒ 廃止措置中 3号機 ⇒ 運転中
●九電玄海原発 1・2号機 ⇒ 廃止措置中 3号機 ⇒ 停止中 4号機 ⇒ 運転中
●九電川内原発 1・2号機 ⇒ 運転中・・・(以上、原子力規制委員会H.Pより)
運転中はわずか5基、世間の原発忌避感情や13兆円の賠償金判決を考えれば動かす気にもなれないということだろうか。
運転停止の理由は「特定重大事故に対処する設備」の問題である。
規制委員会の新基準は、例えば、大型航空機をハイジャックして原発に突撃を図るテロを想定して、特重施設を地下につくれという。巨大なトンネルを堀り、分厚い鉄筋コンクリートで補強した要塞で、内部には水源として巨大なプール、複数の非常用発電機、緊急炉心注入ポンプ、計測制御盤、耐火機能付き長期滞在用の居住空間、食料保管庫などの設置だ。費用を見積もると1000億円規模だ。
国基研・櫻井よしこ理事長は米中枢同時多発テロを受けたアメリカや原発大国フランスであってもこんな施設は要求されていない。日本の規制委員会の暴走である。と批判する。
今、日本は電力不足による停電の危険がある。この夏も節電の要請があった。原発の停止で高騰している石油、LNGに頼ることによる電気料金は上がる一方である。規制委員会はそんな事情など一切考慮する気配すらない。“ 国民の安全と命を守るため ” という印籠を掲げれば、何でもありとでも思っているのか。
規制委員会の過剰な安全基準で原発が停止されたことにより、電気料金の高騰で受けた生活損害が年間3万円、その期間は10年・総額30万円に及ぶとして、1000万世帯が損害賠償訴訟を起こせば、総額3兆円である。・・・そんなことがないとも限らない。
司法の常識を問いたい。理性を失くした世界。恐ろしい世の中になってきた。
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