安全保障としての、土地利用規制法

日本,雑記

Vol.3-9.5-965  安全保障としての、土地利用規制法

2022.09.05

「土地利用規制法」が月内に施行される。ただ、「売買規制」がない中で本当に外国資本から日本が守れるのか。

中国資本などの外国資本による土地買収が続いているが、「土地利用規制法」によりようやく第1歩、、まではいかない、半歩歩き出したというところか。

政府は対象となる条件などを盛り込んだ基本方針を策定。原発を含む原子力関係施設を対象施設としたほか、重要施設の機能を妨げる行為としてレーザー光の照射や妨害電波の発射などを例示した。

とりあえず国は「注視区域」の土地や建物について、不動産登記簿や住民基本台帳を使って所有者の国籍や氏名・住所、利用状況などを調べることができる。

重要な機能を備えた施設周辺の「特別注視区域」は、200㎡以上ある土地や建物の売買に関し、事前に氏名や住所、国籍、利用目的などの届け出を求める。

国は調査を行ったうえで、施設機能を妨げる「阻害行為」が認められれば、中止を求める勧告や命令を出す。届け出を怠ったり、命令に従わなかった場合の刑事罰も規定された。

基本方針で示された阻害行為の事例
<該当する主な行為>
①自衛隊などのレーダー運用や、航空機の離着陸の妨げとなる工作物の設置
②施設機能に支障を来すレーザー光などの照射や妨害電波の発射
③流出することで係留施設(船舶の停泊施設)の利用阻害につながる土砂の集積

などの事例を示した。

政府は9月にも全面施行に合わせ、閣議決定する見通し。施行後、2、3年をめどに、600~700にのぼる対象周辺施設の土地の区域指定や調査を進める。

安全保障上の脅威に対する備えをようやく手にする形だ。とはいえ規制法は土地の売買規制などには踏み込んでいない。まだまだ不十分である。

外資の土地買収については以前から、北海道で水源地を含む大規模な山林買収、韓国資本による長崎県・対馬の海上自衛隊基地の隣接地を買収したケースなどがある。

規正法にはそうした懸念を解消することが期待されるが、売買規制がなく実効性には疑問符がつく。

「米国では外国資本が軍事施設周辺の不動産を購入する場合は審査対象となっており、大統領に取引停止権限が付与されている。韓国やオーストラリアでも軍事施設周辺の外国人による不動産取得は事前許可制や届け出制である。

以上は産経新聞に書かれている概要になる。しかし、東京新聞Web版は180度違う視点で捉えている。

<東京新聞>
『土地利用規制法』が今年九月に全面施行され、自衛隊基地や原子力施設周辺での土地利用の規制が本格的に始まる。ただ、法の規定にはあいまいな部分が多く、『財産権、プライバシー、思想・良心の自由といった憲法上の権利を侵害しかねない』と危ぶむ声が上がっている。
3日の憲法記念日に向け、県弁護士会所属の尾池誠司弁護士にこの法律の問題点を聞いた。
◆何のための法律か
一部では法律の必要性がないと言われている。個人的には、内閣総理大臣に権限を与えているだけで、立法の名にも値しないと思っている。2011年に、自民党の高市早苗衆院議員らが「中国資本に重要な土地を買われたら危ない」などと言って動きだしたとされる。だが、外国資本に対しては制限していない。国際的な貿易のルールに違反するからだ。結局、自国民を規制するだけの法律になった。
◆県内ではどの施設が対象となるか
「自衛隊の施設」と明記されているので、航空自衛隊百里基地や陸上自衛隊古河駐屯地は該当する。さらに問題なのは生活関連施設。「国民生活に関連を有する施設で、機能が阻害された場合に国民の生命に重大な被害が生じるおそれがある」と定めており、日本原子力発電東海第2原発は入るだろう。だが、それにとどまらない。大きな工場や港、何でも対象になる可能性がある。
◆憲法に照らし合わせると何が問題か
いろいろある。調査対象となる人は、憲法13条で保障されるプライバシーを侵害されかねない。その調査対象は明記されていない。特定の宗教や政党に所属する人が対象になるなら、19条の思想・良心の自由に反する。土地の利用制限や所有権移転などの事前届け出は、29条の財産権を侵害する危険もある。
◆デモなど市民運動の障害になりうるか
警察の公安や自衛隊の諜報部は以前から調査していたが、この法律はあえて「調査する」と明確に言っている。「それならやめようか」と正当な政治活動や住民運動まで萎縮させる危険性はあるだろう。何を目的にこの法律が作られたのかは分からないが、本音はおそらくスパイ行為の防止だろう。秘密主義の法律。戦前の内務省のような発想が少し復活したように感じられる。
以上が東京新聞の記事だが、産経新聞との違いは歴然である。
①自国民を規制するだけの法律
②保障されるプライバシーを侵害されかねない
③思想・良心の自由に反する
④財産権を侵害する危険
⑤正当な政治活動や住民運動まで萎縮させる危険性はある
⑥秘密主義の法律。戦前の内務省のような発想が少し復活
などが列挙されており、この記事を読めば “ 最悪の法律 ” が待ったなしで実行されるという恐怖心さえ持つ。逆に、外国資本による脅威など露ほども書かれていない。
しかし、そんなに悪い法律なのであろうか。報道にも “ 書く自由に、書かない自由 ” があるのだろう。何とも都合のいい自由である。驚きである。
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Posted by 秀木石